女系家族

劇場公開日:1963年3月31日

解説

週刊文春連載・山崎豊子原作を「第三の悪名」の依田義賢が脚色、「新選組始末記」の三隅研次が監督した文芸作品。撮影は「第三の悪名」の宮川一夫。

1963年製作/111分/日本
配給:大映
劇場公開日:1963年3月31日

あらすじ

昭和三十三年、大阪船場に暖簾を誇る矢島商店は三代にわたる女系の家筋であった。数年前に妻を亡くした当主の嘉蔵が美しい三人の娘を残して急死した。ほどなく開かれた親族会議で大番頭宇市によって遺言状が開かれ、総額数億円といわれる遺産分配が発表された。が、出戻りながら総領娘の座を主張する藤代、暖簾をつぐ気で養子を迎えた次女の千寿、花嫁修業に余念のない末娘の雛子、の姉妹はそれぞれ不満だった。その上意外にも嘉蔵には七年前から文乃という陰の女がいることが判り、話はまとまらなかった。その日から姉妹の間にとげとげしい空気が流れ始めた。藤代は踊りの師匠梅村芳三郎に相談をもちかけ、千寿は夫と株式組織に切り換える策を練り、雛子には叔母の芳子が後楯になり、秘かに手段を講じていた。そんな最中に宇市の案内で文乃が紹介され、彼女に軽蔑の目を注いだ三人はその胎内に嘉蔵の子が宿っていると知るや、堕胎を強要して口汚くなじった。妾の子でも認知さえあれば半分の相続権があることを芳三郎から教えられた藤代は、さらに共同相続分の山林に目をつけ吉野へ調査に出かけたが、そこで宇市の暗躍を知った。宇市は文乃が胎児の認知書を持っているかどうかを探っていたが、文乃は容易に尻尾を出さなかった。やがて、宇市の巧みな策動が奏効し文乃の出産前に遺産相続を決めてしまうことに三人の意見が一致、最後の親族会議も円満解決しようという矢先、文乃が男の赤ん坊を抱いて現れた。七カ月児を無事早産したと聞いて、矢島家の人たちの驚きは正に青天の霹靂であった。しがも文乃は嘉蔵の胎児認知書のほかに、宇市がごまかしたつもりの汚職の数々を発いた遺言状まで持っていた。得意満面の文乃が去った後、三人の姉妹は生前無力に見えた父の強い意志をひしひしと感じていた。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

4.0婿養子当主が、死して女系家族に残したもの

2025年7月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

若尾文子映画祭にて。

三代に渡って女系が続いた大阪の老舗木綿問屋〝矢島商店〟(映画では事業の説明はない)で、入婿の当主が死去し、その遺言が巻き起こすドタバタ騒動の物語。
山崎豊子の小説としては比較的短い、とはいえ長編である原作をコンパクトにまとめていて面白い。
ベースは「犬神家の一族」にも似た構造だが、大番頭・宇市(中村鴈治郎)をコミック・リリーフに仕立てて、エゲツナイ遺産争いを滑稽に見せるアイロニーに満ちている。

長女・藤代を演じた京マチ子と、当主の愛人・文乃を演じた若尾文子が並列で主演。
京マチ子は、惣領娘のプライドと出戻りの疎外感が重圧となって次第に追いつめられていく藤代の姿を、強さと辛さの両方をにじませつつ、舞踊教室の若旦那(田宮二郎)にすがってしまう女の弱さも表していてさすがだ。
若尾文子の方は出番は少ないが、それが却って彼女を光らせていた気がする。
本宅の娘たちから酷い仕打ちを受ける可哀想な日陰の女だが、最初から只者ではない空気を纏っていて、後半で見せる意味深長なほくそ笑みがドキッとするほど美しいのだ。

狭い路地のパースペクティブ、重なり合うような瓦屋根の俯瞰、人物を画面の端に押し込んだ構図など、三隅研次独特の画作りは本作でもたっぷり披露されていてファンには堪らない。

さて、この騒動で一体誰が得をしたのか、損をしたのか。
本宅の三姉妹は目論見を果たせなかったが、心の平穏は取り戻せたのではないだろうか。
妾である文乃が女系家族に産み落とした男児が二十歳を迎えたとき、矢島商店の事業が順風満帆であってほしいものだ…。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
kazz

4.0映画終活シリーズ

2025年7月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

1963年度作品
若尾文子さんに、魅せられてもう一本鑑賞しました
あ〜色っぽい

コメントする (0件)
共感した! 0件)
あきちゃん

4.5養子婿であった亡くなった父からの遺言状の策略

2025年6月29日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

知的

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
ねこたま

4.0すごいです

2025年1月29日
PCから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
ろーけん