「悲しみの冷たい雨」ストロベリーナイト しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
悲しみの冷たい雨
「土曜プレミアム」で鑑賞。
原作は既読、テレビシリーズは視聴済みです。
スペシャル、連ドラを経ての劇場版。
連ドラの最終回で映画化が発表され、歓喜に震えました。
順番通りに行けば「インビジブルレイン」の映像化となるのは必定でしたが、それをスクリーンでやる価値があるのかとなれば、ファンでありながら正直疑問しか無かったです…
確かに「インビジブルレイン」はシリーズのターニングポイントだし、それを劇場版として公開するのは特別感があって良いとは思いましたが、姫川以外の姫川班の面々は殆ど活躍しませんし、姫川と牧田勲の危うげな恋愛模様がメインのため、結構地味なストーリー展開なのに劇場版ならではのカタルシスは味わえるのかな、と云う危惧がありました。
結局映画館へは行かず、テレビで放映されるのを待つことにしました。「来年すぐにテレビでするやろ」ってやつ…
今回鑑賞し、その心配は的中しました。
これは映画なんだ、と云う意識で観たらものすごく退屈な作品でした。ですが、ちゃんと映画らしくなるように、テレビドラマでありがちな極端な説明を排して、観客の想像や解釈に任せようとする描写に努めているように思いました。
しかし、いかんせんストーリーに派手さが無いので、スクリーン映えしていたとは言い難いのではないかな、と…。テレビスペシャルでちょうどいいくらいな仕上がりでした。
姫川の心情を表現するために雨が効果的に使われていて、連ドラと違ったエモーショナルさがありました。全編に渡って、雨のシーンばかり。鬱陶しいほどの暗さが、原作の持つ雰囲気を巧みに捉えているように思いました。
晴れの日には撮影を中止するという徹底ぶりだったそうで、大通りを封鎖し、大量のタンク車を動員した大雨のシーンを撮影したりと、かなりこだわってつくられていることにとても好感が持てました。このスケール感は映画っぽい…
姫川と牧田の、許されざる恋…。そこに菊田も交えた三角関係は、原作には無い描写だったので、大人のドラマだなと感じると共に、とてもハードボイルドだなぁ、と…
その分刑事ドラマの面白さが損なわれていると云うことは無く、後半に姫川班が一丸となって事件と警察上層部の圧力に立ち向かう様は、とてつもなくカッコ良く興奮しました。それが引き起こした別離は言わずもがな…
姫川と牧田の関係が迎えた衝撃的なラストシーンは、実写ならではの感情の爆発があり、とても胸が痛みました。
姫川の上に、悲しみの冷たい雨が降る…
[余談]
本作のその後を描いたスペシャルドラマ(アフター・ザ・インビジブル・レイン)は放送されたものの、それ以降、続編は製作されていません(2018年12月現在)。
連ドラのDVD-BOXにはシーズン1と書いてあったので、結構期待していたのですが…。原作も溜まって来ているので、そろそろシーズン2、いかがでしょうか?
※修正(2022/05/09)