少年Hのレビュー・感想・評価
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もっとしなやかに、もっとしたたかに。
舞台美術家の妹尾河童さんが自分の少年時代を描き、300万部という大ヒットとなった小説の映画化です。
妹尾さんを演じる吉岡少年が、真に素晴らしい演技を見せて、お見事の一言です。
お父さん役の水谷豊の大阪弁はヘンな上に自信なさげですが、この点を除けば、なかなか良い演技でした。
お父さんは、自由主義・博愛主義を愛しながらも、柳のようにしなやかにわが子を育てています。
一方、お母さんがゴリゴリのキリスト教信者。
この人一人では殉教しかねないぐらいのコチコチ頭に固まっています。
しかしその毒を、しなやかなお父さんが解毒する、そういう家族関係の中で少年Hは育ったのでした。
「正しいと思うことは正しいと思う」と、うかつにも言ってしまう少年H。
その少年Hの目に第二次世界大戦はどう映ったか、という、あたかもレンズを二枚重ねで描いたような構図によって、この作品は成功したのでしょう。
しかしその代償として、妹尾さんは、実は片耳の聴力を失っています。
映画の中でも妹尾少年はさんざんに殴られるシーンが描かれていますが、 耳が聞こえなくなったとまでは一言も触れられていません。
しかし事実はかくの如し。
信念を貫くことは、なんと辛いことなんだと、今だから言えるのかも知れません。
戦争が、いま日常に入ってきたら
コロナからじわりと戦争に流れていかないよう、非常に気になっているので、いま観れてよかった。
私たち庶民の暮らしに、戦争が入ってきた様子がリアリティをもって描かれています。
自由に発言できないムードや、体制と違う考えを持っていると勝手に周囲から偏見を持たれたり、わずかなことが引き金でスパイ扱いや拷問にかけられるなど。
子供から大人まで、戦争はその人の人間性をあらわにする怖さがある。最悪な部分をさらけ出していき、中身が空っぽのヤツがここぞとばかりに威張り、のさばる。
原田泰造さん演じる上官(先生)がそれです。
そんな中、主人公の少年はおかしいことはおかしい、と言える真っ直ぐさを持っています。自分の目で見て自分の頭で考える態度を持っている。
でもそれが目をつけられる点でもある。
お父さんだけは人間性を失うまいと、息子の疑問にもちゃんと説明をしてくれるような、町のテイラーですが、物静かな職人、知性のある人物。水谷豊さんの好演が光っています。
世の中や近所がどんどん軍国主義に流されて染まっていく中、この父が精神的な拠り所、息子はなんとか怒りを抑え、ギリギリ枠に収まっている。
お父さん、家族を危険にさらさないよう、警戒します。いまの香港のデモを見ていると、これは現代でも全く変わらない。お腹の底がゾワっとするような不安感。
日本だって、いまも油断したら、いつ戦争に巻き込まれるかわからない。
庶民はいつも世界の情勢に疎い。
まじめに生きていればまさか自分の生活がなくなるなんて、想像すらできません。それが平和ということ。
でもコロナウィルスは戦争リスクも高めたと思います。すでに第一次世界大戦の死者数を超えてしまいました。スペイン風邪の頃と状況が似てきました。
格差や経済悪化に加え、差別や偏見の高まりは今アメリカでもまさに。世の中の累積不満が、第二次世界大戦への導線になっていきましたが、またそこに流れていかぬよう、いつだって庶民が気をつけなくては。
映画でも終戦になったからと一気に幸せは回復しません。
次にやってくる混沌。
大事な物も人もたくさん失っており、ころっと変わった大人や自信喪失した父に唖然とする主人公。
息子の真摯さに何も言えない父。
父子の対峙。一番心に響きました。
主人公の叫び「結局、戦争って、なんだったんだ!?」終わってみると、そのあまりの無意味さに、茫然とするしかない。戦争終わってからの方が、精神を壊しかねない。
【第二次世界大戦時、先進的な家で育った少年”H"が目で見て、体験した事を描き出す。降旗監督と古沢良太の脚本が描き出す静かな、しかし強烈な反戦映画である。】
少年”H”:妹尾肇(吉岡竜輝)が育った家庭は、腕の良い仕立て屋盛夫(水谷豊)と、普段は厳しいが根は優しい妻敏子(伊東蘭)と好子(花田優里音)の4人家族。
父母の思想は、当時としては先進的で、家族で教会に通っている。
そのことが、日本の配色が濃厚になりつつあるとき、妹尾家が(当時の愚かな)国家の締め付けの対象となってしまうのだが・・。
日米開戦後、”H"の近所のうどん屋の兄ちゃん(小栗旬)が”アカ”という理由で逮捕。
元女形の綺麗な”オトコ姉ちゃん”も出征するが、戦地に赴く前に行方不明になる。憲兵が探す中、”H"少年は変わり果てた”オトコ姉ちゃん”を見つけてしまう・・。
学校で”スパイ”と揶揄われる少年”H"。
父、盛夫はスパイ容疑で連行され、一晩厳しい”尋問”を受ける。
<こういう場面を何度も映画で観たが、旧日本軍の”特高”と言われた人々の虎の威を借る姿は、本当に唾棄すべきモノである。時代がそうであったのは充分理解はしている積りだが、人間の悪性を突きつけられるようで、観ていて辛い:今作では原田泰三が演じる田森教官の戦時と戦後の姿が印象的であった。>
1945年3月、日本の敗色が濃厚になる中、少年”H"の住む神戸に焼夷弾が降り注ぐ。(この場面での焼夷弾のリアルな映像は今でも覚えている・・)
終戦後、無力感に襲われる少年”H"はある行為を行なおうとするが、前を向き生きていく事を決意する・・。
<降旗監督と古沢良太の脚本が少しだけ、アンマッチだったかなと思いながら劇場を後にした作品>
<2013年8月12日 劇場にて鑑賞>
太平洋戦争下という時代に翻弄されながらも、勇気や信念を貫いて生きた...
太平洋戦争下という時代に翻弄されながらも、勇気や信念を貫いて生きた家族の激動の20年間を描き、実生活でも夫婦の水谷豊と伊藤蘭が夫婦役で映画初共演を果たした。
軍艦を描いただけでもやばい時代。
商売上、外国人とも交流があった父(水谷)やクリスチャンの母(伊藤)のもとで育った少年はじめは皆とは考え方も違っていた。軍国主義に染まらず、時にはスパイ、非国民と指さされても自分の信念をまげない強い少年H。
向かいのうどん屋の兄ちゃん(小栗旬)が「男同士の秘密だぞ」と言ってアメリカのレコードを聴かせてくれたりして優しい面を見せてくれたが、スパイ容疑のために警察に捕まってしまう。また、女形として俳優としても成功しそうなオトコ姉ちゃん(早乙女太一)は母親の面倒をみる為に映写技師として働いていたが、ある日召集令状が届く・・・
そんな近所の優しい人たちも戦時下で不幸に見舞われる中、少年Hにも受難の日が訪れる。教会のステイプルス先生が故郷のニューヨークに帰り、エンパイア・ステイト・ビルの絵葉書を送ってきたのだが、それを自慢気に見せたことで学校の机にスパイなどと落書きされた。そして、外国人とも接してきた父が特高警察に捕まって酷い仕打ちを受けたこと。軍国主義の中で非国民扱いされても、たくましく生きていこうとする家族の姿があった。
ストーリー的には少年の成長物語といった雰囲気があり、ダイナミクスを感じないが、戦前、戦中の国民の感情が伝わってくる。戦後は、どちらかというと生きていこうとする家族に励まされた父親の成長物語だったかもしれない。
戦争の怖さ、理不尽さを少年の真っ直ぐな視線で描いている。ただそんな...
戦争の怖さ、理不尽さを少年の真っ直ぐな視線で描いている。ただそんな時代の中でも辛さだけでない微笑ましい日常が垣間見られ、それが心に優しく響いてきた。
70点
やはり水谷豊さんは凄まじい力量だと実感。自ら映画化を打診しここまでのヒットを生み出すのは大変なこと。キャストも小栗旬や佐々木蔵之介などかなり豪華。豪華なだけで終わらずしっかりと演技が付いてくる。個性的な演技がありつつ、戦争という人類が忘れてはいけないものをしっかりと映し出している。水谷豊演じる不細工なでも頑張る父親の姿には胸を打たれた。いい作品だった。
戦争を挟み、洋服の仕立屋の生活ぶりを描く。 このジャンルは普段見な...
戦争を挟み、洋服の仕立屋の生活ぶりを描く。
このジャンルは普段見ないが、挑戦してみた。
戦争の前後で、教官の言うことが180度変わる世の中になってしまうのがあからさますぎる。でも分かりやすい。
泣く映画だと思うが、全く泣けなかった。
全てのレビュー
THE 普通
・戦後の生きることの必死さを描いた作品。
・ただこの部類は散々観てきたような気がするため、あまり印象に残らなかった。
・ただ、マイナス要素もあんま感じなかった。見てて退屈ではない不思議な作品であった。
ひたむきに生きるという事
映画評価:50点
第二次世界大戦の真っ只中、当時の中学生が感じた葛藤と悩み、更にそういう激動な瞬間だからこそ宗教を信じ、好奇心を震わせる。
何より信仰まで制限される時代
好きな事を好きとは言えず
今とは全く違う日本がそこにはある。
何かはっきりしない矛盾がそこにはあって、でもそれが何だか分からなくて。
まだ純粋な中学生の眼だからこそ、一緒に体感出来たのかもしれない。
あの時代は間違いであったのだと訴える原作者の気持ちが感じられた作品でした!
【2015.1.17鑑賞】
説教臭い教科書みたい
総合60点 ( ストーリー:60点|キャスト:65点|演出:60点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
戦争の時代を背景にして、倫理や歴史の教科書のようなありがちなわかりやすくて厳しくない綺麗な小話があらちこちらに散りばめられている。平等・差別・民族・宗教・自由・平和・言論統制と、それはいいことを言っているし正しいが、どうにもそれが典型的過ぎるし説教臭いしわざとらしい。映画としては出来事の一つ一つがあまりに説明的過ぎて、観ていて不自然だし楽しめない。もうそんなことわかっているしここでわざわざ強調しなくていいよ。もっと普通に映画を楽しませてほしい。いちいち台詞で父親が諭し説明するのではなく、伝えたいことをしっかりと描いて、あとは視聴者に感じさせ考えさせてほしい。「シンドラーのリスト」は、ユダヤ人への差別や虐殺はいけないよなんて台詞での講義はなかったけど、それでも言いたいことはよく伝わっていたさ。
一見丁寧そうにに見えて、全体を漂うオシい感じ
一見丁寧そうにに見えて、全体を漂うオシい感じ。もう少し練れば良いのにという箇所がいくつか目立ったような。
特に、後半から最後にかけて、親からの独り立ちはわかるのだが、
小学校でも中学校でも友達がいたはずなのに、友達とも関係なく独り立ちしちゃったように見えるのが、終わり方として今一つ。
直接 訴えかけられているわけではないのかもしれないが、勝手ながら
絶対の正義と、その時代に合った現実解は必ずしも一致しない、その折り合いをどうつけられるようになるのかが大人への成長なんだ、
というのを一番強く受け取った。
若い世代にこそ見てほしい
劇場に入って一番驚いたのは平均年齢の高さ。
三連休初めの土曜、しかも映画の日だというのに
客はまばらで、お年寄りばかり。
オン・ザ・ロードのほうがほぼ満席だったため、
こちらも人が多いのかな?っと思っていので、
これはちょっと大丈夫なんだろうか?っと不安に…。
映画自体は戦争ものとしてはかなりライトな印象。
役者たちも戦時中の人間という印象よりは、
平成の人間が戦時中の教育を受けたかのような、
少し妙な違和感が拭えない印象がありました。
主人公の家族は、洋服を作って外国のお客さんと
親しくしていたり、キリスト教徒であったりと、
戦争中であれば、色々な困難に直面することが
わかりきっているため、その辺りの近所の住民や
周りの環境に関しても興味深く鑑賞させてもらいました。
戦争という状況は国民の1人がどんなに抗っても、
その大きな流れを変えることはできない。
周りの人間たちが「大日本帝国万歳!」っと、
政治やマスコミ、教育に流されていく中。
自身の信仰を意固地になって主張する母親や
世の中の不条理に対して困惑する子供に対して
世の中に無暗に逆らうのではなく、その流れをきちんと
自分の目で判断して、本当に守るべきものは何かを考え、
時には大切なものを守るために周りに合わせること。
周りに流されたり、周りのせいにするのではなく、
きちんと自分の言動に責任を持つことを教えます。
戦時の学生教育、思想犯等に対する特高の圧力。
自由に物事を考えることも制限され、
理不尽な暴力に対して訴えることもできず、
「戦争に勝つために」の一言の元に、
自由な思想も生き方も弾圧され続けた時代。
この作品はどちらかというとそういった
時代に対して、どのように自分という
人間性を守り、自己を貫いていくのか。
そういうことを強く何度も訴えかけてきます。
反面、誰もが間違っていると感じていても
目を逸らし、耳を塞ぎ、自分を騙している事に対し、
おかしいじゃないか!っと思わず口に出してしまう
そんなH少年に対して、社会に流されている人々は
世論を盾に容赦のない暴力や弾圧を行おうとしていく。
今の時代には当たり前のように許されている言動が
こんな風に弾圧されていた時代もあった。
劇場で作品を見ながら、自分が同じ状況であれば
どんな風に対処すればいいのだろうか?
どういう風に立ち回るべきなのか。
焼夷弾の雨の中、どうしたら逃げれるのか。
周りの人の考え方、思想、行動それらを見ながら
自分ならどうするか?そんなことを考えながら、
ずっと作品を見ていました。
ネットが普及して自由な発言や思想が飛び交う中、
ネトウヨ、ネトサヨなんて言葉が流行り始め、
原発デモや反韓、マスコミ叩きなんて行為に
熱中している人が多い昨今。
この映画を見て、実際の日本の戦犯は!
日本の戦争に対する思想は~、実際には~
等とがなり立てる情けない人も多いでしょう。
こんなに自由な言動の許された社会の中で、
ネットの知識や周りの声に流されて、
周りの目ばかりを気にして勝ち負けばかり、
そんなものを気にする情けない大人達。
そんな大人を見ながら育って、
身内だけのノリを平然と全国に晒して、
物事の善し悪しすらしっかりと図れない、
そしてその悪事をまともに叱っても貰えない子供たち。
戦争とネット、状況は変わっても、
海に漂う海藻のように周りの声や考えに
安易に流されて、そんな矮小な自分に満足して、
斜に構えて生きている人々。
こんなに恵まれた世の中に居ながら、
恵まれてしまっているが故に
ハングリー精神に欠落し、自己正当化と、
自己肯定しかしようとしない人々。
わざわざ与えられた自由に対して、
自ら制限と檻を作って自分を守る。
行きたくもない戦争に連行され、
自分の信念を持って反戦を訴えれば、
拷問され、非難され、最前線に送られ殺された、
そんな自由すら叫べなかった人々は、
戦争が終わった途端に手のひらを返し、
「僕らは戦争は間違っていたと思う」
「戦争は二度と起こしてはいけないものだ」
「僕らは弾圧されていて自由な発言すら許されなかった」
っと訴える人々をみて何を思うのか。
今の情けない現代人を見て、一体何を思うのか。
H少年から見て現代人はどんな風にうつるのか。
映画や作品というのは、その情景や状況を見て、
誰かに思想を押し付けられるのではなく、
色んな思想を見ながら、
自分で物事を考えることができる。
大人や教師達が教えてくれない、
貴重な自分で感じ、調べ、考え、
学びとることができる文化です。
この映画は"自分で考える"ということを、
しっかりと伝えようと何度も何度も、
その点を繰り返し伝えてきます。
それは父親の言葉だけではない、
母親のまなざしであったり、
好戦家の理不尽な暴力であったり、
思想に染まった人々の理不尽であったり。
その全てが「自分で考える」大切さを、
何度何度も問いかけてくる作品です。
だからこそ、この作品は小中高生を
割引にしてもらって、
もっと沢山の人に見て貰いたいなっと思う。
そういう作品でした。
戦争ものとしてはやっぱりライトですし、
ちょっと当時としては言動等も含めて
人間性に対する考えはちょっと甘い面も
強くて、違和感があるのは否めませんし。
水谷豊という役者の印象が、
相棒の印象が強く、色々裏事情も聞いているため
やっぱりちょっと胡散臭い感じは否めませんが(苦笑)
そういう意味でも、戦争を考える為の
入門編的な映画としては最適ではないかなっと。
逆に大人でこの映画に満足してしまうのは、
ちょっといくらなんでも…っと思ってしまう面もあります(^^;
でも、こういう戦争映画は毎年
子供向けに流れる風潮ができるといいですね。
戦争を知っている世代がどんどん減って行っている今。
学校等でもそういった歴史を考える時間は
どんどん減っているようですし。
毎年、この時期になるとやって欲しい、映画です。
戦争を経験していない、人間にとって、あの時代ってこんなんだったんだろうな、と想像が容易に出来る映画、やっぱり、そんなんだったんだ、と、その時を、なっとくできる映画。
わかりやすい。
やっぱり、戦争はしてわいけない。
素晴らしい作品
とあるモールの映画館で鑑賞してきました。
平均年齢は60越えだと感じました。20代のカップルが一組見受けられましたが•••
映画に関してですが、戦時中のとあるごく普通の一家を忠実に再現されており、当時の人間模様、文化などを改めて知る事ができる貴重な作品であると思います。憲兵など自国民に対しても恐怖を与えていた存在も再認識させられました。その時代に懸命に生きている内容は鑑賞する価値は十二分にあると思います。個人的にはオールウェイズ三丁目の夕日ぐらいヒットしても良い映画だと思います。
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