アルプスの少女ハイジ(1979)のレビュー・感想・評価
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1年分の物語をギュッと凝縮。 声優が違う理由を教えて〜お爺さん〜♪
天真爛漫な少女ハイジの日常と成長を描いた児童向けテレビアニメ『アルプスの少女ハイジ』(1974)の総集編。
幼くして両親を亡くしたハイジは、叔母デーテにより祖父であるアルムおんじの暮らすアルプスへと送られる。
ハイジはすぐに山での生活を気に入り、おんじと彼の飼い犬ヨーゼフ、山羊飼いの少年ペーターらと共に穏やかで幸せな日々を過ごしていたのだが…。
画面設定を務めるのは宮崎駿。
2024年は『アルプスの少女ハイジ』放送開始50周年のメモリアルイヤー!🎉そのお祝いも兼ねて本作をウキウキウォッチング。テレビアニメ版は全話鑑賞済み。
全52話の長編アニメをたった2時間に集約。そのため、どうしても駆け足…というか詰め込みすぎになってしまっている。物語を進めたい時にはナレーションで処理するという、ある意味清々しいほどの開き直りっぷり。
とはいえ、元々のテレビアニメ版がストーリーテリングを重視している作品ではないこともあり、プロットや相関図が行方不明になるような、見るも無惨な映画になってしまっているわけではない。ハイジが本を読めるようになるというテレビ版の重要なくだりが削られたりはしているものの、全体としては非常に無難な出来であると言える。
とりあえず「クララが立った…!」という、擦り倒されたあの名シーンを観たいという『ハイジ』初心者はこの映画から入るのも決して間違いではないだろう。
音声は再録されているようで、テレビ版では流れなかったSEやBGMが散見される。この新たに挿入された効果音にはあまりセンスを感じない。シーツをかけるだけのシーンに何故あんな大仰な音が必要なのか?
高畑勲なら絶対にこういうダサい音はつけないだろうし、そこにはちょっと違和感を覚えてしまった。
違和感繋がりでもう一つ。
本作ではハイジとオンジ以外のほとんどのメインキャラクターはオリジナル版と声優が違う。ペーターがのび太じゃないしクララがモンスリーじゃないしロッテンマイヤーさんがフネさんじゃない。
潘恵子さんや京田尚子さんなど、新たにキャスティングされている声優は皆実力派であるため、実のところそこまで違和感を覚えるということはなかったのだが、それでも一体何故?何のために?という気持ちは拭えない。テレビ版でロッテンマイヤーさんを演じた麻生美代子さんなんて、この映画版ではペーターのおばあさんを演じてますからね。同じ声優に別キャラを演じさせる意味とは一体…?🤔
『機動戦士ガンダム』(1979-1980)なんかでもテレビ版と映画版は脇役の声優が違うし、こういうのってなんか契約上のややこしい事情があるのかも…。
オリジナルのテレビ版は紛れも無い傑作。全ての子供に観て欲しい!…が、流石にちょっと長過ぎるし、刺激的な物語でもないので退屈っちゃ退屈。今から観るにはちとキツい。
そういう訳で、ファスト映画ならぬファスト『ハイジ』をしたいという観客のニーズにこの映画はきっと応えてくれるはず。
良いものは古くなっても良い。『ハイジ』を観たことがないという人にこそ、この映画を観て欲しい。
アルムの山編 子供に見せたい
日曜日の夜に連続で放送されていた名作劇場の再編集版で、30分ごとにお話が続く構成のものを、映画風につなげたもの。当時のアニメーションにしては予算を潤沢につぎ込めたらしく、美術や舞台設定、人物の背景などにも十分な考証が施されていることが想像できる。特に、時代背景において、ほとんど触れられていないものの、第2次大戦の影響は大きいであろう。登場人物に若い男がいないのはそのためか。今になってそう思う。
良くも悪くもテレビサイズのものを再編集しているので、演出の間だったり、音楽のスケールがいちいち映画的ではないものの、珠玉の演出と、美しいスコアは不滅の輝きを放つ。そして、いまでも親しまれるハイジのキャラクターは、もはや世代を超えて日本人のアイデンティティーに組み込まれている。
低学年の子供に見てほしい作品だ。
2018.3.27
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