「珍妙な味わいのグルメミステリーコメディに舌鼓」料理長殿、ご用心 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
珍妙な味わいのグルメミステリーコメディに舌鼓
ミステリー、ブラック・コメディ、グルメの盛り合わせ。
近年も変わった味わいの『ザ・メニュー』があったが、こちらもなかなか。1978年の作品。
グルメ誌に批評を掲載する美食家のマックス。が、食べ過ぎで医者から健康を注意されるが、お構いナシ。
ふと思い付く。世界一の料理は何か…?
マックス主宰の女王陛下の晩餐会。世界の名だたるシェフが集う。
そんな中、一人が殺され、また一人が殺され…。
殺されるのは超有名シェフ。
つまり、殺されたら超一流と認められたようなもの。が、殺されなければ…。
死にたくないけど、認められないのもイヤだ。
マックスの料理誌に掲載されたされないでシェフ同士でいざこざ起きるくらい。
超一流の誇り、意地。でも、少々傲慢さも。
皮肉や滑稽をトッピングして。
デザート名シェフのナターシャが推理。
狙われているのはマックスの料理誌に掲載されたシェフばかり。自分も含め。
掲載されなかったグランヴィリエが以前マックスや他のシェフと揉め事。その復讐…? そしたら彼も狙われ…と思ったら自作自演。やはり彼が犯人…?
警察はマックスに目星。
また料理誌に掲載されたシェフが殺され、残るはナターシャのみ。TV収録。
犯人に狙われる。元夫ロビーは彼女を救えるか…? ついでにヨリを戻せるか…?
そして犯人は…。
一応二転三転するミステリーにはなっているが、それが特筆すべきメインディッシュにはなっていなかったかな。
シェフたちが自分の得意料理風に殺されるのはユニークだった。
犯人はマックスの秘書。マックスの食べ過ぎを辞めさせる為、一流シェフたちを次々殺していた。
これがシリアスだったらサイコだが、何だかミステリーとしてちとユルい感じも。
個人的に“メインディッシュ”はまあまあ。
では、何に舌鼓を打つか…?
一癖二癖あるキャラたちが引き出すブラックユーモアの旨味。
ロビーは料理や殺人よりナターシャとのヨリを戻す事に必死。
ジャン・ロシュフォール、フィリップ・ノワレらヨーロッパの名優たち。
何と言っても料理をゴージャスにさせるのは、ジャクリーン・ビセットの美貌。ほんのりお色気も添えて。
彼女が作る豪華スイーツが美味しそう。食べたら“爆発”しそうなくらい。
勿論、グルメ映画。各シェフが腕を振るう超一流料理の数々は極上のスパイス。
監督テッド・コッチェフは後の『ランボー』で知られるが、かつてシェフとして働いていた事もあったという。
もう一つ美味は、ヨーロッパ各地の美しいロケーション。個人的に、これこそ本作一番のご馳走だったかも…?
刺激的な味では『ザ・メニュー』だったが、
何処か滑稽なキャラたち、ブラックユーモア、料理、ロケーション、ジャクリーン・ビセットの美貌…この珍妙な味わいのミステリーをご堪能あれ。