少年Hのレビュー・感想・評価
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国民に対する国の責任
筆舌に尽くしがたい苦難に陥れ、価値観の混同を強いられた国民に対して、国は国民を見捨てたという事実を、少年Hの行動を通して目の当たりにしました。
終戦の時は私は1歳で、戦争の記憶はありませんが、親や兄弟姉妹から悲惨な話を聞かされ、防空壕はあちこに残っていたし、傷痍軍人の姿もたくさん見ました。
戦争は間接体験していると思っていたのですが、主人公の家族が空襲に逃げ惑う姿、そして戦後の混乱の映像を通して、リアルに戦争の悲惨さを再確認しました。
国債は紙切れ同様になったことは聞かされていましたが、筆舌に尽くし難い無責任な、恥ずべき行動を国が取ったのだという事実を見つめさせられました。見終わった後に、国に対する不信感と憤りを強く覚えました。
日本は見事に戦後の復興を遂げましたが、それは国民一人一人の努力と知恵があったからこそで、政治主導で復興したわけではないことをこの映画から学んだ気がします。
悲愴感を感じさせない戦時下映画。
あと数十年ずれてたらこんな時代に生きなきゃいけなかったんだな…自分はどうころんでただろうな〜、と考えちゃいました。
勝算もないのに勝つと信じて戦争にかりだされ、何が正しいかもわからずに世間の流れ通りに自分も生きただろうなって思う。
けど、それはそれでどうにもならないわけで、だからと言ってこの主人公のように疑問を持ちながらもどうにもならなかった人々もいたわけで…結局戦争ってだれが悪いのか…考えてしまう作品でした。
‘父ちゃんが正しかった’ってセリフがあるけど、それでもどうにもならなかったんだよね。
こんな状況にもめげず、しっかり未来にむかって歩き出す家族。戦時下の作品だけど希望持てる映画でした。
後味さわやか・・・・。
重過ぎず、軽過ぎず、最後まで、丁度良い感じで観賞した映画でした。
でも、背後には、ちゃんとした、メッセージ力を持ち、
「いいんだ!自分のままでいいんだ。
しっかり、前を向いて歩いて行こう・・・。」
と、爽やかな後味で、さりげない力を頂けました。
とーちゃんの、水谷さんのこの映画に対する思い入れがしっかり、姿顔で演じられており、感動しました。
妹尾家はまだ幸せ
戦争へまっしぐらの暗雲立ちこめるなか、4人家族が体験する事柄を、とくに長男・肇の目を通して描かれる。
夫婦と男女一人ずつの子供の4人家族。今ならごく普通の家族だが、当時はかなり厳しい目に晒されたに違いない。
西洋文化への傾倒は反国精神の顕れと見られた時代に、仕事が洋服の仕立屋で顧客の多くが外国人、しかも家族でキリスト教会に通い、とくに妻・敏子は信仰が強い。この辺りは作品でも取り上げられるが、夫の盛夫が身体的な問題で徴兵を免れている点は多く語られていない。
これが本当の話なら、主を兵隊に取られない家族がいい気なもんだと陰口を叩かれたに違いない。
そうしてみると、戦争のなか生き抜いた家族、とくに正義感が強い少年・肇と可愛らしい妹・好子には好感が持てるものの、やけに先見の目がありワケ知り顔の父親像は違和感があり、全体が都合のいい作り話に見えてくる。
男手を取られず、戦時中も家族が揃っていた(一時、好子が疎開するが)妹尾家は、他人から見たら幸せだ。
私が子供の頃、親から聞いた話は当然のごとく父と母では内容が違う。父は日本を遥か遠く離れた戦地で、母は父親が軍人で残された母親とともに幼い妹や弟たちの面倒を見ながら戦争を乗り切った。周りの大人から聞いた話と比べても、この作品の内容はすごくぬるく感じる。
戦時中の日本人の殆どが、戦況の事実を知らされず、負けないと信じて一点だけを見て生きてきたのが、終戦を迎えた途端、憑き物が消えたように人々が生き方を変えていくラストは興味深い。
「風立ちぬ」では喫煙シーンの多さが問題になっているようだが、本作のように喫煙シーンがないのも不自然だ。昭和40年代ごろまでは、大人の男はタバコを吸うものであり、誰も体に悪いものだなんて思っていなかった。
考えさせられる戦争の悲惨さ
つい先日、終戦記念日を迎えました。
今年は中々終戦ドラマをやらないな…と、思っていたら、風立ちぬや此方の作品、これから上映予定の永遠のゼロ等、映画での題材が多いですね。
終戦の日のニュースのインタビューでは、若者が皆口を揃えて、今日が終戦記念日とは知らないと言っていたのが、記憶に新しいです。
そういう若者たちにも、是非とも観て頂きたい作品です。
たった6,70年前の日本。
何百年も前のことではないんです。
その日本は、こんなに閉息的で何が正しく、何が間違っているのか、分からない程の軍事洗脳で、僅か幼い中学生でもあんな訓練をしていたなんて…
中学生くらいの男の子が、あんなに悩み苦しみ、親であっても終戦直後は、いったい何のための戦争だったか分からない…
今の時代では全く想像できませんが、
このような時代がほんの数十年前に実際にあったとは、何とも言えない気持ちになりました。
私の祖父母が来年80。
終戦の頃は、丁度、主人公Hより弱冠年下の小学校高学年だったのでしょうか。
祖父は、満州開拓団へ、祖母は爆弾工場の近くに住んでいたため、空爆や空襲警報が怖かったと、戦時中や戦後の話はよく聞いていました。
祖父母たちがまだ子供だったころ、戦争とは、本当にあった現実なんだな…、こういう時代に祖父母は育ったんだ、と、想いを馳せて観ていました。
劇中の空爆のシーンは、とてもリアルでちょっと怖かったです。
水谷豊さん演じる父ちゃんの、戦争前と戦後のセリフがとても胸に響きました。
伏線で一番ジーンとくるシーンです。
相棒とは、また全然違ったお父さん役、とてもいい味出しています。
個人的には、奥さんの蘭ちゃんとのセリフの絡みやシーンをもっと見たかったような気もしますが、お二人とも良かったです。
少し前に、ジブリの風立ちぬを鑑賞しました。
風立ちぬは、アニメですし、戦闘シーンや惨い場面、戦争の黒い部分は余り描かれてはいなかったので、此方の作品と二作品観て、更に深く考えさせられた気がします。
平和な現代の日々に感謝すると共に、
このような時代があったことは決して忘れてはならない、決し繰り返してはならない、そう強く感じました。
少年Hの家族は素晴らしいです!
水谷豊と伊藤蘭さんの夫婦が、まさにピッタリハマり役でした!神戸の外国人相手の紳士服仕立て屋家業やキリスト教信者であることからも憲兵に疑われたシーン。少年たちへの戦車見立てての肉弾戦の軍事訓練やら町内会での消火訓練も、あの雨のように降り注ぐ焼夷弾による火事には、全く役に立たないですね(^_^;)
戦中の怖い軍事教官が終戦後の豹変に少年Hは怒りを感じたシーン!戦争の虚しさや愚かさを映画を通じて体験出来たのは良かったかな~
感動
あたり映画です。
歴史や戦争に関して知識があるわけでもありませんが、映画の内容は知識がなくてもわかりやすく、映画の世界にあっという間に引き込まれるような感じがしてすごくよかったです。
特に少年H役のひとの演技が共感できました。
当時の人たちの苦悩やそれでも生きていかなきゃいけないという生命力を感じました。
戦争を生きた家族の物語
何年か前に読んだ妹尾さんの作品はとても面白かった。戦争の中で疑問を感じながら生きる賢い少年、父親と母親の描かれ方も原作通りの気がする。父親が神戸の紳士服屋を経営している事でリベラルな考え方出来たし、母親はクリスチャン。その子のHが戦争に疑問を抱くのは必然。自分の生き方をしたいが父親に我慢も大切とか、人を思いやる気持ちが大切とか諭される。3月10日の東京大空襲は義母から聞いていたが、乳飲み子の夫をかかえ、電話ボックスで授乳したそうで、火が燃え盛る様子を見て大変な時代を生きたと理解できた。水谷さん夫婦は適役ですし、Hを演じた少年は利発な男の子だと思い、これも適役だと思いました。とても良い作品です。私の地域では帝国石油会社が有ったせいか今日は土崎空襲の日だと、亡くなった義父母から聞いています。アメリカが敗戦をうながす為にやったと思いますが何人も亡くなって悲惨なものだったそうです。悲しいだけでなく笑える所もあり、その時代を一生懸命生きた人たちの物語です。
押しつけないのが いい
あの時代に戦争なんて…と言うものなら非国民とされ、子供でも容赦なかったことでしょう。 父親としてただ押さえつけて従わせるのではなく、諭すように今の状況を伝え、信念は持ち続けることを教えた 強く優しい水谷さん演じる父親に感動しました
戦争から得られるものなんて何もない。戦争はしてはいけないものだと、みんなに思ってほしいです。
戦中を描いているけれど、これは1個人の親子の家庭劇なのだ
妹尾河童の大ベストセラーの映画化と言う本作品だが、私は原作本を未読な為に、妹尾河童さんの自伝的小説だと言っても、この映画の何処までが、原作に忠実に描かれているのか、或いは、何処からが、映画独自のフィクションなのか、皆目見当が付かない作品である。
しかし、何だか真実味の無い、全く嘘の作り話の戦争当時の話と否定してしまうよりは、むしろ実話とは思えない程に、戦前の日本には、珍しく進歩的な考え方をしていた父親に育てられた少年Hのヒューマン家庭ドラマと言う事だろう思う。
これは、完全な1家庭で起きたストーリーの映画化作品であり、ファンタジー映画の類いであって、日本の、戦争を挟む、当時の真実を伝えるような、戦争映画では決して無いと思うのだ。
そして何よりも、作家が自分自身の幼少期を描いているのは確かなのだから、嘘の様でも、この映画で描かれているエピソードの数々は、実際にあった本当の話なのだろう。
素直に、当時には珍しく進歩的な、リベラルな思想教育をしていた親子の物語である。
この様な考え方をする家庭が生れた背景には、これはきっと戦前には珍しい、洋装であるスーツの仕立屋と言う特殊な職業を生業としていた、父盛夫の人生経験から生れて来た考え方なのだろう。
そして、それは神戸と言う港街ならではの、外国人を相手に商売をしている父、盛夫の無意識の内に、様々な顧客の考え方の影響を受けて人間的に育って行った盛夫の物語そのものでもある。彼は自然のうちに、コスモポリタンで自由で偏見の無い、総ての違いを受け入れる事の出来る、懐の大きい柔軟な人格者の父になっていったわけだ。
ここに、父と息子、そして母と子供、兄妹の理想の家庭の姿が描かれている作品だと言う事も出来ると思った。
確かに、当時の特攻警察にしては、甘い描写だと思うし、戦前では、あんな家庭は日本人の社会では村八分になってしまう家庭だった筈だ。
そんな、信じ難いエピソードの連続でも有る。だが、そんな戦前の希有な家庭の中に、社会の在り方に関係なく、自分の生き様は、自分で選んで行く事の大切さが、胸を打つ作品だった。
水谷豊と、伊藤蘭実際の夫婦でありながら、他人の夫婦を演じると言う事はどんな感じなのだろうか?何だか、返って俳優として演じ難いのではないかな?とも思ったが、このお二人がとても素晴らしかった。
そして、H少年を演じた吉岡竜輝の熱演も、可愛いのだ。昔に比べて、日本の子役も随分と最近では演技派になってきたものだと感心してしまう。それは妹を演じた花田優里音にも当てはまる。でも、一人の子役で、15歳まで演じさせるのには無理が有ると思う。良い作品だけに残念だったな~ 嫌味の無い良い作品だったので暗くならずに楽しめた。
夏休み、観て損はしない!
水谷さんといえば失礼ながら相棒のイメージしかなかったのですが、こんなに丁寧で素晴らしい役者さんだったのか!と感心した。子役の子も素晴らしい表現力をもっていてびっくり。
映画自体、じんわり温かくて、戦争映画にありがちな押しつけがましさとは一切無縁の穏やかさが心地よかった。「戦争映画」が苦手でもこの映画はいける気がする。
脇役までやたら豪華で、そういう意味でもお得。
画も綺麗で、特に焼野原のシーンはなんだか切り取って貼っておきたいくらい美しかった。
公開されたらまた見に行くと思う。今度は親と一緒に。
水谷豊さんの演技が最高
7月10日の完成試写会を観にいき、豪華な舞台挨拶を含め、とても満足しました。
戦争の憎しみ、悲しみとかを悲惨に描くドラマは多いです。でも、
この作品はそれにも触れるが焦点はおかず、子供らしい視点や好奇心、明るい描写もおりこみながら、戦時中の過酷な環境下に落とされた平凡な家族(特に父親と子供)のメンタル面に特化してます。
右にも左にもよさず、共産にも宗教にも天皇思想にも偏りすぎず、でも批判も肯定もせず、周りの空気を読みながら発言もしない。そんな
「全ての人を尊重する、中立な思想」を「そのまま変えずにただ持ち続けること」がこの時代にどんなに難しいことか、戦争の群集心理の虚しさをキャスト、特に水谷さんとH役の子が迫真の演技で教えてくれました。
特に水谷さんの無言でも心境の微細な変化が伝わる複雑な演技はもうっっ‼ポンッ‼(←太鼓判)一緒に見に行った連れ共々ファンになりました。
戦争に翻弄されるドラマは沢山ありますが新鮮だったのは、大人と子どもの戦争の捉え方と乗り越え方の違いが描かれているところ。
大人になってから戦争に飲まれる人と、学校教育が軍事訓練だった子供との違いははっきり描かれていて、原作が半自叙伝のためか説得力があり「そうだよなぁ」と納得しました。
原作が分厚く上下巻あり長いので、Hのキャラクターがにじみ出るシーンなど、どうしてもカットがあり、後半巻いてる印象もありました。ハデに盛り上がるラストとか、ラストに無理やり泣きをつくる展開はないです。
ただ制作費の力もあり空襲のおどろおどろしい雰囲気や恐怖は正月ドラマとかよりもっともっと詳細に迫力を持って描かれてます。音の作る迫力もあるので映画館のお金を払う価値があります。泣きどころ笑いどころもあり、お客さんもくすくすしてました。
それに2時間の中で原作のここを描きたい、というのは伝わってきました。
戦争という過激な意見を持つ方々の出やすいテーマを含むし、原作にファンが多いので、色んな意見があってもイイと思います。わたしにとってはとても良い学びになりました。暗い気持ちにならずに学べる良作です。
原作について歴史背景などとのズレに関する批判があったこともありましたが、あの後著書自身が謝罪して100箇所以上書き直したので、もうズレはないんじゃないでしょうかw
特に学童からみた戦争感覚が衝撃でしし。Hって実在したらいま83歳ですよね。たぶんこれから…電車のH世代のお年寄りに対して、私は見方を変えてしまいます(笑)
実話ベースで長編の原作なぶん難しいですが、
2時間で最後の部分ほんの少しはやく感じたため作品に+4点。+0.5点は水谷豊さんの名演への加点です(もちろん他のキャストさんも良かったです)
甘い評価でごめん。水谷豊は名演
5月某日、都内の試写室で鑑賞。
戦前から戦中・戦後にかけ、神戸を舞台に一人の少年の成長を描くのだが…。
主人公の少年より、その父を演じた水谷豊の演技にひかれた。
戦前、戦中という時代、歴史に関心がある評者はどうしてもその時代を描く作品に甘くなってしまい、点数はオマケしている。
水谷と伊藤の夫婦役は、実に自然でいい。
あの時代、子供を抱えた親がどういう感情を持って生きていたのか…。それは今の時代に生きる自分にはもちろん想像するしかないのだが、水谷の演技はその心情をうまく映している。
H少年を演じる子役、がんばっていて好感は持てる。
しかし、小学校4年(当時は国民学校)から中学卒業時までを1人の子役で押し切るのはちょっとムリがあるかな、と思った。
そうしたリアリズムは排した…イヤ、降旗監督作品にそんなリアリズムみたいなもん求めたらイカンね。
封切りまでちょっと時間があるけど、東宝さん、うまく宣伝したってや。
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