クレイグの妻

解説

ジョージ・ケリー作の舞台劇の映画化で「真夏の夜の夢」「最初の接吻」のメアリー・マッコール・ジュニアが脚色し、「女優ナナ」「我等は楽しく地獄へ行く」のドロシー・アーズナーが監督に当たり、「罪と罰」「ギャング戦線」のルシエン・バラードが撮影したもの。主演は「二国旗の下に」「米国の機密室」のロザリンド・ラッセルと「ロジタ(1936)」「ガルシアの伝令」のジョン・ボールズで、「モダン騎士道」のビリー・バーク、「ポンペイ最後の日(1935)」のドロシー・ウィルソン、「この三人」のアルマ・クルーガー、「舗道の青春」のレイモンド・ウォルバーン、「可愛いオディ」のジェーン・ダーウィル、ロバート・アレン、ニディア・ウェストマン、キャスリーン・バーグ等が助演している。

1936年製作/アメリカ
原題または英題:Craig's Wife

ストーリー

ハリエットはウォルター・クレイグと2年前に結婚した。ウォルターは彼女を熱愛して求婚したのだが、彼女は夫を愛しはしなかった。妻たることよりもクレイグ家の主婦として、家を守ることが彼女の望みであった。家は彼女の城廊であり聖堂であった。彼女は夫が喫煙するのさえ嫌った。夫の友達もこの1年半、訪ねて来なくなった。ハリエットはオルバニイに住む姉の病床を訪ねて1週間程留守だった。ウォルターは友人バスモアの家へカルタ遊びに行った。ところが人数が足りず彼はバスモアと共に倶楽部で遊んだ。翌日ハリエットは母の見舞いに来ている姪のエセルを連れてニューヨークへ帰った。エセルの許婚の大学講師フレデリックスからエセルに電話が掛かって来たとき、ハリエットはエセルに通ぜず電話を切ってしまった。また、同居している夫の叔母で老嬢のオーステンが、隣家のフレジア夫人とその孫を部屋に招じ入れた事を知ると、ハリエットは醜く怒った。あまりのことにオーステンはクレイグ家を出ると言明した。彼女は甥のウォルターに、ハリエットは遠からず良人の彼をも家に居たたまれなくするだろうと警告した。オーステン嬢と衝突して憤慨したハリエットは、女中のメイジーが知り合いの労働者を台所に入れていたのを怒り、メイジーを首にした。ウォルターは友人バークマイアに会い、バスモア夫妻が今朝死体となって発見された事を聞かされる。バスモアは夫婦仲が面白くなく、醜く腐って居るのを知っているウォルターは、バスモアがふしだらな妻を殺して自殺したに相違ない、と断言した。ウォルターの不在に、刑事がきてハリエットにバスモア事件に就いていろいろ訊ねた。バスモアの不幸に深く同情しているウォルターは、帰宅して刑事が来たと知るや、事情を警察に知らせようとする。殺人事件に拘り合うのは名誉にならないあまりか、妙に疑われると大変だと言ってハリエットは夫が電話をかけるのを止めた。彼女は、ウォルターが有罪でも黙っていれば判らず仕舞で家名も損じないですむから、体面を損じて無罪を立証するよりは、ましだと主張した。彼女は夫の身を案じてるのではなかった。自分の体面を保つことに焦慮したのだった。ウォルターは叔母の言の正しさを知り、ハリエットに対する愛は冷め果てた。翌朝、エセルは迎えに来た許婚と一緒に母の許へ急いだ。オーステン嬢はホテルへ引っ越した。家政婦もオーステン嬢のお供をした。ウォルターも「僕とでなく、僕の家と結婚した貴方だから、この家は遣る」と言って去った。そこに、オルバニイの姉が死んだ、という電報が来た。独りぼっちになったハリエットは亡霊の如く、家の中を歩き回った。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0ドロシー・アーズナー監督の傑作!

2022年4月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞。(勝手に4本立ての1本目)

先日観た『恋に踊る』が傑作だったので「ドロシー・アーズナー監督作品は機会あれば観ること」にして、本作も観た。
ドロシー・アーズナー監督作は3本目だが、この映画も素晴らしき傑作!
何と言っても、主演を演じたロザリンド・ラッセルの怖さが見事!

夫(ジョン・ボールズ)が妻(ロザリンド・ラッセル)に「君は“家”と結婚した…」と言うセリフが、この恐ろしい妻の本質を表現している。

物語は、ある夫婦が豪邸に住んでいて、メイドも2人いる。
妻ハリエット(ロザリンド・ラッセル)の姉が入院したため妻が遠くの病院に行っている時、その家の夫ウォルター(ジョン・ボールズ)はポーカー遊びに友人宅へ行く。
その友人ファーガス(トーマス・ミッチェル)は、なぜか友人達から敬遠されるようになっていて、ポーカーに来たのはウォルターのみ。ファーガスの妻も外で浮気する姿が映されることで、ファーガスの窮地が鮮明に描かれる。
豪邸に妻ハリエットが帰宅して、家の中を全てコントロールする姿は恐ろしいまでに徹底している。ロザリンド・ラッセルが好演。
ハリエットは、姪の婚約者から電話がかかってきても取りつがず、義理の母が隣人を家に呼ぶと嫌がり、隣人から貰った花を飾っても花が散って床が汚れる、義理の母が家を出て行く時の引越し屋が床に傷をつけようものなら狂ったように喚き散らす……などなど。
更に、夫がポーカーしに行ったファーガス夫妻が死んだ時、警察から夫ウォルターも事情聴取を受けるが、妻ハリエットは「夫の有罪/無罪よりも世間体が大事!」と言って“家”に執着するあたりも凄過ぎる。
その後も物語は続くが、長くなるので割愛。

終盤、ロザリンド・ラッセルの姿を映すローアングルから見上げるカメラは、彼女の後ろに立派な屋敷の階段を映しており、妻と家を中心に据えたショットはドロシー・アーズナー監督の才能を顕著に見せる名場面だと思う。

ドロシー・アーズナー監督、やはり見逃せない映画作家である。

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たいちぃ