「大人だって権力者はキライなのだ」ハンガー・ゲーム マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
大人だって権力者はキライなのだ
毎年、権力者が支配する地区から12~18歳の男女1名ずつを選び、死のサバイバルゲームへの参加を強要する。
強制的に参加させられた者にすれば命懸けの戦いだが、TV的な演出が施され、傍観する富裕層にとってはまさにゲームでしかない。その理不尽さと、富裕層の傲慢さを描くことに前半を丸々費やしている。大人たちをベテランの俳優で固め、若者向けの作品にしては意外なほどゆったりしたテンポで、独裁国家パネムの社会構造を丁寧に描写した。
後半はいよいよ問題のサバイバル戦が始まる。殺し合いという非道なゲームだが、残虐な描写が抑えられた点は好感が持てる。
ゲームは主催者によってコントロールされ、人々の関心を高めることに心血が注がれる。人々は演出されたゲームのTV中継に一喜一憂する。ここではイデオロギーの植え付けに利用されるマスメディアを痛烈に皮肉ってみせる。
ゲームの中で参加者たちが獣化していくなか、人として行動するカットニスに国民の心が傾倒していくことを由としない権力者(大人)の、彼女を新たな窮地に追い込む手口(嘘)に対するティーンエイジャーの反発こそ、この作品を世界中で大ヒットさせた原動力だろう。
話は都合よくヌルいところもあるが、大人でもそれなりに楽しめる。大人だって自分のことしか考えないような権力者はキライなのだ。
華美なキャピトルや闘技場の森など、もっと美しい色調を期待したが、全体に色乗りが浅く、ちょっと残念だった。
コメントする