イバニエズの激流
解説
「明眸罪あり」に先んじて製作されたグレタ・ガルボ嬢渡米第一回主演映画で、原作も同じくビセンテ・ブラスコ・イバニエス氏作の小説で、ドロシー・ファーナム女史が脚色し「美人帝国」「夜の女」等と同じくモンタ・ベル氏が監督したものである。「サタンの嘆き」「猫の寝巻」等出演のリカルド・コルテス氏がガルボ嬢と共演し、ガートルード・オルムステッド嬢、アーサー・エドモンド・ケリユウ氏、マーサ・マトックス嬢、エドワード・コネリー氏、タリー・マーシャル氏等が助演している。
1926年製作/アメリカ
原題または英題:Ibanez' Torrent
ストーリー
スペインのとある小村に住む貧乏医者の娘レオノラは村の理髪師クピドに声楽を仕込まれた。ところが彼女達は家賃が払えないために村の素封家の後家ドナ・ベルナルダ・ブルールに家から逐い出されて了った。ブルール家の世嗣たるラファエルはレオノラに逢うや、二人は互に恋し合うべき運命にあった。しかしレオノラは父に伴われて歌劇女優たるべくパリへ赴かねばならなかった。そしてラファエルは彼女と再び逢うことを母に厳禁された。レオノラが歌劇女優として成功した後彼女は父に死別した。テノル歌手のサルヴァッティがレオノラの稽古をしてやり、彼女のマネジャーとなった。それは世の誤解の種たるに十分だった。のみならず彼女は露国貴族を始め色んな男達と宜しからぬ関係があると噂された。レオノラはスペインなる古郷の村を訪れた。その頃はラファエルは村会議員となり、村の乙女レメディオスと母の命令で婚約をしていた。ラファエルのレオノラに対する古い恋は蘇った。そして村に洪水が出た時ラファエルは彼女達二人を救った。ラファエルの愛はレオノラに傾いた。彼は結婚式の饗宴をも打棄て、彼女の許へ走った。しかしレオノラはラファエルの母の心を思いマドリッドへ去った。するとラファエルも後を追って来た。けれども彼の母の使者は彼をして無理にもレメディオスの許へ帰らしめずには措かなかった。それから八年が過ぎた。レオノラがマドリッドへ帰って来た時知恋のため焦衰したラファエルは彼女を訪れた。彼はメディオスと結婚し既に父親となっていたが、彼の初恋の焔はなお消えやらず燃え続けていたのだった。レオノラは自らも年老いたことを示すために化粧を落して見せた。そして無理にも陽気らしく装ってラファエルの恋の燃え残りを消して了った。幻滅を感じたラファエルは再びその家族の許へ帰った。レオノラは寂寥を極めた心を抱いて華やかな舞台に立たねばならなかった。そして心なき人々は浮気者よとレオノラにうしろ指をさした。
スタッフ・キャスト
- 監督
- モンタ・ベル
- 脚本
- ヴィセンテ・ブラスコ・イバネス
- 脚色
- ドロシー・ファーナム
- 撮影
- ウィリアム・H・ダニエルズ