「『ジュラシック・パーク』前夜の画期的合成技術がここに」永遠に美しく… 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
『ジュラシック・パーク』前夜の画期的合成技術がここに
『HERE 時を越えて』のレビューを書くにあたり、改めてロバート・ゼメキスが映像のイノベーターであることを再確認したわけだが、ゼメキス作品の中でも、映画が製作された当時、1992年時点での最新鋭と呼べる特撮を投入しているのが『永遠に美しく・・・』だ。
コンピュータ生成による皮膚デクスチャ、アニマトロニクス、特殊メイクの組み合わせて実現した、首が凹んだメリル・ストリープや、体の前後が逆転した同じくストリープ、そして、お腹の真ん中に穴が空いたゴールディ・ホーン等々、特撮を担当したILMはあらゆる可能性に挑戦し、それが布石となって翌年『ジュラシック・パーク』が世に放たれることとなる。壊れた人間の視覚化という意味では、こちらの方がより画期的だったかも知れない。
さらに、実はコメディエンヌとしての才能にも恵まれていたストリープの、これが意外な代表作であること、ストリープとホーンに囲まれて、死化粧の第一人者を演じるブルース・ウィリスの憎めないコメディリリーフぶりにも感心する。
不老不死の媚薬がもたらす功罪を描いたという点で、本作は話題の『サブスタンス』('24年)のテーマに繋がる。意図したかどうかは別にして、ゼメキスは永遠に変わらない女性の美に対する執着を描いたイノベーターとも言えそうだ。
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