「記憶の中のアイツ」横道世之介 arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
記憶の中のアイツ
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その名前こそ、一度聞いたら忘れられない個性派ながら、本人は至って普通の地方出身東京在住の大学生横道世之介。
さして特別な事件が起こる訳でもない上京からの一年間を追ったこの物語も実に淡々と進み、主人公同様まったくつかみどころがない。世之介を演じる高良健吾も上手いのか下手なのか、何でこうも世之介は没個性な人物なんだ?と訝りながら、このままの調子で二時間半超続くのかと少々不安にさえなってくる。
しかし、観終わってみると、このテンポと尺が必要だったのだと分かる。
何故なら、このテンポにみを委ねているうちに、この世之介に不思議と親しみを感じている自分に気付くから。自分も学生時代の彼の知り合いのひとりで、ずっと後になって「そういや、いたよね〜」と彼を思い出しているひとりになったような錯覚に陥るのだ。
十数年後、彼の友人達は懐かしげに彼を思い出している。最初こそ笑顔で。
しかし、そこには彼はもういない。
もう彼に会うことは出来ない。
不幸にも若くして人生を絶たれてしまった世之介は、過ぎてしまった日々の象徴として彼等が生きている限り記憶に残り続けるのだと思う。
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