人形の家(1974)
劇場公開日:1975年2月1日
解説
ノルウェーが生んだ最大の劇作家ヘンリック・イブセンの代表作「人形の家」の映画化。製作・監督はジョゼフ・ロージー、脚本はデイヴィッド・マーサー、撮影はジェリー・フィッシャー、音楽はミシェル・ルグランが各各担当。出演はジェーン・フォンダ、デイヴィッド・ワーナー、トレヴァー・ハワード、デルフィーヌ・セイリグ、エドワード・フォックス、アンナ・ウィングなど。
1974年製作/イギリス
原題または英題:A Doll's House
配給:東和
劇場公開日:1975年2月1日
ストーリー
ノルウェーの北のはずれにある小さな町。結婚を間近にした若い娘ノラ(J・フォンダ)は、親友のクリスチーネ(D・セーリグ)と、独身時代最後の一日をスケートをして楽しんでいた。ノラの結婚相手は弁護士のトルバルド(D・ワーナー)で、二人は誰が見ても申し分ない似合いのカップルだった。一方、ノラの幸せそうな様子を見るにつけ、クリスチーネの気持は暗く沈んでいく--。というのもクリスチーネには病気の母と二人の弟をかかえた生活が、彼女の肩に重くのしかかっていたからである。そんな彼女にも恋人はいた。ノラの夫になるトルバルドと同窓のクログスタッド(E・フォックス)という貧しい弁護士で、彼女との結婚を望んでいたが、クリスチーネは不幸な家族を見棄てて結婚するわけにはいかなかった。折からクリスチーネには、ある金持ちの男との結婚話が持ち上がっていた。そのことを知ったクログスタッドは「君は愛情を犠牲にして結婚しようとしている」と責めたが、貧困に打ちひしがれたクログスタッドの胸のなかにはやりどころのない怒りが渦巻いていた。--結婚したノラとトルバルドが新しい町に移ってから幾年かが過ぎようとしていた。二人の間には三人の子供が生まれており、今年のクリスマスは、ノラや子供たちにとって待遠しいものだった。というのもトルバルドがこの町の銀行の頭取に抜擢されたのである。実直なトルバルドは弁護士としても嘱望されていたが、収入は多いとはいえず、ノラのような世間知らずのお嬢さん育ちには家計が赤字になることもしばしばだったのだが、もうそんなこともなくなるのだ。そんなある日、クリスチーネが、ノラの住む町にやって来た。クログスタッドの求愛を振り切って結婚した彼女は既に未亡人になっていた。今は彼女は女ひとりの生活をその手でたてていかなければならなかった。突然のクリスチーネの訪問で、二人は再会を喜び合った。そして数日後、ノラの熱心な口ききで、クリスチーネは、トルバルドの銀行に事務員として採用されることになった。一方、周囲の祝福を受けて頭取に就任したトルバルドは、まず仕事始めに、ある詐欺事件を起こしたりして何かと問題の多いクログスタッドを辞めさせたいと考えていた。かつては同じ学窓で学んだ男だが、彼の評判の悪さは銀行の信用問題にも関わった。トルバルドはついにそれを実行した。その頃、ノラは病弱の夫を親友のランク医師(T・ハワード)のすすめで、イタリアに転地療養させるための金策に困り果てていた。頼みの綱である父親は病床に臥せていた。そこに現われたのがクログスタッドだった。彼は借用書と引き換えに、ノラに千二百ダーレル四千八百クローネを貸した。ノラは保証人として、数日前逝った父親の名前をサインした。それは明らかに偽証だった。皮肉なことに、妻とクログスタッドの間にそんな秘密があった事など知る由もないトルバルドは既にクログスタッドに解雇通知を出してしまっていた。激怒したクログスタッドは、ノラに銀行に復職出来るようトルバルドに告げるか、さもないと例の証書の件を公表すると脅迫した。夫のためとはいえ、ノラは自分が取り返しのつかない過ちを犯してしまった事に驚愕した。ノラの異常な様子を知ったクリスチーネが、救いの手をさしのべたが既に遅く、クログスタッドの手紙が、トルバルドの手に届いてしまっていた。彼は茫然自失となって、あらゆる罵詈雑言をノラに投げつけた。夫の激しい叱責の言葉は、黙ってうなだれるノラの胸に石つぶてのように投げ散っていた。そのとき、一通の手紙が届けられた。手紙は、クリスチーネと再会したクログスタッドが改心して証書の件いっさいを白紙に戻すといってきたのだ。手紙を読んだトルバルドは狂気したかのように喜んだ。そのとき、ノラは人生のうちで初めて一つの決断を下した。父親に可愛いがられた娘時代、妻となってからも夫の思うままに動く人形のような妻だった自分。「私は今日限りあなたと別れます。私は自分自身と世間とを正しく知るために、この家を出て行きます。私はあなたの人形ではなく、あなたと同じ人間なのです」。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ジョセフ・ロージー
- 脚本
- デビッド・マーサー
- 原作
- ヘンリック・イプセン
- 製作
- ジョセフ・ロージー
- 撮影
- ゲリー・フィッシャー
- 音楽
- ミシェル・ルグラン
- 字幕監修
- 清水俊二