「食卓は家族をツナグ。」ツナグ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
食卓は家族をツナグ。
原作は、第32回吉川英治文学新人賞受賞作なのだそうだ。
最近では「鍵のない夢を見る」で直木賞をとり、
山本周五郎賞を受賞した「本日は大安なり」はドラマ化された。
何やらすごい作家さんの原作じゃないの~。と期待したものの、
鑑賞後の感想は意外と普通で、小ざっぱりとした物語だった。
(映像化したら印象が変わった、とはよく聞く話だけど)
死者と生者を結んだり、どこぞで出逢ったりという話は多い。
もともとそんなことできやしない、有りはしない、の発想から
できたらいいな…逢えたらいいな…のファンタジーでもある。
私にも、叶うなら逢ってみたい人はいたりするが、
しかし今回の話でもほとんどがそうだったように、
もし逢えたとしても、互いの口から出るのはきっと
「ごめんなさい」「ありがとう」「これからもずっと見守っている」
なんだろうと思う。
それが分かっているから、今作の歩美の「逢わずに生きたい」と
いう気持ちがよく分かる。
その頃の後悔や反省がどれだけ自分を苦しめ、苛んだとしても
大切なのは今こうして自分が生きていることに他ならず。
死者への供養は遺された者がどう生きるかに託されているのだ。
今作も何らかの事情で、どうしても死者に逢いたいと願う人々が
ツナグ見習いの歩美のもとへ申し出てくる。
単にその仲介をするのがツナグなのだが、人生でそれは一度きり、
つまりこの先もっと大きな不幸が起こって、もっと逢いたい人が
現れても、過去に逢ってしまえばもう二度と逢うことはできない。
けっこう無情な選択肢(だって高校生とかさ)という部分でもある。
何が普通に感じられたかというと、ここで紹介される三組のうち
二組はほぼ見たことがあるような設定に終始していることなのだ。
感動がないワケではないが、それはそうなるよね(の確認)といった
かなり当たり前の展開を見せるので、特に感動に繋がらなかった。
それより一風ホラーかと思わせる女子高生のやりとりが、今作では
一番気味悪く胸にのしかかる一編となった気がする。
親友、親友というが、あの頃の親友などもう顔も覚えてなかったり、
あるいは懐かしさの賜物(逢ってないから)のようなところがあるが、
今作のように、もし自分の嫉妬(未必の故意)からくる殺意のような
そんな行為が事故を起こし、相手が亡くなってしまったとしたら…?
主演の二人の(ややオーバーな)演技もさることながら、
最後まで怖いわ気味悪いわ、ナイフの意味は何?まで心に残った。
ワケも分からず、呆然としていた歩美の姿が印象に残る…。
このまま終わらせちゃうの?というところでラストは巧く纏めていたが。
ツナグである祖母アイ子と歩美のやりとりがとてもいい。
毎日食卓を囲むシーンで、さり気なく登場する料理を囲む二人の姿。
多少のギャグやアドリブが多く見受けられるものの、普段の生活を
きちんと見せることで、不幸ではない温かみのある生活感が感じられる。
他人の世往来を見届ける使者たちが、不満タラタラの醜悪な生活なんて
(あるわけないが)やっぱり見たくはなかったもので^^;
全体的にサラッとしていて観やすい分、ここは長いんじゃないか?と
思える描写も多く、バランス良く場面をツナグ編集が必要かもしれない。
(登場人物の名前が変わってるなぁ。日向キラリって^^;なんか凄い名前)