劇場公開日 2012年10月6日

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「再会できるのは一度きり」ツナグ マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0再会できるのは一度きり

2012年10月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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死者と会うことができるのは一生で一度きり。誰と会うかはよく考えなければならない。チャンスは一度きりだ。
そして筋書きのポイントは、死者もまた蘇ることができるのが一度きりという点だ。死者ももう一度誰と会うのか選択しなければならない。
生きた者と死んだ者を仲介するのが“ツナグ”の使命だ。
この死者側にも選択の権利を持たせた設定が随所で生きる物語になっている。

映画の構成としては、いくつかのエピソードをオムニバス風にジョイントさせており、「ALWAYS 三丁目の夕日」(05)に似ている。音楽も同作と同じ佐藤直紀が担当する。

大きく3つのエピソードから成るが、八千草薫と遠藤憲一は〈親子愛〉がテーマ。八千草薫の演技が素晴らしい。とくに目の動きが自然で、息子を思う気持ちがよく出ている。さしもの樹木希林も、この作品では八千草薫の巧さに脱帽するしかないだろう。
2つ目は橋本愛と大野いと、若手女優二人の競演による〈友情〉をテーマにしたエピソードだ。映画の中間部にあたりダレるところだが、生きた者も死んだ者も一度きりのチャンスという設定がいちばん活かされた話で、若い二人がゆれる心をよく表現してうまく後半に繋いだ。とくに親友への恨みと親愛の情が顔に出た大野いとがよかった。
最後は佐藤隆太と桐谷美鈴による〈恋人〉。相手を信じ続けた実直な男と、信じられることで愛を知った家出娘の話。話の落とし所がやや落ち着かないが、主役のツナグこと高校生の歩美が人の人生に関与する覚悟と心の成長を見せるエピソードでもあり、なんとかうまく乗り切ったという感じだ。

松坂桃李と樹木希林が、ツナグとしての継承者とその使命を託す時を迎える老いた先代を、孫と祖母の情愛を絡めて好演する。
今年観た邦画でいちばんのお薦め。

マスター@だんだん