クロニクル : 映画評論・批評
2013年9月25日更新
2013年9月27日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
ダークSFのように見えて、底に流れるメッセージはポジティブ
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」。特別な力を手に入れた3人の高校生の軌跡を目の当たりにして、頭に浮かぶのは、「スパイダーマン」シリーズの有名な言葉だ。もちろん、街の監視カメラなども交えつつ、主人公アンドリューのビデオカメラがとらえた映像を中心に描くスタイルは、大きな見どころ。孤独な高校生の自分撮りビデオとして始まった世界が、3人の能力の増大とともに大作並みのスケールを見せ始めるアクションも、アンドリューの特殊能力が自在に操るカメラがダイナミックに捉えているのだ。定番化したファウンドフッテージ・スタイル(※)に広がりをもたらしたこの発想にもビジュアルにも、ジョシュ・トランクとマックス・ランディスの溢れるセンスには痺れるばかり。
だが、この青春SFが面白いのは、自分で自分を記録(クロニクル)するのが当たり前の時代の気分が反映されたそのスタイルと題材だけではない。そこに浮かび上がるものが、誰もが身に覚えのある10代の頃の痛みを思い出させつつ、特殊能力があろうがなかろうが大切なものが何かを浮かび上がらせるからなのだ。大いなる力を手にした責任を果たせる者とそうでない者の差は、どこにあるのか。絶望を抱えて暴走するアンドリューとそれを阻止しようとする2人の対比が浮かび上がらせるのは、愛してくれる人がいることの大切さ。ダークSFのように見えて、底に流れるメッセージはポジティブ。それもまた、この作品のクールなところ。人間が描ける監督ジョシュ・トランクは、大物になりそうな予感がする!
(杉谷伸子)
※モキュメンタリーの一種