「今を懸命に生きることの大切さ」ツナグ みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
今を懸命に生きることの大切さ
本作は、従来にない仄々とした切ないSFである。亡くなった人と生きている人を再会させる不思議な力を持った、あの世とこの世の橋渡し役・ツナグの物語である。母親と息子、親友同士、そして恋人同士。三組の再会が描かれる。再会は、一度だけ、一人だけ。会えるのは月夜の一晩だけ。三組夫々に夫々の人生があり、再会する理由がある。そのどれもが切なく遣る瀬無い。
ツナグ役の樹木希林の存在感が際立っている。物静か、穏やか、自然体でありながら、慈悲深さを秘めた演技で、現実離れしそうな役どころを巧みな演技で落ち着かせている。そんなツナグの孫役の松坂桃李が若々しく、瑞々しく、真っ直ぐな青年を好演。樹木希林との息もピッタリ。
鑑賞後、感じたのは、生への強い想いである。
死期を知り遺言を残してこの世を去る者もいるが、大多数は、本作のように、伝えたいことを残したまま逝ってしまう。残された者も同様。何故、あの時、しっかりと話をしなかったのか、自分の想いを伝えなかったのか。後悔の涙が溢れる。人の死に涙するのは、悲しいというよりも、そんな感情である。
だからこそ、今を大切に生きたい。狂おしい程に熱く生きたい。そして、後で良いやと先送りせず、今、この時の想いを素直に言葉に乗せて伝えたい。素直に、ありのままを伝えたい。一瞬先に何が待っているかわからない。死は突然に訪れるから。
“今を悔いなく一生懸命に生きる”というメッセージが切々と伝わってくる作品である。
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