「たといわたしは死の陰の谷を歩むとも、わざわいを恐れません」エレファント・マン talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
たといわたしは死の陰の谷を歩むとも、わざわいを恐れません
市村正親さん演じるエレファント・マンを劇団四季の公演で見た。だからこの映画も公開時に母親に連れられて行ったのだと思う。
見世物小屋の前、後ろ姿のシルクハットの男がぱっと振り向く、それは若きアンソニー・ホプキンス。そのホプキンスは、エレファント・マンを見てまばたき一つせず左目からつーっと涙を流す。"Am I a good man, or a bad man?"と妻に問いかけ苦悩する外科医のホプキンス。
ジョン・メリック(エレファント・マン)の左手はずっと眺めていたいほどに美しい。身だしなみを調えるようになってからは小指に指輪をしている。細く白く繊細でしなやかな左手。ジョンは知的で想像力豊かでことばの使い方もエレガントだ。
見世物小屋の中も病院でも飲み屋でも夜を照らすランプの存在が印象的だった。産業革命真っ只中のロンドン。機械は動き出したらもう止まらない。工場労働、電気、鉄道、蒸気船の場面が映ることで、都会に人間が集中し働く子どもが沢山いることが伺われる。煤けたようなあまり美しくないロンドン、それと対称的に美しく清らかなジョン。
恐怖心のあまり話ができず話せないと思われていたジョンが、トリーヴス医師(ホプキンス)と出会った。最後にジョンはトリーヴスに伝える:「自分を発見することができた。あなたがもし居なかったらこんなことも言えなかった」
病院の評議会にプリンセス・オブ・ウェールズがやってきてヴィクトリア女王の信書を代読する。その結果、評議会「満場一致」でジョンは今後もずっと病院に居てよいことが決まる。これはなんだか機械仕掛けの神様のようで白けた。でも考えてみれば、「ジョン」の真実を発見し病室を訪問する女優、トリーヴスの妻アン、病院のナース達や婦長、そしてヴィクトリア女王と、ジョンに手を差し伸べるのはトリーヴス医師を除けばいつも女性だった。ジョンが肌身離さず持っている写真の母が彼を守り導いたのだと思いたい。
アフタヌーン・ティーに招待された。美しい劇場で舞台を見た。部屋から見えるセント・フィリップ聖堂の全貌を想像しながら作り始めた紙の模型も完成した。全部経験した、できた。室内の壁に掛かる、ベッドに横たわって眠る子どもの絵がジョンにとっては一番の憧れ、あのように眠ってみたい。たくさんの枕を一つ一つベッドから床に落としジョンは平らなベッドに身を横たえ永遠の眠りにつく。母を夢見ながら。
デヴィッド・リンチ監督映画に導かれてこの映画をまた見ることができた。
舞台観てみたいですー
今作は常々リメイク希望してますが、逆に今の「多種多様を認める世の中」では、他にも似た様なテーマの作品は多そうなので、リメイクした所で埋もれてしまうかもしれませんねー😩
複雑😭