ディクテーター 身元不明でニューヨークのレビュー・感想・評価
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独裁者の良識。
ディクテーターといったら、私にはあの名作(チャップリンの)が
一番に浮かぶんだけど、これ作ったのがあのヒトだから^^;ね、
絶対そのまんまの下品で下劣で高慢ちきな独裁者に違いない。
…本当にそうだった。というかここまで期待通りというのも嬉しい。
あのレッドカーペットで○○の遺灰と称してホットケーキミックスを
撒き散らかして(爆)、警備員に連れていかれたS・B・コーエン。
いつか誰かに殺されるんじゃないかと思うほど思い切ったことをやる
一見おバカな俳優に見えるけど、かなり頭の良さがうかがえる御人。
良識人がそっぽを向く作品を撮っては失笑を買い続けてる人だけど、
今回はしっかりと劇場映画という形で更に多くの失笑を誘ってくれた。
ちなみに私が観た時、場内はしっかり満席でしたからね~。
どんだけ良識人がいるんだよ!って話です。もう好き好きでしょ。
ラストの演説と、ニューヨークに行く。というあたりで、
先の名作と、星の王子~のミックスだな。とすぐに分かるんだけど、
あとは野となれ山となれ的に彼はガンガン露骨な映像を垂れ流し。
あっちでアラジーン、こっちでもアラジーン、何か言ったらすぐ処刑、
と笑うに笑えない(別に笑える場面でもないけど)、あらゆる決断が
いちいち大仰で面白い。だって本当にやりそうなんだもの(誰かが?)
いかにも本人と思わせる出で立ちで、こんなことやっていいのか!?
という豪快さをテキメンに映像に顕すあたり、チャップリンと似ている。
(そう言ったら失礼かもしれないが)皆がそう思っていて言えないこと、
出来ないこと、流せないこと、を代弁できるのが創作された映像作品。
まさかここまで。をやりすぎだと思うかどうか。
というより、嫌いな人はまず最初から観てないと思うけどね^^;
前二作のバカみたいなドキュメンタリー映画(これはほんとにおバカ)
と違い、ずいぶんとメッセージを秘めたバカ映画になっていることが、
一応成長とみていいのか(ないな、それは)、単なる思いつきなのかは
分からないけど、私は存分に楽しむことができた。
民主主義とは一体何なのか。誰のための民主主義なのか。独裁者は
本当に社会悪か?…とまで考えさせられる内容。
いちいち言及せずにそれを伝えられるのが、大笑いさせといて感動の
涙を流させる一級作品の真骨頂。過去の名作には必ずあったもんね。
(今作はそうではありませんが)
…だけどその人間の、根っこの部分はいつまでたっても変わらない(爆)
最後の最後でまたも大笑いさせるアラジーンのリアルな素振りは、
人種偏見までぞんざいに扱う(これぞ)愛国心の象徴だと私には映った。
(ま~豪華なキャスト陣にあの扱いでしょ^^;もうアラジーンしちゃったわ)
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