「みどころ・つっこみどころいっぱいの王道B級ニコケイ映画!」ハングリー・ラビット cmaさんの映画レビュー(感想・評価)
みどころ・つっこみどころいっぱいの王道B級ニコケイ映画!
ニコケイが、またやってくれました。今回は、細い銀縁メガネでシェイクスピアを熱く語る高校教師。広くなった額にシワを寄せ、苦悩する姿が何とも…ヒーローでも凡人でもなく、やっぱりニコケイそのもの、なのでした。
妻が暴行され、私的制裁組織に巻き込まれていくまじめな高校教師・ニコケイ。冒頭からいきなり始まる殺人の連鎖は、あれよあれよと大暴走へ。代理殺人の実行者たちは、組織側が告げる相手の素性を鵜呑みにしていたようですが、せめて知的な(はずの)ニコケイには、相手のことを自力でリサーチしてほしかったです。もちろん、行動の前に!
そんなニコケイはおろか、組織も意外にスキだらけ。とはいえ、なかなか全貌が見えず、身近なあの人や目の前のこの人も実は組織の人間か、という薄気味の悪さがじわじわと…。折しも、関係者が次々と逮捕されたオウム事件が連想されましたす。嘘っぽさ・薄っぺらさがかえって生々しく、あっさり笑い飛ばせない怖さ・重さがあります。
同じ私的制裁でも、「ブレイブ・ワン」のジョディ・フォスターのような悲壮感やストイックさがあまり感じられず、様々な立場の人々がうごめきドタバタと展開します。その分、私的制裁や暴力についてざっくばらんに語り合うには、意外に良い映画かもしれません。たとえば、ニコケイの教え子のような若者たちに「この物語で悪いのは誰と誰だと思う?」「どうすればトラブルは避けられた?」などと尋ねたら、様々な答えが飛び出しそうです。ニコケイが妻に高価なネックレスを贈らなければよかった、なんて答えもあるかも。
また、この映画は、様々な作品との二本立てが楽しめそうな点も魅力です。ぱっと浮かんだのは…。
1 代理殺人・東西対決
(廃墟となったモールでの激闘は、香港映画を思わせました。):本作&「アクシデント」
2 アジアンテイスト・ニコケイ二連発:本作&「バンコック・デンジャラス」(リメイクではなく、アジア映画の中でニコケイを観てみたい気もします。案外しっくりはまりそうな…。)
3 ニコケイ私的制裁二連発:本作&「キック・アス」(裏テーマは、カッコ悪&かっこよすぎニコケイ!)
…そして、なるほど!とうならされた同行者の発案は、
4 私的制裁・(一応)法的制裁対決inニューオーリンズ二連発:本作&「ニューオーリンズ・トライアル」!(裏テーマは、「ニューオーリンズって、ホントにそんな街?」)
…本作だけでもかなりニューオーリンズのイメージが歪むような気がしますが、ニューオーリンズの方々はこういった映画に文句を言わないのでしょうか? 日本の某都心だったら、絶対一悶着ありそうな気がしますが…。
…と、つっこみつつも楽しくなる、王道B級映画でした。連想妄想が際限なく広がるこういう作品、けっこう好きです!
長い蛇足:ちなみに、この手の映画には珍しく、原題よりもカタカナ邦題が断然ぴったりでした。「ウサギ」は、なぜか謎めいたものを連想させます。不思議な国のアリスのせいでしょうか? いやいや、映画の世界で「ウサギ」と言えば…。あの「ドニー・ダーコ」の銀色ウサギに、久しぶりに会いたくなりました。第5案:「ウサギ二連発」も良いですね。