劇場公開日 2013年8月10日

  • 予告編を見る

「もっとしなやかに、もっとしたたかに。」少年H お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0もっとしなやかに、もっとしたたかに。

2020年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

舞台美術家の妹尾河童さんが自分の少年時代を描き、300万部という大ヒットとなった小説の映画化です。

妹尾さんを演じる吉岡少年が、真に素晴らしい演技を見せて、お見事の一言です。
お父さん役の水谷豊の大阪弁はヘンな上に自信なさげですが、この点を除けば、なかなか良い演技でした。

お父さんは、自由主義・博愛主義を愛しながらも、柳のようにしなやかにわが子を育てています。

一方、お母さんがゴリゴリのキリスト教信者。
この人一人では殉教しかねないぐらいのコチコチ頭に固まっています。
しかしその毒を、しなやかなお父さんが解毒する、そういう家族関係の中で少年Hは育ったのでした。

「正しいと思うことは正しいと思う」と、うかつにも言ってしまう少年H。
その少年Hの目に第二次世界大戦はどう映ったか、という、あたかもレンズを二枚重ねで描いたような構図によって、この作品は成功したのでしょう。

しかしその代償として、妹尾さんは、実は片耳の聴力を失っています。

映画の中でも妹尾少年はさんざんに殴られるシーンが描かれていますが、 耳が聞こえなくなったとまでは一言も触れられていません。

しかし事実はかくの如し。

信念を貫くことは、なんと辛いことなんだと、今だから言えるのかも知れません。

お水汲み当番