「南アの天才監督が描く本格派SF」エリジウム そふつさんの映画レビュー(感想・評価)
南アの天才監督が描く本格派SF
「第9地区」において既に天才の片鱗を見せていた南ア出身の監督、ニール・ブロムカンプであるが、当作品「エリジウム」において既にその天才路線は万難を排したものとなったと言って良いであろう。
環境汚染によって劣悪な環境に変貌した地球と超富裕層が住むスタンフォード・トーラス型スペースコロニーの対峙という究極のSF設定だけでも、既に星雲賞だかネヴュラ賞が取れてしまいそうな勢いである。
本作品のSF的良さは他にもある。シャルト・コプリー演じる傭兵クルーガーとマット・デイモン演じる主人公マックスの間で行われるサイボーグ・ニンジャ・アクションだ。地対宇宙ロケットランチャーやエグゾスケルトン、電磁シールド、電磁加速銃(レールガン)などフューチャーウエポン満載で行われる小汚いサイボーグ・オッサン共のガッチガチのドツキあいは、SFファンならその映像だけで満足できるに違いない。
他にも小汚いスラムにまるで路線バスのように現れるきったないスペースプレーンや宇宙コロニーのコンセプトデザインなどはあのブレードランナーでお馴染みのシド・ミードが行っている。SF映画ファンは必見であろう。
だが、この作品の魅力はそれだけに止まらない。物語上に流れる富裕層vs貧困層という究極の対立の構図は、今まさに存在する格差社会をを映し出している。
この物語にそういった社会問題の有益な提言は存在しない。だが、SFアクションを通して現代の社会的病理を指摘するというSFの持つ本来の意義を体言している点において、この作品は優秀ではないだろうか。
ジョディ・フォスター、アリシー・ブラガ、ウィリアム・フィクナー、ファラン・タヒールなど実力あるキャスト各々の好演も見所の一つだろう。
これだけの多要素を上映時間極めて綺麗に、しかもたったの109分に収めきったブロムカンプ監督の手腕たるやまさに見事の一言。
この作品こそ一級のエンターテインメントの名にふさわしいと言えよう。