劇場公開日 1936年

「キャプラの魔法」オペラハット つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0キャプラの魔法

2024年3月20日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

まだそこまで何本も観ているわけではないので断言はできないが、フランク・キャプラ監督の作品は、基本的に人情ロマンスコメディだ。

作品が古いこともあるだろうが、その内容はわざとらしくて大袈裟で極端である。
例えば主人公ディーズはどこまでいっても真っ直ぐで正直な男で、腹黒い人物はずっと腹黒い。つまり、キャラクターに二面性や葛藤などがないのだ。だが、これでいい。
近年の作品であれば浅く単調なキャラクターは退屈な物語しか紡がないが、漫画的でオーバーなキャプラ作品のキャラクターは多くの人が考える限界を超えてくる行動をとる。その限界突破が物語を牽引するのだ。

極端であっても単調なキャラクターは単調な物語を生む。現に内容が薄いという意見も聞こえる。
しかし、ある意味で確定しているエンディングへ向かうだけの確定しているストーリーテリングは、観ている者に気持ちよさを届け続ける。
この気持ちよさだけで映画一本仕上げてしまうのがキャプラの魔法。

少なくとも私はキャプラの魔法による陶酔をただ求めている。
一本の作品にあれもこれも求めるのには無理がある。観ることに負荷がかかるような作品は別作品に、社会問題について考えたいなら別作品に、人の葛藤を観たいなら別作品に。なのである。

つまり私は、フランク・キャプラ監督の魔法が大好きなのである。

コメントする
つとみ