劇場公開日 2013年9月28日

  • 予告編を見る

「淡々とした描写の中でも濃密で隙の無い演出に…」そして父になる KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5淡々とした描写の中でも濃密で隙の無い演出に…

2024年4月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

以前、今回同様、TV放映で観た映画だが、
特に印象の強く残っていなかった作品で、
ディテールも忘却の彼方だった。
しかし、大筋の記憶と題名からしても
概ねの内容は想像出来ていたにも関わらず、
是枝監督作品であることや
前の鑑賞から年数が経っていたこともあり、
違った印象を期待して再鑑賞した。

映画には、観る度に新しい気付きがあり
評価が高まるものと、
逆に前よりも心躍らなくなる作品があるが、
幸いにも
この映画は前者に該当する作品となった。

主人公はその成功体験から
職場でも、家庭でも、
何かと上から目線的な人物で、
それなのに、上司からの“子供を二人とも”との
アドバイスを得ては
相手の家族にそのまま語ったり、
父親に“血縁こそが”と言われて
子供の交換を決断したりと、
主体性が欠如した人物像だ。

しかし、そんな彼が次第に
人間的に成長を遂げていくというのが、
この作品の核なのだろうが、
今回の鑑賞では、是枝監督が
その点の感情推移を非常に上手く
描き切っていることが確認出来、
中年男としてのバージョンではあるが、
一つのビルディングスロマン的作品
として面白く観ることが出来た。

カンヌ映画祭で高い評価を受け、
国際的には評価された作品だが、
キネマ旬報ベストテンでは、
「ペコロスの母に会いに行く」や「舟を編む」
等が上位に選出された年に、
第6位との選出だった。
しかし、今回の鑑賞で、私としては
より高い評価だったらと思う作品となり、
淡々とした描写の中でも
濃密で隙の無い演出の出来る監督として、
是枝監督の作家力を確認出来た気がした。

是枝監督の各作品については、
改めて鑑賞する必要があるように思える。

KENZO一級建築士事務所