横道世之介のレビュー・感想・評価
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長すぎない!幸せな2時間40分
映画は、90分ちょいが丁度いい。常々そう思っている。それなのに、 本作は2時間をゆうに越える2時間40分。観る前は少々不安があった。けれども、それは 全くの取り越し苦労だった。つくづく•しみじみ、幸せな2時間40分。観終えた今も、あれやこれやと思い出し笑いがこみ上げる。終始、(いわゆる)たいしたことは起こらない。けれども、かけがえのない出来事が詰まっている。頭の隅に追いやっていた様々な記憶や想いを、心地よく刺激してもらった。
映画になると知り、事前に原作を読んだ。そのときは、この小説をどのように映画にするんだろう?と半信半疑だった。吉田修一さんの文章は素晴らしい。ぐいぐいと読ませる。だからこそ、そのまま映画でなぞってはいけない。そこが映画の面白さであり、映画化の難しさなのだと思う。
本作は、原作に寄りかからず、あくまで映画の空気を大切にしている。原作は、世之介という名前の由来である井原西鶴の「好色一代男」を意識したかのような軽妙な語り口が印象的で、名前にまつわるエピソードも何度か登場する。だが、映画はそこらへんをばっさりカット。さらには、映画オリジナルのエピソードがさりげなく織り込まれている。それでいて全く不自然さがなく、世之介(と彼を取りまく人々)らしさに満ちている。文章にするとヤボなのでいちいちあげないが、思い返すにつけ、顔がほころぶ。 共通していたのは、通常ならば終盤に置かれるであろう、世之介にまつわる「仕掛け」が中盤で明かされる点だ。原作を読んで知っていても、気持ちがざわめく。とはいえ、仕掛けに流されない物語のふくらみは、映画でも健在。あざとくなりかねない冒険が、出しゃばらずに効果をあげている。
そして何より、キャストの素晴らしさ! 文字で読んだときは「本当にこんな人がいるかな?」とちょっぴり思った。それが、本作のおかげで、世之介が、祥子が、生き生きと動きだし、きらきらと魅力を放ち始めた。特に、吉高由里子! 世間ずれしたお嬢様を、あれほどチャーミングに演じられるのは彼女だけだろう。「婚前特急」を観返したくなった。
また、「あえて語らない」点も印象に残った。例えば、「可愛いエプロンを着た世之介のおばあちゃん」は登場しない。どんなエプロンだろう、どんなひとだったんだろう、と考える。世之介を思い返す彼らのモノローグも、一切語られない。なかでも、世之介が憧れたバブルのあだ花のような千春(伊藤歩)の沈黙は、クールで美しい。映画ならではの余韻だと思う。
蛇足ながら…途中、ふと思い出したこと。
映画を通じて知り合った、当時学生だった若い友人。そういえば彼も踊っていたなあ…サンバだったかな…でも、なんか違うような…太陽かぶって踊ったりはしてなかったよな…「あ。」
彼がやっていたのは、サンバではなくサルサでした…! とはいえ、サルサを踊れる人に出会ったのは彼が初めてで、「へえー、踊るんだー、踊っちゃうんだー」と思ったものです。
そうだよ、I田くん、キミのことだよ。元気にしてますか? 映画観てますか? 「横道世之介」、ぜひ観てね。
続編の映画化は…もう難しいのだろうか
吉田修一の素晴らしい青春小説を、沖田修一監督、高良健吾主演で映画化。
原作が素晴らしかったが、映画も非常に素敵な作品に仕上がった。
160分という長さも、なんのその。愛すべきキャラクターたちが目いっぱい青春を謳歌しており、たまらない気持ちになる。自分の学生時代、世之介みたいな友人がいたら、もっともっと豊かな時間になったのではないかとすら思わせられる。
続編も発売され、既読。いやあ、キャスト陣も再び演じたいだろうなあ。
みな人気者になってしまったし、実現するのは至難の業かもしれないなあ……。
いずれにしても、何度でも見たい2012年を代表する素晴らしい作品です。
あの人の若い頃
30代以上の人は楽しめる?
ずっと見たかった
シュールな笑いとノスタルジア
大学最後の年に公開されて劇場へ観に行った映画。
劇場で観た当時よりも、今観た方が心に響いた。
主人公の横道世之介がシュールなキャラクターなので笑えるシーンは多いが、基本的には淡々とした日常系映画である。
この主人公のキャラクターがどこまで好きかによって映画の評価が別れそうだが、私は友達になりたいと思ったので良い映画に感じた。
作品全体に溢れる少し長回しぎみの映像には、10代後半から20代前半の頃の日常で流れていたあの時間が確かに存在している。
途中、主人公とヒロインが二人で名前を呼び捨てでずっと呼び合うシーンがある。このシーンはおそらく作中でもっとも笑えるシーンであり、劇場で観た当時も観客から笑い声が聞こえてきた懐かしい思い出がある。
しかしこのシーン、同室にいる家政婦は泣いているのだ。
これは公開当時は何も思わなかったが、ただ名前を呼び合うだけで幸せを感じる二人の若さと純情に昔を思い出して泣いていることが、久しぶりの鑑賞で身に染みるように理解できた。
吉高由里子の魅力を再発見
評価の高い作品なのは知っていたし、「悪人」「怒り」などの吉田修一の描く、青春?恋愛?マイナス感情がなさそうなヒューマンドラマ?とはどんなものだろうと興味はあったが、なかなか観る気になれずにいた。
演技力があまりよくない吉高由里子が観る気をそぐ原因だった。
しかし実際に観てみると、上手いこと役にハマっていたと思う。
彼女の演技はしゃべりがイマイチだが動きによる演技は悪くないのだと気付いた。
お嬢様言葉の祥子というキャラクターが、セリフに心が入らない吉高の弱点を誤魔化せたように思う。祥子は何を考えてるのかわからない天然なところがあるからね。
作品の雰囲気が、コミカルで少々大袈裟な動きも可能にしたので、祥子の感情は動きを見ていればいい。
ビーチボールに掴まる祥子。うちわを扇ぐ祥子。洗濯物を畳む祥子。カーテンにくるまる祥子。
動きが良ければ魅力的なキャラクターは生み出せると証明したように思う。
作品のほうは、感情の起伏もストーリー的な起伏もほとんどない、長回しによるごくありふれた日常感と相まって、凄く普通。しかし面白いわけでもないのに永遠に観ていられそうな不思議さがある。
それはそのまま主人公横道世之介を表しているようだ。
すごく変わった男のようで実は至って普通な、ある意味主人公に相応しくないほどの無個性さなのだが、この作品はそれでいい。
世之介と出会ったキャラクターが過去を思い出しなぜか笑顔になることこそが主題で、世之介が特別で特殊なオンリーワンの存在であってはならないのだ。ちゃんと思い出せるように名前だけは特殊だったけどね。
観ている私たちにとっての世之介はごくありふれた何でもない日常を描いた作品そのものだ。
そこから自分の過去にいた世之介のような友達を呼び起こし懐かしむ、そんな作品なのだ。
しかし残念ながら友達の少ない自分には呼び起こされるものがなかった。
それはつまり、涙も笑いも苦さも甘さも、何の感情の変化も訪れない無に等しいもので、作品の評価が上がらない理由だ。
それともう一つ、1987年の時代感を懐かしむというのもあるだろうが、これは自分より上の世代で、過去の時代でありながら未来のことのようなズレがあり当然懐かしむことは出来なかった。
漠然とだが良い作品だったし、吉高由里子は可愛かったのだが、87年に大学生でもなく友達も少ない自分には見事にハマらない作品で、あまり楽しめなかった。
あとは、主演の高良健吾のことも少し書きたい気もしたが、書けることは一つしかなかった。彼は大体いつも良い。
典型的徘徊型映画
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横道世之介って奴が大学生活を送る。それをダラダラ追ってる。
お嬢様の吉高と付き合うが別れ、10年くらいして電車事故で死亡。
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お嬢様な吉高が可愛かったけど、内容は徘徊型。
長いし、目的のない内容はあまり好きではない。
新感覚と言って良い🎵
冒頭の掴み良し。映像へのこだわり、演出、脚本すべて良し。ただ少し過剰な長回し・・・映像の見せ方は上手い‼️しかし何かが変・・・何だろう、この変は・・・時間は飛ぶしストーリー展開はシュールだし、時代設定が不明で、ビューポイントの設定が難しい。兎に角展開に付いて行きづらい‼️。と思ってる内にビューポイントの揺らぎがまさに主人公をあぶり出す手法であることに気付かされる❗と言うかこの展開は一体何😓⁉️この物語はどうやって終わらせようとしてるのか?😓なんだなんだこの映画は・・・吉高、可愛すぎだろう🎵😅そして見終わった時・・・経験したことの無い感情に取り込まれることになる。悲しみでもカタルシスでも無い・・・これは何だろう・・・でもボクたちはこの感情を忘れることは無いと思う。
悲しみを感じさせず幸福を感じられるお話
素晴らしい映画でした
お人好しであり、素直で、真っ直ぐで誠実。
そんな主人公を高良健吾さんが演じる。3時間もある映画だけど、全然苦にならないくらい見応えのある映画でした。
主人公が大学に入ってから色んな人で出会っていく中で青春のど真ん中を味わっている姿が何とも微笑ましくて羨ましいなと感じた。
そのかけがえのない時間の一つ一つが大切で思い出になっていくんだろうなと思う。
いま、思えばそんな事って言うような事ばかりかもしれないけど、どれも輝いてる感じがします。
周りの人達との微妙な掛け合いも面白い!
こんな素敵な人がいたら、応援したくなります!
久しぶりに心からすっきりさせられる映画を観ました!とても良かったです!
ほっこりと笑いが後からジワる作品
特に何か大きな事が起こるわけではなく、大学生活の日常やお嬢様と付き合う事になる日常を綴ったオムニバス的な作品です
個性的で癖のあるけど、人の懐の入るのが得意で、何故か人を惹きつける魅力がある世之介。ピュア同士でキスだけではしゃいでいる平和なカップル。お嬢様のしょうこもかなり個性的です。
周りの役者達もチョイ役も含めて名脇役や著名な役者さんたちが勢揃いしています。
柄本祐、江口のりこ、ムロツヨシ、きたろう、
まさかのお隣りさんが井浦新さんだとは、、
マイナス要素は、
2時間40分ほどもあり、内容の割にはダラダラと長尺すぎる
自殺した原因が分からない。自殺じゃなくてうっかり幸せな死に方だったのではと思う。
音楽がほぼない。もう少し劇中音楽を挿入して欲しかった。
2人に出会えたという幸せ
2001年に新大久保駅で転落事故があり、落ちた乗客と、助けようとした韓国人留学生、日本人カメラマン関根史郎さんがなくなりました。マスコミは美談として韓国人留学生を取り上げ、でも、関根さんのことはあまり話題になりませんでした。家族の希望があったとか。
「自分で自分を主張する言葉を持っていない人、それを与えられなかった人、そういう人の声にならない声を言葉にできるのが作家の特権」小川洋子の言葉ですが、この横道世之介を見終わった時、その言葉を思い出しました。吉田修一が思い描く関根さんの人となり、突然の終わりを迎えた人生、それが世之介くんです。美談で語られることを拒む、悲壮さのかけらも感じさせない普通の人。笑顔で思い出が語られる普通過ぎる、でも特別な人。
交際相手の与謝野祥子さんもいい味を出していました。彼女が2週間の予定でフランスに旅立ち、世之介くんが渡すはずだった写真が渡せなかったのは、彼女がなかなか日本に戻ってこなかったからでしょう。そして、何年もたってからの祥子さんは海外を飛びまわる生活。タンザニアを訪れるという、ちょっと特別な渡航は、一般的なビジネスではなく例えば国連とかNPOの活動をしているという事でしょうか。もしかしたら長崎の夜の浜辺で、ベトナムからのボートピープルに出会った経験が彼女の人生を大きく変えたのかもしれません。彼女は、赤ちゃん一人を救えない自分の非力さを悔やみました。その後のフランスでの体験がきっかけを与えてくれ、2週間の予定が長きに渡る留学に変わったのでしょう。独特すぎる世界に生きている彼女ですが、いつも彼女は自分で人生を選択しているのです。
一方、世之介くんは、駅のホームで乗客の転落に出くわします。韓国人留学生はそれに気づき、助けようと線路に降りたのでしょう。世之介くんはと言えば、その韓国人に引き寄せられるように、助けに行ってしまったに違いない。覚悟とか決断とかではなく、流されるままに彼は人生を漂う。でも、彼の生き方の底に流れるのは、祥子さんと同じものです。
そんな彼ですが、祥子さんに今夜は君と一緒に過ごしたい、と伝えるシーンがありました。彼にとっては、一大決心、最大限の主体性。でもその結末は、パンツ姿の彼が、着衣のままの祥子さんに説教されてしまう、へなちょこさ。祥子さん、どんな思いで世之介くんとの時間を思い出すのだろうか、と思うとちょっと泣けてきます。
その後の展開が気になった
原作は未読。何となくおすすめの映画として取り上げられてたので鑑賞してみた。
終始、世之介を取り巻くほのぼのした日常が映し出され、大きな出来事が起こる訳ではなかったが、飽きせずその世界観に魅了されしまった。登場人物も個性豊かで、ストーリーに色付けにされていた点も良かった。吉高由里子の登場時、少しお嬢様言葉が気になったが、その違和感も徐々に無くなり、見事なはまり役だったかと思う。
物語はバス停で見送った場面で終わってしまったが、あの後2人には何が起こったのだろうか。やはり学生同士、若さでは乗り切れなかった点があったのだろうか。その続きが非常に気になる終わりだった。
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