「Am I a good person? 人間の醜美とは?」エレファント・マン アキ爺さんの映画レビュー(感想・評価)
Am I a good person? 人間の醜美とは?
人生初デビット・リンチ‼️
観たことないのになんとなく変な映画を作る人イメージがあったデビット・リンチ監督。「エレファント・マン」は古い映画だし重い内容だろうけど、「映画好きなら観とかないといけない」っという妙な使命感で劇場に足を運んだのですが・・・いや~良かったです。
正直言ってジョン・メリックの姿はそこまで驚かなかったというか。顔を出すまで物凄く引っ張るのでドンドン妄想が膨らんでいって、象のように鼻が長かったりするのかなっとか、もはやエイリアンな姿を考えてたりしたのですが、いざ顔が出ると、「あれ?意外に普通じゃん」っと思ってしまった自分がいます。スゴい事はスゴいのですが、これまで変な映画観てて耐性がついていたからでしょうか?いや、もし実生活でお客さんとか取引先の人だったら初見はビックリすると思いますけど、なんだかんだで外見って観てると慣れるもんですし。でも、あの麻袋かぶってる姿のデザインは秀逸ですよね。両目見えてるのに片方だけしか穴を空けてない所とか。あれ一発でエレファント・マンとわかる印象に残るデザインです。
で、ジョン・メリックにはそんなに抵抗を覚えなかった分、あの酔っ払いどもに腹が立って腹が立って。ジョンがホント可哀想で。ジョンは何もしてないのにかまうなや!って思って、もうあいつら最悪でしたね。素朴な感じのジョンとの対比で酔っ払いどもマジ醜い。そういう風に作ってあるんでしょうけど、デビット・リンチ監督見せ方上手いわ。嫌なヤツをちゃんと嫌なヤツとして描いてる。後ろからポカンとやった婦長さんはグッジョブでした。
怖い人なイメージしかないアンソニー・ホプキンスが良い医者役だったのも良かったですね。ってかアンソニー・ホプキンスが出ていた事自体知らなくって、最初に登場した時はお!有名俳優いるやんっと思いました。ジョンの姿を初めて見た時に涙するシーンは何だか迫力あります。で、医者として、またジョンの友人としても色々悩むんですよね。暗い部屋で「自分は良い人間なんだろうか?」っと自問自答している姿は印象的でした。きっとジョンに友人と言われる度に心の中で葛藤があったんだろうなぁ。
もしかしたら金持ちの偽善にジョンを晒し者にしていただけかも知れないのですが、個人的には偽善ってそんなに否定するものでもないと思ってるんですよ。だって、その行為で助かる人もいるわけですし。個人的にわりと献血に行ったりするのですが、例えば「献血で貰えるレトルトカレーとかの土産を目的に献血してます」なんて言ったら、それは偽善になるのでしょうか?この映画で言えばジョンは楽しそうに会話してましたよね?まぁ、そこで悩む所にトリーヴスのドラマがあるんですけどね。
でも、現代ならインターネットがあるので人前に出なくってもできる仕事はいくらでもあるのではないかと思いますが、あの時代だとそれこそ見世物小屋に自分を売るしかなかったのでしょう。わざわざ金払ってまで変な人を観たいかっと問われると、今の感覚だと大半の人間は「NO」ではないでしょうか?それでも本作では時代的な悲劇性もあるのでしょうけど、根底に流れる「自分と違う者を恐れる感情」は今も昔も変わらないのかも知れません。例えば宗教に置き換えるともうちょっと感覚が掴みやすいかも。
差別って無意識でやってる事も多くって、大半が相手に対する無理解からくるんですよね。でも、そもそも論で「自分が自分が」で他人を理解しようとしない人間なんて腐る程いますし。それでも多様性が叫ばれる昨今、多少やり過ぎな面はある問題は別としても、世の中少しはマシになっているのではないかと思いたい。そう信じたい。そんな風に思った作品でした。うん、観て良かった。