「社会派問題作品好きには良いのかも知れないが?」フランス、幸せのメソッド Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
社会派問題作品好きには良いのかも知れないが?
劇場公開作品ではないのだけれども、新作レンタルと言う事でレンタルして観たが、この作品は、セドリック・クラビッシュと言う人が監督で、私は以前「スパニッスアパートメント」しか彼の作品は観た事が無い為に、彼については余り知らないので、監督の他の作品との比較は出来ないのだが、ケン・ローチの様な社会派の作品を撮りたい監督らしいのだ。
フェリーニの「カビリアの夜」に影響を色濃く受けたと言う。
そんな彼の作品である本作は、私達が日々生活している社会の中で、様々な問題や、矛盾を抱えながら、生きている庶民の姿を描いて見せている。
日々の生活では、理不尽で報われずに、社会の底辺で、黙々と毎日汗まみれになって家族の生活を辛うじて維持している人々の声を、ほんの一握りの富裕層の人々との関わり逢いの中で起きた有る事件をきっかけに社会の矛盾と非道な人々の人間模様を焙り出すのだが、
私は、この「フランス、幸せのメソッド」と言う題名からイメージしてレンタルしたので、およそ幸せへのメソッドとは思えない、幸せからは程遠い物語だったので、観終わった後の後味の悪さが、丁度喉の奥に刺さって取り出せないチキンの骨が喉で痞えて、苦しいのに似て、心の中で引っかかって、重く圧し掛かり不快であった。監督自身は社会派コメディー映画の制作意図を持っていたと言う事だ。しかし、チャップリンの映画の様には笑えないのだ。映画の構成とか、カメラワークなどは、これと言って特別に面白く工夫されている様な新鮮味は感じられない作品であったのだが、ヨーロッパ映画ならではの、社会派一般作品とでも言うところだろうか?
しかし、この作品のラストは個人的には好きには成れない作品だった。
この物語の主人公のフランスは2人の娘を残して自殺未遂をする所から物語が始まるのだが、一命を取り留めた彼女は、娘達に激励され、娘達を故郷に残し、一人パリに出向き、家政婦としての職を得て、運良く富裕層の雇用主スティーブに気に入られ、仕事は順風満帆となるのだが、その彼こそが、自分達の以前働いていた会社を買収し、倒産に追い込んだ張本人だった事を知る。フランスは、初めはその気は無かったのだが、ちょっとした出来心から、スティーブの一人息子を思い余って誘拐してしまうのだ。
この様な、目に見える犯罪事件と、ネットのインサイダー取引による会社の買収などの、乗っ取り事件や倒産事件などは、中々事件の真相が明らかに成らない事から、事件として扱われる事が殆んど無いけrどの、しかし人々の生活を誰が壊したか分からない力で潰していってしまうので、何も社会的責任を問われる事も無く、本人も、自分の行いによって人々が死に追いやられている事実すら知る事が無いと言うこの、社会の理不尽な矛盾をユーモラスに描いていると言うが、ちっとも観ている私は、ユーモラスな笑いが全く出無い作品だ。しかもそればかりでは無く、この様な復讐劇は、単なる復讐で有り、正当化する余地を残してはいないのだ!
悪には悪でお返しをしていたなら、社会からの正義の種は全く消失してしまうのだ。映画でも、いや映画だからこそ、単なる復讐だけのリベンジは止めて欲しかった!