曼陀羅(1981)
解説
悟りへの道を求め煩悶する青年修行僧が、一人の中年破戒僧の生と死に触れ、再び仏道の道を歩み出す姿を描いた、“韓国映画史上最も優れた作”品と評された名作。監督はニュー・ウェーヴの先達として知られる「波羅羯諦 ハラギャティ」のイム・グォンテク、製作はパク・チョンチャン、原作は元僧侶のキム・ソンドンのベストセラー、脚本はイ・サンヒョンとソン・ギルハン、撮影はチョン・イルソン、音楽はキム・ジョンギルが担当。
1981年製作/韓国
原題または英題:曼陀羅/Mandala
ストーリー
ある冬の日、法雲(アン・ソンギ)はバスの中で軍の検閲を受け、身分を疑われていた僧を救った。その僧、知山(チョン・ムソン)は謹厳な修行僧の法雲とは対照的な俗界にまみれた破戒僧だったが、彼の読経は人の心を動かすものがあった。やがて2人はある寺で再会する。焼酎瓶を片時も離さぬ知山は時には嘲笑的に、時には詩を吟じるように仏教界の偽善を非難し、人間の愚かさを語った。彼はまたいつでも死ねるよう毒薬を持ち歩いていた。法雲は知山と行動をともにしようと決めた。2人はソウルへ下り、娼婦街の一軒の家を訪れる。そこに住む玉順(パン・フィ)はかつて知山を愛欲の道に誘い、破門に追いこんだ女だった。夜の床で体をまさぐってくる玉順を法雲は無言で拒む。法雲は入門した寺に戻った。旅に出る前に住職から出された法案の答えはまだ見つからない。法雲は行に入る。ある時、大学時代の恋人、英珠が訪ねてくる。父から結婚を迫られている彼女は法雲を方々探し回ったという。しかし、法雲の答えは沈黙しかない。寺には多くの僧が修行に励んでいた。その中に荒行で一歩抜きんでた法雲の旧知の僧がいた。彼は行の期間を無言で通し、悟りを得るため指を一本一本焼き続けていた。行の最後の日、彼はなぜか突然乱れた振舞いをする。彼は法雲に自分は未熟だと語り、南方の島で見た本物の僧の話をする。その僧はほとんどの島民が病で倒れた時、彼らの面倒を最後まで看たという。その名は知山だった。法雲は何年振りかで知山のもとを訪ね、山奥の小さな廃寺へ案内し、2人で庵を結んだ。静かな毎日が続き、冬が訪れた。村の金満家の屋敷へ開眼供養に呼ばれた翌日、酒屋に寄ったまま帰らない知山を探し回った法雲は、雪の中で小さくうずくまっている知山を発見した。遣体を荼毘に付した法雲は、遣骨を玉順に届けると、もう何年も会っていない母親に会いに行く。金持ちの妻となっていた母は自らの自堕落さをわびた。法雲は短い別れの言葉を残し、再び苦行の道へ旅立ってゆく。