「合コン男子の意見と同じになっちゃうよ」永遠の0 ブライアンさんの映画レビュー(感想・評価)
合コン男子の意見と同じになっちゃうよ
原作未読。公開から4週経とうとしてるのに結構な客入りでしたね。僕が最年少でしたが。監督が「ALWAYS 3丁目の夕日」の山崎貴の時点で、ぜんっぜん期待してないわけなんですよ。この人はVFXがお得意なもんで、おそらくはCGを駆使したカッコいい零戦の空中戦シーンだけ撮りたいのではないかというゲスな思惑も働いていたんです。山崎貴は人間ドラマ描けないし。まぁぼちぼち観に行こうかねー。と思っていたが、これが面白かったのである。…前半は。
祖母・松乃の葬儀で悲しみにくれる祖父・賢一郎(夏八木勲)。葬儀に出席した健太郎(三浦春馬)は、実は賢一郎は血の繋がった祖父ではないことを姉・慶子(吹石一恵)から知らされる。本当の祖父は零戦の乗組員で、娘の顔を見る前に特攻をして死んだという。定職につかずふらふらしていた健太郎は姉に誘われ、血の繋がった本当の祖父・宮部久蔵(岡田准一)について調べることになった。元軍人を尋ねるものの、出てくる言葉は「あいつは海軍一の臆病者だ」「二言目には『死にたくない』と言う恥さらし」というものばかりだった。卓越した操縦技術を持つにもかかわらず、戦闘のときにはいつも離脱し、無傷で帰ってくるというのだ。実の祖父が臆病者呼ばわりされて意気消沈する健太郎は「これで最後」と決め、井崎(橋爪功)に会いに行く。しかし井崎は「あの人は生きるべき素晴らしい人だった」と言い、空母・赤城へ共に乗船していたときの出来事を語る…。
てか宮部さん赤城の乗組員だったんだ!んでんでんでんで!おいら的にはこの映画のクライマックスがもうきちゃったんだけど笑!ミッドウェー海戦の映像がすごい!零戦が活躍する空中戦と空母・赤城が爆撃される地獄絵図。沈没していく赤城はかなりの迫力で、もうテンション上がったね。最高でしたよ。
とにかく井崎が言う宮部という人物は「宮部は乱戦になるとすぐに上空へ退避し、戦闘を避けた」「必ず生きる努力をするよう言われた」とな。宮部は「国に残した妻と娘のために、自分が死ぬ訳にはいかない」と語る。じゃあ何故?何故妻と娘のために死ぬことを拒否し、生きることに執着した宮部が特攻をしたのか。その謎が、この物語のいわゆる「引っ張り」。まぁ山崎貴お得意の「なんでもかんでもセリフで説明する」演出が炸裂して、その謎は解明されるでしょうね。
井崎から全ての証言を聞いても謎は明らかにならなかったので、自宅や図書館で健太郎が戦争について調べていると、友達から合コンの誘いが。合コンで友達に「特攻なんて自爆テロと同じ」「国のために死ぬなんてただのヒロイズム」と言われ「それは違う!」と激昂する健太郎。しかし「なにマジになっちゃってんの。キモーイ」みたいな風に扱われ、激しく憤る。このシーンは胸が痛いね。自分だったら「キモーイ」って言っちゃうもん。もしかしたら、百田先生のイデオロギーはここにあるのかも。国のために死ぬことを選んだ人たちをキモいと言っちゃう風潮に憤りを感じているのだな。きっと。
失意の健太郎は右翼の大物・景浦(田中泯)に話を伺いに。愛国青年で国のために死ぬことが務めだと思っていた景浦は、上官である宮部に反発していたが、その操縦技術に強く打ちのめされる。景浦が宮部と出会って数ヶ月後、特攻作戦が始まろうとしていた。景浦は「特攻なんて無駄死にだ。九死に一生の作戦なら喜んでやるが、十死に零生ならやる意味はない」と感じ、特攻志願をしなかった。景浦は、当然のごとく宮部も特攻に志願はしないと思っていたが、ある日、特攻出撃名簿に宮部の名を見つける。自分の育てた部下が、次々に特攻で死んで行くのを見た宮部は憔悴しきっていた。そんな中での、特攻志願である。あの宮部が特攻を志願。よほどなにかあると感じた景浦は、殆どの特攻機が敵艦に体当たりする前に撃墜されていることもあり「絶対に宮部の特攻を成功させる。宮部が敵艦に体当たりするまで、おれは宮部機に1発も弾丸を当てさせない。宮部の決意のために命を賭けて援護する!」と意気込む。
なんとカッコいい男だろうか!味方が決死の作戦を遂行するために、命を賭けて援護する。味方が必死に戦ってるのに、自分だけいそいそと上空に退避してる誰かさんとは大違い…
おれが気に食わないのはそーいうとこなんだよね。宮部はさぁ、凄い操縦技術持ってるんでしょ?部下に「死ぬな」と教えてるんでしょ?なんで援護しないのよ。完璧な援護をして、少しでも戦死者を減らせば宮部の評価も変わってたでしょうに。
結局、景浦も宮部が特攻をした理由はわからないと言う。景浦に特攻出陣者名簿をもらった健太郎は、衝撃の事実を知る。なんと宮部は特攻の直前に、部下に機体を交換してもらったのだが、宮部が乗るはずだった零戦はエンジントラブルで海面に不時着し、その乗組員は生き延びたのだ。実の祖父が生きのびることができたかもしれないことに、強くショックを受ける健太郎だった。しかしさらに驚くべきことに、その宮部と零戦を交換し生きながらえた乗組員は、(義理の)祖父・賢一郎だったのだ。
賢一郎に話を聞くと、あれだけ戦闘機にうるさかった宮部が、エンジントラブルに気づかないはずがない。宮部が自分を死なせなかったのだという。その証拠に、宮部が乗る予定だった零戦には「もし生き残れたら、妻と娘を頼む」とのメモが。本土に残した妻と娘が露頭に迷わないように、自分が死んでも代わりに養える部下を生きさせたのではないか…。賢一郎から話を聞き、実に祖父について想う健太郎。街を歩いて歩道橋に来た時に、宮部に対する様々な証言が蘇る…。そして、宮部は憔悴していたときとは違い、晴れやかな顔で敵艦へ突撃するのだった。
タイトル「永遠の0」バーン
サザン「♫う~ま~れかわれた~なら~」
えぇっ?終わり?!結局、特攻へ行った理由分からずじまいだよ。「特攻は志願ではなく、命令だ」というのであれば、晴れやかな顔でなく、もっと苦しみながら特攻するべきだし、晴れやかな顔ならばそれなりに理由が必要だろう。いままで散々「自分が死んだら妻と娘が…」とか言ってたのになんで?なんで自分が生き延びようとしなかったの?だって、味方がやられてても自分は上空へ逃げて援護しなかった男だよ。命が大事なら、自分がエンジントラブルの機体に乗ればよかったじゃないか。いやあれか、特攻して死んでいった部下への贖罪か。…待て待て。それなら残された妻と娘はどうなる。だからそのために信頼できる部下をあてがったってか。ちょっとそれ自分勝手すぎるよ~。
そりゃあ戦友が戦死した仲間の家族の面倒を見ることもあるだろうよ。そこから愛が芽生えて結婚することもあるだろうよ。でもそんなことになる保証はどこにもないのよ。宮部くん。それなら自分が生き残る道を探す事のほうが大事じゃないかい。妻と娘のことを考えてないし、部下にその後の人生を押し付けてるじゃん。全然分からないよ!
いいかい山崎貴監督。あんたがお得意の「なんでもかんでも説明」演出はこういう時に使うんだよ!ちゃんと説明しろよ!答えが無いのに映画作るんじゃないよ!そりゃあね、最後の最後で解釈を任せる映画はたくさんあるけども、そのテクニックの使い方間違ってるよ。「なぜ特攻へ行ったか」が物語の肝じゃん。そこがあやふやなまま終わるってのはいかがなもんかねぇ。
この映画みたいな終わらせ方がしたいなら、軍の中で浮いてた男が、自分の戦いを貫こうとするも、堕ちていき無残に死んでいった「逆英雄譚」として物語を展開して、最終的に「戦争は悲惨」という結論に持っていけばいいんじゃないのかな。「アラビアのロレンス」みたいな感じで。よくよく考えたら、美談でもなんでもないしね。「夫婦の愛を生きることで貫こうとしたが、戦争という悲劇はそれを許さなかった」って話じゃん。なのに無理やり美談として形作ろうとする。それこそ合コン男子が言ってた「ヒロイズム」まみれのお話になっちゃうよ。それでもいいのかい。百田せんせ。