手紙(1929)
解説
「港の女」「魔術師」の原作者W・サマセット・モーム氏作の舞台劇を百パーセント発声映画化したもので、ギャレット・フォート氏が改作し、「空行かば」「三罪人」「情炎夜曲」の脚色者ジャン・ド・リミュール氏が第一回作品として監督したもの。主役は前記「港の女」の原作舞台劇「雨」に出演して名声を得、M・G・M映画「男と女と罪」でジョン・ギルバート氏と共演したジャンヌ・イーグルス嬢が勤め、助演者も映画には馴染み薄き舞台劇俳優のみで、O・P・ヘギー氏、レジナルド・オーウェン氏、ハーバート・マーシャル氏、タマキ吉原氏等で、撮影者は「狂言成金」「想い叶うて」のジョージ・フォルシー氏
1929年製作/アメリカ
原題または英題:The Letter
ストーリー
殺人罪を犯してシンガポールの刑務所につながれている一女囚の身の上話です。彼女は名をレズリーと呼びロバート・クロスビーというゴム栽培業者の妻で、シンガポールから少し離れた奥地の森林地帯に住んでいましたが植民地の無聊な生活はレズリーをして不義の快楽に耽らしめるようになったのです。相手の男というのはジョフリー・ハモンドという身持のよくない男で、レズリーとの関係がありながら、リ・ティという中国人の女とも通じたので、レズリーは嫉妬を起し、良人ロバートの留守中ジョフリーを呼び寄せて真向から彼の仕打を詰りました。しかしジョフリーは最早彼女にあまり良い返事をしなかったので猛り狂ったレズリーは拳銃をもって情夫を射殺してしまったのです。当然レズリーは法廷に立たねばなりませんでしたが男勝りの彼女は検事や陪審官たちを前にして、不逞にも平然として虚言を弄し、ジョフリーの方に非があったかのように言いくるめたので、悪運強く彼女は無罪の判決を受けたのでした。ところが中国娘のリ・ティはレズリーが有罪である証拠--レズリーがジョフリーに送った手紙を手に入れ、それを返す代償として1万ドルをレズリーに要求しました。その金をレズリーの弁護士ジョイスが一時立替えたことから、遂に彼女の不身持や犯罪の虚言などが良人のロバートの知るところとなってしまいました。それでもレズリーは悔いもせず誤りもせず身人に対して散々毒吐いて不貞腐れたのです。しかしロバートは彼女を逐出そうとはせず、彼女自身の過去の記憶によって彼女の良心を呼び醒そうとしました。そのためさすがのレズリーも遂に耐え切れなくなって、自首したのでありました。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ジャン・ド・リミュール
- 脚色
- ギャレット・フォート
- 原作戯曲
- W・サマセット・モーム
- 撮影
- ジョージ・J・フォルシー
- 題字
- Morton Darnard
受賞歴
第2回 アカデミー賞(1929年)
ノミネート
女優賞 | ジャンヌ・イーグルス |
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