紅塵
解説
「自由の魂」「心の青空」「スザン・レノックス」のクラーク・ゲーブルが「街の野獣(1932)」「秘密の6」のジーン・ハーロウと共演する映画で、ウィルソン・コリソン作の舞台劇に基づいて「街の野獣(1932)」「暗黒街の顔役(1932)」のジョン・リー・メインが脚色し、「ダグラスの世界一周」「泥人形」のヴィクター・フレミングが監督に当たり、「コンゴ」「僕の武勇伝」のハロルド・ロッソンが撮影した。助演者は「火の翼」「狼火」のメアリー・アスター、「六月十三日の夜」「百万円貰ったら」のジーン・レイモンドを始め、タリー・マーシャル、ドナルド・クリスプ、フォーレスター・ハーヴェイ等である。
1932年製作/アメリカ
原題または英題:Red Dust
ストーリー
デニス・カーソンはインドシナのあるゴム栽培地の主任だった。彼は父の跡を継いでこの熱帯地に住んでいるので、恐るべき風土病の熱病にも、熱砂紅塵を吹きまくる暴風にも、雨季の長雨にも、文明世界と隔絶した寂莫さにも負けないだけの体躯と性格との持ち主だった。しかしさすがのデニスも毎年の雨季近づく頃には憂鬱になるのだった。不健康地で女の住むに堪えないこの土地には全然女っ気がなかったが、西貢に巣くう素性の知れない女の1人ヴァンティンが、カーソンの部下ギドンと共にやってきてカーソンの男らしさに惚れ込んだので、カーソンは憂鬱を忘れて暮らした。ヴァンティンが西貢へ立った日に、測量技師のウィリスが美しい妻のバーバラを携えて着任した。彼はこの蛮地には不適当な体躯の持ち主で着いた日から激しい熱病を患った。デニスは弱い男に同情は持てなかったが、初めて見る美しい、素性の正しい女に押さえきれない憧憬を感じた。そこでバーバラに頼まれるままに、医者のない土地なので医者代わりに熱心に看病してやった。西貢に行くはずだったヴァンティンは河蒸気の故障で引き返してきたが、デニスがバーバラに惚れているのを知ると激しい嫉妬に駆られ、2人を監視するのだった。ウィリスの熱病が回復しきった頃、雨季が始まった。ウィリスはデニスを命の親と思い彼に敬服し信頼していたので、デニスがバーバラに恋していることを気付かなかった。デニスは思うところあって、雨季であるにも拘らず溝渠工事の完成を急ぎ、ウィリスと共にマック、ギドンを派遣して工事を監督させた。邪魔者がいなくなったので、デニスはバーバラの愛を求めるのに遠慮も要らなかった。ヴァンティンは腐り切って居たが、交通不便の土地であるし、雨季なので動きがとれなかった。バーバラもデニスの男性美に心をひかれ、ウィリスと別れてデニスと結婚する気になった。デニスは工事の地に馬を駆ってそのことを告げに行ったが、ウィリスが妻を溺愛し、またデニスを父の如く兄の如く信頼している真情を知ってはその妻を奪うに忍びなかった。何事も言わず彼は引き返したが、ウィリスはデニスのことでギドンに罵倒されて疑惑を起こし、跡を追った。帰ったデニスはこの蛮地の生活にも堪え得る野生の女ヴァンティンに満足してバーバラはウィリスに返すことに決心した。そして2人で酒を飲み巫山戯ちらしてバーバラを侮辱したので、バーバラはデニスを狙撃して傷つけた。その場にウィリスが来あわせた。デニスは自分が悪者になってバーバラは潔白であるとウィリスに告げた。ウィリス夫妻は即刻退去した。デニスはヴァンティンの看護を受けて、傷も日ならずして癒え、彼女と似合いの夫婦となった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ビクター・フレミング
- 脚色
- ジョン・リー・メイヒン
- 原作
- ウィルソン・コリソン
- 撮影
- ハロルド・ロッソン