「娯楽性と芸術性の両輪は黒澤の領域に」ジャンゴ 繋がれざる者 うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
娯楽性と芸術性の両輪は黒澤の領域に
「イングロリアス・バスターズ」で、歴史上の出来事よりも作劇の面白さを優先し、見事に形にしたタランティーノが、またやってくれた。
今度は、アメリカ南部の黒歴史に、自由な黒人が存在したらというユニークな発想で、今まで見たことのないストーリーを作り上げてしまった。
さすがタランティーノ。
日本史に置き換えるなら、「沖田総司が実は女だった?」とか、「青い目のサムライがいたら?」みたいなことなのだろうか。
この映画、奇跡の出来栄えである。
あまりに完璧すぎて、ちょっとしたアラが見える部分も「あえてそうしたに違いない」と思えるくらいに出来過ぎだ。
特に、レオナルド・ディカプリオが、興奮してテーブルを叩き、グラスが割れて手を負傷したシーンの緊張感は出色の出来。本当に手を切ってしまったように見える。
クリストフ・ヴァルツの演技も実に素晴らしい。
南北戦争直前のドイツ人があれほどの人道主義を貫けるのかどうかわからないが、彼の存在無しに、この映画に説得力は生まれない。優れた知性と、強い信念、ユーモアと揺らぎない決断力。近年稀に見る完璧なキャラクターだ。
サミュエル・L.ジャクソンのクソ野郎ぶりも突き抜けていて非の打ち所がない。「レオン」のゲイリー・オールドマンに匹敵する悪党キャラと言えるかも。
あえて言うなら人種にかかわらず、悪いヤツは悪いということだ。
観た人のほとんどが嫌いになる小悪党を見事に演じている。
相変わらず、自作に出演したがるタランティーノの遊び心も健在。
音楽も素晴らしい。
お腹いっぱい。楽しめました。
2014.1.17