劇場公開日 2013年8月10日

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「水谷豊さんの演技が最高」少年H Arakawaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5水谷豊さんの演技が最高

2013年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

知的

7月10日の完成試写会を観にいき、豪華な舞台挨拶を含め、とても満足しました。

戦争の憎しみ、悲しみとかを悲惨に描くドラマは多いです。でも、

この作品はそれにも触れるが焦点はおかず、子供らしい視点や好奇心、明るい描写もおりこみながら、戦時中の過酷な環境下に落とされた平凡な家族(特に父親と子供)のメンタル面に特化してます。

右にも左にもよさず、共産にも宗教にも天皇思想にも偏りすぎず、でも批判も肯定もせず、周りの空気を読みながら発言もしない。そんな

「全ての人を尊重する、中立な思想」を「そのまま変えずにただ持ち続けること」がこの時代にどんなに難しいことか、戦争の群集心理の虚しさをキャスト、特に水谷さんとH役の子が迫真の演技で教えてくれました。

特に水谷さんの無言でも心境の微細な変化が伝わる複雑な演技はもうっっ‼ポンッ‼(←太鼓判)一緒に見に行った連れ共々ファンになりました。

戦争に翻弄されるドラマは沢山ありますが新鮮だったのは、大人と子どもの戦争の捉え方と乗り越え方の違いが描かれているところ。

大人になってから戦争に飲まれる人と、学校教育が軍事訓練だった子供との違いははっきり描かれていて、原作が半自叙伝のためか説得力があり「そうだよなぁ」と納得しました。

原作が分厚く上下巻あり長いので、Hのキャラクターがにじみ出るシーンなど、どうしてもカットがあり、後半巻いてる印象もありました。ハデに盛り上がるラストとか、ラストに無理やり泣きをつくる展開はないです。

ただ制作費の力もあり空襲のおどろおどろしい雰囲気や恐怖は正月ドラマとかよりもっともっと詳細に迫力を持って描かれてます。音の作る迫力もあるので映画館のお金を払う価値があります。泣きどころ笑いどころもあり、お客さんもくすくすしてました。

それに2時間の中で原作のここを描きたい、というのは伝わってきました。

戦争という過激な意見を持つ方々の出やすいテーマを含むし、原作にファンが多いので、色んな意見があってもイイと思います。わたしにとってはとても良い学びになりました。暗い気持ちにならずに学べる良作です。

原作について歴史背景などとのズレに関する批判があったこともありましたが、あの後著書自身が謝罪して100箇所以上書き直したので、もうズレはないんじゃないでしょうかw

特に学童からみた戦争感覚が衝撃でしし。Hって実在したらいま83歳ですよね。たぶんこれから…電車のH世代のお年寄りに対して、私は見方を変えてしまいます(笑)

実話ベースで長編の原作なぶん難しいですが、
2時間で最後の部分ほんの少しはやく感じたため作品に+4点。+0.5点は水谷豊さんの名演への加点です(もちろん他のキャストさんも良かったです)

Arakawa