劇場公開日 2013年9月20日

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「俄然、現代性を持ちだした今こそ観るべき映画」エリジウム あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5俄然、現代性を持ちだした今こそ観るべき映画

2019年7月31日
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鑑賞方法:DVD/BD

豊かな国アメリカを目指す不法移民達の群れ、それを排除しようとする米国は長大な壁を本当に建設しているところだ
米国内の不法移民を一斉検挙し強制送還したニュースについ先日目にした

SF映画の体裁でありながら、語ろうとしているテーマは今日における不法移民の問題であるのは一目みれば明らかだ

主人公の幼なじみのフレイはヒスパニック系であり、舞台はロサンゼルスだ
主人公が頼るスパイダーの一味はロサンゼルス周辺に多く住むチカーノと呼ばれるヒスパニック系不法移民の若者達を思わせる刺青や出で立ちだ
そして敵側の下請けのクルーガーは東欧風の顔立ちと言葉の訛りなのだ

本作では、不法移民とヒューマニズムの着地点を模索している
SF映画がやるべき仕事を真っ正面から取り組んでいるのだ
これこそ正統的な本当のSF映画と言えよう

本作ではヒューマニズムの勝利でエリジウムは開放される
人間は全て平等なのだ
だかエリジウムはそれで永遠に維持されるのだろうか

ローマ帝国の崩壊を見る思いだ
帝国は崩壊し長い暗黒の中世が続くのだ
果たしてこの結末が本当のハッピーエンドだったのだろうか?

不法移民問題は米国だけではない、欧州もまた移民に音を上げはじめている
世界中で起きていることなのだ
日本はどうか?
同じだ、いや日本こそエリジウムだろう

では私達エリジウムの住人たる日本人は、全ての貧しい外国の人間に無制限に日本を提供することができるのか?
なに隔てなく日本人と同一に無制限に受け入れることができるのか?
問われているのは私達だ

ではジョディ・フォスター演ずる長官が正しいのだろうか?

何故地球が荒廃してしまったのか?
何故地球をより良い環境に出来ないままに放置されているのだろうか?

様々な思いが去来し、そして重い
正解はない

SFのガジェットや描写も、所々怪しいところは有るものの、多くはSFファンの目に十分耐える素晴らしいものだ

脚本が雑であることが残念でならない
だが甘いヒューマニズムの勝利に流れてしまうのは、監督の逃げではないだろう
このラストで本当に良いのか?正しいのか?
そこを考えてみてくれというメッセージであったと思いたい

あき240