ファラオの恋
解説
「パッション(1919)」「デセプション」等を監督製作してドイツ映画界に傑物ありの名声を博したエルンスト・ルビッチュ氏が大々的に監督製作した映画である。「アルゴール」「オセロ(1922)」や右二映画等に主演したエミール・ヤニングス氏主演、「影を失へる男」「巨人コラン」等の名優パウル・ヴェゲナー氏、同夫人リダ・サルモノヴァ嬢や「因縁の指環」のダグニー・セルヴェス嬢「無名の快傑」等のハリー・リートケ氏等が共演したもの。無声。
1921年製作/ドイツ
原題または英題:The Loves of Pharaoh Das Weib Des Pharao
ストーリー
エチオピア国の将軍サムラックはエジプト国王ファラオたるアメネスの許へ宝物を携え修交に来た。そして己が娘マケダをアメネスに配し更に親交の度を加えんとしたが貪欲なるアメネスは宝物にのみ目をくれマケダには心惹かれなかったのでサムラックはいささか不快に思った。此処にファラオの建築大臣の一人息子ラムフィスは、サムラックの女奴隷セオニスと恋に落ち思わずファラオの宝庫に近づいた為、罪を獲てアメネスの面前に引き出された。美しいセオニスを一見したアメネスは生来始めて真の恋を覚えた。女を獲ん為のみに二人を死罪に行うべきを無期懲役に処し、彼は彼女が深く恋するラムフィスを石山に逐いやって其所に服役させた。サムラック将軍は女奴隷セオニスの経緯から憤然帰国し、エジプト征討の師を率いて攻め寄せて来た。アメネスはセオニスを一旦妻としたがサムラックの軍を防御する為、秘密の大宝物庫の奥深く未だにラムフィスを恋い慕うセオニスを幽閉して置き、自ら戦陣に赴いた。戦い利なくして敗れ、アメネスは敵にも味方にも戦没を信じられた。折柄石山に苦役中のラムフィスは戦乱に紛れて首府チーベスに逃げ帰り、父に乞うてセオニスの所在を知り、宝庫の奥深く若き恋人同志は互いの健在を喜んだ。ラムフィスはエジプトの敵サムラックの軍に復讐を思い立ち妙計を以て敵の大軍を突破した。赫々たる武威に依り人民に選まれてファラオの位に即いた彼はセオニスを妃として幸福な暫くの時を送って居た。突如死を信じられて居たアメネスは困憊疲弊して帰国した。彼は人民の何者にも昔の暴虐の酬いとして辱められたが、神の司たる大僧正は飽く迄彼を助け再びファラオたらしめんとした。しかしアメネスが帰国したのはファラオの位を惜しんでではなかった。豪放な彼も妻たりしセオニスに対する恋の痛手を如何ともし能わなかった為であった。新しきファラオ・ラムフィスとて何ものにもかえ難きはセオニスの愛であった。彼はファラオの位を棄て彼女と逃亡を企てたが、人民の世望に背ける故を以て遂に彼等の私刑に逢い二人相抱いて打殺されてしまった。狂える如きアメネスは人民に向かって己れに対しても私刑を加えん事を望んだ。彼には恋するセオニスと共に死する幸福が何ものよりも望ましかったのである。しかし彼は無理に王位に即かしめられた。がファラオの冠が彼の頭に戴かれんとした刹那彼の命は永遠に消えてしまったのである。不撓豪邁の彼も恋には弱き一個の男であった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- エルンスト・ルビッチ
- 脚本
- ノルベルト・ファルク
- ハンス・クレリ
- 脚色
- ノルベルト・ファルク
- ハンス・クレリ
- 撮影
- テオドール・スパルクール
- 美術
- エルンスト・シュテルン
- クルト・リヒター