さらば復讐の狼たちよ : インタビュー
中国映画の革命児チアン・ウェン監督が語る
1920年代、辛亥革命直後の中国を舞台に、暴力と金で都市を支配する権力者に立ち向かうギャングの姿を描く「さらば復讐の狼たちよ」が7月6日公開する。中国の革命史をなぞり、社会を鋭く風刺していることが話題を呼び、国内での累計興行収入約80億円を突破、歴代興収の記録を塗り替えた。中国映画の革命児と言えるチアン・ウェン監督が作品について語った。
「県知事になれば金もうけできる」と聞きつけたギャングのチャンは、知事になりすまし街へ赴任。しかし、向かった先はいたるところで暴力がはびこり、人身売買と麻薬の取引で荒稼ぎする独裁者ホアンに牛耳られていた。ホアンによって義理の息子を自害に追い込まれたチャンは、ホアンを倒すため6人の仲間とともに決起。7人は民衆を巻き込み、歴史を動かす戦いを引き起こす。
国際的に活躍するチョウ・ユンファがホアン、チアン監督がチャンに扮し、グォ・ヨウ、カリーナ・ラウ、チェン・クン、フー・ジュン、チョウ・ユンらが共演。音楽は久石譲が担当した。
俳優としても名高いチアン監督、本作では監督と出演を兼ねた。「今では自分で書き、自分で監督し、自分で演じることに慣れちゃっているんだ。もちろん、条件さえ合えば、別の人の映画に出るのもやぶさかではない。去年は曹操も演じたしね」と話し、共演したチョウ・ユンファ、グォ・ヨウを「素晴らしかったよ。プロの役者ほど仕事に対して責任感があるから、一緒にやりやすいものなんだ」と絶賛する。
「20年代は中国で最も外国と中国のものが入り混じった時」だといい、衣装や小道具など、時代の設定にこだわった。和太鼓も登場するが、その理由について日本人には興味深い話を披露する。
「20年代の中国は中洋折衷が多かったと言ったが、洋には西洋も東洋も入る。中国は東洋、つまり、日本の大きな影響を受け、西洋の物の多くも日本を経て伝わってきたんだ。その点を日本人は意識しているかどうか知らないが、中国は日本のものをたくさん取り入れてきたのさ。だから、日本のものが社会の中でも、ごく普通にあったんだ。日本は漢字を使うから、日本から単語を輸入したって西洋からの輸入ほど特別な感じもしなかった。実は中国の観客の多くはあれが日本の太鼓だとは気づかなかった。若い人ほどそうだった。日本のものとは意識しないんだ。これは20年代もそうだったのじゃないかと思うよ」。
無法者たちが主人公のプロットは黒澤明監督の「七人の侍」に似ている、との指摘もあるが、特別に意識をしていたのだろうか。「チャンと弟分とで合わせて7人だから、それでそう思ったのでは? 実際は『七人の侍』とはあまり関係はないよ。『七人の侍』は盗賊と闘う話だろう? チャンたちは自分たちが盗賊なんだぜ」とあくまでオリジナルの設定であると強調する。
最後に、中国で映画を撮ることの難しさや利点について問うと、「利点は人が多いことだ。映画館も多い。しかも、ますます増えている。それ以外はすべてマイナス要因だ」と迷いもなく答えた。