黄金のレビュー・感想・評価
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Easy come, easy go.
昔の映画の分、技術的描写ひとつひとつのリアリティは現代と見劣りはしますが、物語の普遍性は保たれておりむしろ舞台調の演出がメッセージ性を更に強調してくれてる印象でした。
最初はそこまで腰据えて鑑賞する気は無かったのですが、やはり良いものは良いんでしょうね。最後まで釘付けでした。
個人的に、ハンフリーボガートがこんな汚れ役をするとは思ってなかったのでそこもいい意味で期待を裏切ってくれました。
昔の人も怒っていたのだろうか
古い名作映画などは物語の核心が動き出すまでが長い。気持ちが焦っている現代人の感覚からすると、無駄なシーンだ、とか、尺稼ぎだ、とか、見当違いの批判が出そうなゆっくり加減である。
実際はもちろん無駄でも尺稼ぎでもなく、一つ一つ必要な場面を丁寧に積み重ねているだけなのだが。
現代人の感覚に合わせた最近の映画だと、この積み重ねがないからどうにも薄っぺらくなって駄目だ。その点「黄金」はイイ。
さて内容についてだが、まず最初に注目すべきは、自分が考えていることは他人が考えていることと同じだと思い込む罠だろう。自分がつまらない映画は他人もつまらないはずだ、という感覚。本作の中では黄金をめぐる思惑がそれにあたり、疑心暗鬼を生んでドラマを形成していく。
ドブズはこの罠にドップリと浸かりこんでいくが、彼が本来持っていたであろう性質と器の小ささが相まって、哀愁が漂うほどに悲劇とも喜劇とも言えないような、全くバカだねぇと漏らしたくなるラストを迎えことになる。
次の注目ポイントはやはりエンディングだろう。
高評価の映画を観てつまらなかったときに怒りのレビューを書き込む人をたまに見るが、彼らは一体何に怒っているのだろうね?
怒りや憎しみは良い結果を生まないし、怒りや憎しみの反対が何なのかわからないけど、少なくとも笑いは前向きな気持ちを生み出すと「黄金」は教えてくれた。
現代でも通じるテーマを持った古い名作は多いが、逆に現代だからこそ刺さるこの「黄金」はなかなか貴重なのではないだろうか。
肝心の怒れる若者は本作など観ないだろうけどさ。
ボギー❗️あなたは役者だ‼️
極限状況における人間の欲望がいかにして魂を食い荒らしていくのかを描いた、ジョン・ヒューストン監督&ボギーの名コンビによるチョー傑作‼️「マルタの鷹」のサム・スペードや「カサブランカ」のリックに心酔する私としては、この作品でのボギー扮するドブスは、感情の起伏の激しい偏執狂で、あまり好きなキャラではないのですが、この傑作のテーマを象徴するキャラクターとして、ドブスというキャラを見事に体現したボギーの演技力は素晴らしいと思います‼️汚い町や汚いキャラたち、太陽や砂地のギラギラざらざらした汚い感触、女性キャラも皆無でセンチメンタルな要素も全くなく、非情に徹した作風が行き詰まるスリルとサスペンスを生み出しており、これぞハードボイルドの極致ですね‼️ラスト、ドブスを殺した山賊が砂金の価値がわからず放り出してしまい、砂金が大地に戻っていくシーンは、スタンリー・キューブリック監督の「現金に体を張れ」のラストと並び、欲望が無に帰す双璧なシーン‼️やっぱり人間過剰な欲張りはいけませんね、人並みくらいが丁度いい‼️ちなみにジョージ・ルーカス&スティーヴン・スピルバーグ監督はインディ・ジョーンズのキャラ造形にドブスが大きく影響していると語っていますが、全く意味不明というか、わからないですね・・・
見応えと面白さが一緒になって引き付けるヒューストン映画の、異常心理の男のドラマ
1941年の「マルタの鷹」から1987年の「ザ・デッド/『ダブリン市民』より」まで46年の長いキャリアを重ね、1950年代から60年代に活躍したアメリカ映画を代表するジョン・ヒューストン監督の傑作です。ドイツの作家B・トレヴンの『シエラ・マドレの宝物』(1927年)の冒険小説を原作に、脚本家出身のヒューストン監督が単独で脚色しました。他の殆どの作品の脚本を共作したり、晩年は監督のみに専念したところを見ると、この作品に対する拘りは特に強かったと思われます。自身が完成させた脚本は、他に第一作の「マルタの鷹」のみです。中学生の時に観てその面白さに興奮し、その後大分経って見直して、無駄がない脚本の構成力に感心しましたが、この作品も2時間を超える長尺ながら先ず言えることは、脚本の素晴らしさでした。
それは主要登場人物3人の性格のキャラクター設定が明確にして、相互の関係を特徴付ける対立や協調の人間ドラマが展開する面白さに集約されています。主人公ダブズはメキシコに流れて来て落ちぶれた浮浪者で、メキシコ革命(1910年~1917年)後の混乱した世相でも、他国に活路を見出そうとするアメリカ人。でもダブズには商才も無く人徳もない。彼と共に給与未払いの詐欺に遭うカーティンは、極普通の善人の若者。このふたりに一獲千金の夢を語るハワードは、酸いも甘いも嚙み分ける山師で陽気な老人。この三人が出会いチームを結成するまでに、ヒューストン演じる白いスーツの男とアメリカ人をカモにする実業家マコーミック、そして14歳の子役ロバート・ブレイクの宝くじ売りの少年が絡んで、いよいよ金鉱探しの危険な旅が始まります。ここで注目すべきは、ダブズが人の眼を見て話さないこと。つまり人の心が読めない伏線になっています。欲望にとりつかれて猜疑心から人間不信になる、ダブズの精神的な脆さを裏付けるシークエンスです。
金鉱堀の本編では、列車がゴールデン・ハット率いる山賊に襲撃されるアクションシーンから始まり、強風の中の過酷な登山を経て、ハワードの体力に付いて行けない二人の疲労困憊をユーモラスに描く。後半のクライマックスを盛り上げるすべての要素が絡み合う、考え尽くされた脚本です。フェデラルズと呼ばれる連邦警察とゴールデン・ハットの盗賊の攻防。コーディという男の登場で張り詰めた緊迫感を増幅してからの、見応えある銃撃戦、続くカーティンの人の良さを窺わせる展開の巧さ。インディオとの交流では、溺れた子供を助けるハワードの人柄の良さと温かさを強調して、娯楽作品としての面白さと緩急のバランスを組み立てています。そして、遂に黄金の魅力に負け仲間を裏切る男の無残な結末と、貪欲の末の喪失の経験から地道に働く生き方に進むラストシーンで閉める、映画的な終わり方。演出では、ゴールデン・ハットの不気味さがよく表現されているのと、徐々に孤立化していくダブズの変化する異常心理が独り言の台詞で説明されているところが分かり易く良かった。ごく普通の独り言シーンは過剰説明に終わるものですが、この作品は伏線のシーンを一度入れた上でダブズの追い詰められた心理を見事に表現していました。
しかし、それでもこの愚かなダブズをハンフリー・ボガートが演じたことは、意外でした。スターが演じる役ではないです。ボガートにとっては大きな挑戦であったと思われます。役柄と個性が噛み合い素晴らしいのは、ヒューストンの実父の名優ウオルター・ヒューストン64歳のいぶし銀の演技。対してカーティンを演じたティム・ホルトは個性の輝きがもっと欲しかった。本来ならこのカーティンが主人公になるところをダブズにしたのが、この作品の面白さであり怖さで、ヒューストン監督が好む男の敗北のドラマの特徴が挙げられると思います。見事な脚本に骨太の迫力ある演出は、父にアカデミー賞をもたらした成果を残し、ヒューストン監督の最高傑作の一本としてアメリカ映画の歴史に遺りました。
AFI 30位の古典名作
昭和23年の作品でアメリカ人には古典として親しまれている作品です。
男っぽい作品が好きなヒューストン君の男っぽいというより男くさい映画です。
今観るとちょっと演技も大げさすぎるきらいはあるものの、意外に話が上がったり下がったりでスリリングです。しかし、ボガード君ってハードボイルドも決まるけど、こういう薄汚くて性格がひねくれてる胸糞悪い悪役やると水際立った演技を見せますね。
黄金は人を変えてしまう
冒頭では宝くじの当選番号を確かめるボガード。あーあ、やっぱり駄目だと、「同郷のよしみで」と物乞いのまねを・・・そんなとき飛び込んできたのが金鉱の仕事。一日8ドルだ!「黄金は人を変えてしまう」と言った爺さんの言葉が信じられないドブズ。それを確かめたい気持ちもあったんだろうな。
疑心暗鬼。砂金を見つけてせっせと掘る3人。分け前について話し合ったときから、お互いが信用できなくなる。
ある日、コーディというアメリカ人に跡をつけられ、3人が金を掘ってるんじゃないかと疑われる。そして、殺すのか仲間にするかと選択を迫られ・・・緊張した心理劇になるかと思っていたら、そこへ山賊がやってきた。銃撃戦となり、コーディが死んでしまう。
一人一人が一生遊んで暮らせる分を掘りつくし、帰途につく一行。途中、メキシコインディアンに川に落ちて動かなくなった子供を助けてくれと言われ、ハワードが手伝う。奇跡をおこしたと讃えられ、村に招待されてしまった彼を置いて、ドブズとコーチンが町へ向かった。しかし、ドブズの猜疑心は膨れ上がるばかり。ついに自分の手でコーチンを撃ってしまうが、瀕死で逃げ、ハワードのいる村にたどり着いた。
ドブズは一人北へ向かうが山賊に殺され、ロバも砂金も奪われてしまい、金の価値がわからない山賊はあっさり捨ててしまうのだ。先住民たちとハワード、コーチンが砂金を捨てたとされる場所で大笑い。「神様がくれた冗談だ」・・・
さもしい心と疑う心。一山当てることを目指しただけなのにここまでドラマが待っているとは。ハワードはそのまま村で医者に、ドブズはコーディの家へ向かうことになる爽やかさ。
見応えある、素晴らしい傑作
ハンフリーボガードが見事な悪役を演じる
物乞いをする情けないシーンから始まり、黄金に目が眩み次第に正気を失ってしまう様が見事だ
歓迎されざる闖入者の妻からの手紙を読んで、人間らしさを一時でも取り戻すシーンも素晴らしい
しかしなんと言っても爺様役のウォルター・ヒューストンだ
なんと彼は本作の監督ジョン・ヒューストンの父親
つまり本作で監督と彼とで、監督賞と助演男優賞を親子で受賞してしまっているのだから物凄い
説得力のある見事な演技だ
脚本も撮影もテンポも申し分なし
素晴らしい傑作だ
ラストシーンの何もかもむなしく大笑いするしかない結末は、黄金の魔力を見事に表現しきった本作の結末に実にふさわしい名シーンだった
見応えのある傑作とは、本作のような作品の事だろう
主人公に相応しい男ではない
総合55点 ( ストーリー:60点|キャスト:55点|演出:50点|ビジュアル:60点|音楽:60点 )
偶然会ったばかりの三人の男たちが金を掘る。しかし一人はメキシコまで来て物乞いをするような小人物で、金を目の前にしていとも簡単に自分を見失う。金の採掘をするものは荒くれ者も多くて犯罪行為が日常的だったとは聞くが、これもよくあるそのような話の1つといったところだろう。
それでこの作品だが、主人公が魅力がない。クズならクズでもいいのだが、それならそれでクズなりの事情とか狡賢さとか盛り上がる展開があればいいのだが、それがなく最後までただ小人物のクズで終わる。主人公を一番存在感のあった山師の老人にするか、展開を変えるかしないと良いものにならないだろう。演出も全体に迫力が無いし、銃を撃ち人が死ぬ場面も映さないようなものでは分り辛い。
演技賞
アカデミー賞で「カサブランカ」はノミネート
「黄金」は監督と助演が受賞したが この作品でボガードは主演ノミネートされてもよかった ボガードのワイルド系では「アフリカの女王」がようやく受賞した もともと悪役いっぱいやってるからこういう役もリアルにこなせる 冒頭ハズレクジに無言の哀しい目がいい
ハワードのように 春風駘蕩に生きたい。
主要な3人の登場人物の性質が三者三様でありながら、一緒に行動するのに非常に良いバランスが取れている風で、見ていて面白かった!
また、人間の日常的な善意と、生活の為の欲がこれまたバランス良く描かれているのも見処だと思う。
人の運命って、やっぱり 一見ちょとした(様に見える)選択の積み重ねで大きく変わるのだなぁと。
ハンフリー・ボガート演じるフレッドが、黄金の持つ魔力によって(というより、疲労と睡眠不足のせいかも?)徐々に精神不安に陥って変貌していく様が、鬼気迫るものがある。
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