平和の谷

劇場公開日:

解説

少年と少女と黒人兵という国籍を異にする三人が、平和郷を求めて戦火の山野をさまようという、新興ユーゴスラヴィア映画。イヴァン・ルビッチの脚本・台詞に、ヴラディミル・コッホ、フランツェ・シュティグリッチ、フランツェ・ヤムニクが協力脚色し、監督はフランツェ・シュティグリッチ自身。撮影をルディ・ヴァウポティッチ、音楽をマリアン・ゴジナが受持っている。黒人兵に「戦火のかなた」「平和に生きる」のジョン・キッツミラーが扮して一九五七年カンヌ映画祭で最優秀男優賞を受賞し、少年のトゥーゴ・シュティグリッチは監督の息子である。ドイツ人少女のエヴェリーネ・ヴォールファイラーはドイツのユーゴ駐在商社員の娘から見出された。撮影はユーゴ中部山岳地帯の長期ロケによってほとんど製作された。カンヌの他に一九五六年プーラ映画祭でもこの作品は音楽と美術の賞を受けた。製作ムラデン・コジナ。

1956年製作/82分/ユーゴスラビア
原題または英題:Dolina Miru
配給:NCC=日活
劇場公開日:1958年8月31日

ストーリー

第二次大戦中、ドイツ軍占領下のユーゴスラヴィア北部国境の小さな町。ここも連日の連合国空軍の爆撃にさらされていた。八歳の町の少年マルコ(トゥーゴ・シュティグリッチ)達の間でも占領軍のドイツ人の子供たちと、彼等土地っ子たちには対立があった。今日も模型飛行機のことで喧嘩の最中に空襲警報が鳴り、その爆撃でマルコの家は直撃弾を受けて、父と母は死んだ。昔からこの町にいるドイツ人の三つの娘ロッテ(エヴェリーネ・ヴォールファイラー)も、両親を失った。こうして、敵対する二つの国の子供は、孤児収容所で知り合った。ロッテは、祖母からよく聞いていた「平和の谷」とよばれる静かな、美しい土地へ、戦争を避けて行くことを思いつき、マルコをさそった。半信半疑のマルコも、田舎の叔父のもとを訪ずれたくもあるので、賛成した。こうして二人は町を抜け出したが、河を渡ろうとしてロッテが流されそうになった時、ドイツ軍の地上砲火で撃墜された米軍機の乗組員で、落下傘によって彼等のそばにおりた黒人兵が、これをみて救けてくれた。ジム(ジョン・キッツミラー)と名のる彼に驚いた二人も、すぐに優しいこの黒人兵と仲よくなった。墜落した米国兵士が生きているのを知ったドイツ軍は、懸命にジムの行方を探したが、三人は野をこえ、山をこえてマルコの叔父の家に急いだ。苦心の末、三人は叔父さんの家にたどりついたが、一家は逃げさった後で、空家があるばかりだった。子供たちを寝かせて、ジムは自動小銃を手に家外に出た。ドイツ軍の気配がする。銃声がおこって、戦闘がはじまった。物音を聞いてパルチザン部隊がかけつけ、ドイツ軍は退治されたが、ジムも致命傷をおって倒れた。最後の力をふりしぼって幼い二人に逃げろといって、彼は死んだ。ジムの死体に心を残しながらも、マルコとロッテは、二人だけで、本当の「平和の谷」を求めてなおも歩き続けて行くのだった。

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