劇場公開日 1984年2月11日

「そっとため息の猫」綿の国星 ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0そっとため息の猫

2025年5月10日
iPhoneアプリから投稿

虫プロ制作によるキャストも、脚本も、そして音楽が謎に豪華な劇場版。
かなり後になって原作を読んでファンになった身としては、当時どんな規模のプロジェクトだったのか、皆目見当もつかない。。

まず映像で観せられると原作の世界観の異常さ(ほっぺがバラ色でフリフリワンピースの幼女が四つん這いでゴミを漁ったり男の子の顔をペロペロ舐めたりする)がより際立ってシンプルにギョッとする。
でもストーリーには引き込まれるのでだんだん慣れてくる。それで演出も的確だし、アニメに向かない方向の絵でありながら、とても丁寧に作画されている、などと理解できるようになった。

原作者がシナリオにも関与しただけあって、ちゃんと原作の大事な場面がまとめられているし、映像的にもこの世界観へのリスペクトが感じられてよかった。
一見ほんわかしたタッチなのにドライな現実感覚があったり、ちび猫とトキオ、家族との関係など、ドラマの核になる部分も表現されている。座組の豪華さだけではない、レベルの高いアニメ化だった。

ただ、惜しむらくは背景。技術的にもイマイチだし、なにより質感が決定的に大島弓子的じゃない。
セルの絵柄はかなり原作に寄せているだけに、背景もそれにフィットするスタイルにしてほしかった。
アニメのセーラームーンみたいにもっと省略を生かして少女マンガらしい透明感の出せる会社に発注してくれたら作品としての評価もより高かったかも知れない…と何十年ごしのないものねだり(ため息)。

ipxqi
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