「世界平和?」ネイビーシールズ ブタゴリラさんの映画レビュー(感想・評価)
世界平和?
実在する米軍の特殊部隊の事実を基にした作品らしい。
確かに戦闘シーンは、他の派手な娯楽作品を凌駕する緊張感がある。
ドキュメンタリーの様な構成とカメラワークも、それを一層高めている。
余計な演出をしていないのが、この映画の特徴なのだろう。
しかし、これは戦争映画である。
「世界平和は家族の絆から」と、この映画の宣伝の為に訳の分からん事を言っているものがあったが、この映画のどこに家族の『絆』が描かれているのだ?
確かに、家族を残して祖国の為に働く(戦う)行為には頭が下がるが、それを頭から肯定していいのだろうか?
何故このような状況(世界が)になってしまったのか、彼ら(敵)は何を求め、何故そのような行動に出るのか、戦闘以外に解決策はなかったのか、そもそもこういう現状を作ってしまったのはどこの国なのか。
そういった洞察があまりにもなさ過ぎる。
そして最後には、「祖国のために勇気を持って戦った英雄」として締めくくられる。
命を賭して戦ったのは確かだが、それは誰の為なのだ?
家族の為? 本当か? 国を動かす少数の者が口にする方便ではないのか?
個人の行為としては尊いものでも、国としては愚かな過ちでしかないと思うのだが。
それを、こんな風に美化していいものだろうか。
この映画には、背景や、軍の上層部などは一切出てこず、一兵卒の非日常を描いている。それならば、彼らの生き様をもっと物語として描くべきではないか? これがドキュメンタリーなら、まだ受け入れられるが、もっと単純な娯楽作品であれば結構だが、これでは戦争を鼓舞する映画でしかない。
関わった方々には申し訳ないが、何故このようなものを作らなければいけないのか、製作者の良識を疑ってしまう。
観賞後、ゾッとしてしまった。