みなさん、さようなら : インタビュー
団地映画で初共演 濱田岳と倉科カナ&波瑠が語る撮影秘話
濱田岳が中村義洋監督と5度目のタッグを組んだ最新作は、第1回パピルス新人賞の久保寺健彦氏の同名小説が原作、団地から一歩も出ずに生きると決めた主人公・悟の成長を描いた異色の青春映画だ。濱田は、倉科カナと波瑠という美女ふたりを相手に初のラブシーンも披露。旬の若手俳優が顔をそろえた本作、共演時の互いの印象や撮影秘話を3人に聞いた。(取材・文/編集部 写真/本城典子)
濱田は小学校卒業時の12歳から30歳までの悟を、波瑠は悟の隣人で初恋の相手、倉科は悟の初めての恋人を演じる。純粋な心を持ち、女性たちとの出会いと別れを通して成長していく悟を自然体で演じきった濱田は、「役得ですよね(笑)。“ラブシーン”って言ってしまうといやらしいシーンに思いがちですが、つながったものを見て、音楽が入った時に、甘酸っぱく、すごくさわやかな感じに仕上がっていたので、中村監督はさすがだなと思いました。僕は緊張で頭が真っ白な状態だったので、どんと構えた女優さんふたりに何とか助けてもらいました(笑)」と照れながら撮影を振り返る。
倉科、波瑠ともに、本作が濱田との初共演作となった。「濱田さんとお芝居するのはすごく楽しくて、私が少し芝居を変えると濱田さんが違うものを返してきてくださって、また違うものになっていくんです。リハーサルをやっていても楽しかったし、現場にいてもお芝居の楽しさを実感させてくださる俳優さん」(倉科)、「とても優しかったです。不思議な魅力があって、もちろん大人なんですけど、子どもっぽくも見えたり、そういう二つの面を持ったところが素敵だと思いました」(波瑠)と、それぞれが濱田の魅力を語る。
「濱田さんが波瑠ちゃんとベランダで話してるシーンが好きなんです。友達の家が隣にあるっていうのが団地だなって感じ。そんな当時最先端だった団地がどんどんすたれていく切なさと、悟の成長がリンクしていく素敵なお話」と倉科が話すように、昭和の置き土産とも言える“団地”が舞台というユニークな設定に注目だ。都会育ちの濱田は、「六本木ヒルズができる前に、団地のような大きい社宅があったんです。それがなくなったのは地元っ子にとってショッキングな出来事で、団地もいつかなくなっていくものという印象がありました。だから、団地の中で生きて、何でもできるという設定に驚きました」と語る。
波瑠は、「悟が見ている世界と周りの人が見ている悟の姿がすごく違っていてそれが面白くて……でもなんか悲しくて、痛々しい感じもあって。それが団地という世界で起こっていることだから、ノスタルジックな良さがあるんです」と、時代の流れと共に変わっていく団地の住人たちと、変化を拒む悟の独特の生き方に心を動かされたという。
1981年から96年までを描く本作、当時の流行を知らなかった3人が着こなした登場人物のファッションにも注目だ。「遠くの方からふざけているようなすごい格好した人が歩いてきて、一体誰なんだろうと思いました(笑)」と濱田を驚かせたのは倉科の衣装。「登場のシーンが、ソバージュにピンクハウスだったんです……。あれは恥ずかしかったです」と明かす。波瑠もセーラー服やボディコンワンピースなど、年齢に応じた様々な姿を披露し「シーンごとに髪形や服装で変われるのが楽しかった」と振り返った。
濱田と中村監督とのタッグは今回5度目となり、もはや二人は盟友と呼んでも過言ではない間柄になった。「回数を重ねるごとにどんどん仲良くなっていくし、どんどん距離も縮まってくるんですけれど、それとは別にどんどん厳しくなっていく。気心が知れているだけに、ごまかしがきかないので演出的には厳しくなる。すごく仲がいいけど、僕にとっては一番厳しい監督だと思います」と感慨深げに語った。
3人のほか永山絢斗、田中圭ら注目の若手俳優陣と、ベンガル、大塚寧々というベテラン個性派が共演。団地で繰り広げられる、一人の青年の人生模様を昭和という時代の懐かしさとともにスクリーンで味わってほしい。