「レンズがすごい」犬神家の一族(1976) KIDO LOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)
レンズがすごい
古い映画を見直すとこんなにいい映画だったのかと驚く場合と、風化してしまったなあとかがっかりする場合があるのだがこれは
こんないい映画だったのか!!と驚いた。
まず石坂浩二が個性的で美しい
次に島田陽子が非常に妖艶な雰囲気。この映画のカラーカラーを決定付けている。
妖艶と言うか妖精と言うかまるで現実の世界にはいない女性のように 。
(彼女はちょうどこのころ 将軍 という映画でも
この映画で見たか見せたのと同じような妖艶的雰囲気を醸し出しており
外国から来た侍がまったく別の国というより別世界へきてしまったという雰囲気が
よく醸し出されていた)
それから長女の婆様
何ていう名前の女優さんか知らないが とってもババアの色気魅力が出ていて、犯人が分かってしまってからの客を飽きさせないだけの力を発揮していた。
若い時に見た時、この女優さんはただのばあさまだったんだが今、自分が50を過ぎると女性に見えるから不思議なものだ
そして 驚くべき終わり方
ちょうどあたかも見送れなかった人の金田一を見送れなかった心残りが、あの終わり方によって醸し出されていた
こんな一流の映画を日本映画がすっかり腐ってしまったこの時代に作ったとは!!
市川崑監督すごい。
さて、ここからが大事な話なのだが
レンズがとっても良い
レンズというものは精密精巧に被写体を映せばいいというものではない
写真が味わいのあるものにならなければいけない
素晴らしいボケが出なければならない
この映画で使われているレンズは映画全盛期のレンズで、そういった味わい醸し出されている。それはつまりそういうものを作るために試行錯誤されて出来上がったレンズだということである
現在のメーカーにこのようなコンセプトのレンズを作ろうという意図が全くないのは非常に残念だ
美しい写真を撮る自信のある監督は、ぜひこうしたオールドレンズを使用してフィルムカメラで映画を撮って欲しいものである