黄金を抱いて翔べのレビュー・感想・評価
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とてもスリリング
現代の日本で銀行強奪事件を描こうという心意気が非常に素晴らしいし、またその銀行がけっこう古いというのがリアルで、あり得そうなところを追求している感じが素晴らしかった。
井筒監督作品を最近立て続けに見返したところ、井筒監督の暴力は乱闘かリンチが中心で、不意打ちなどもあり、タイマンは描いていなかった。ほとんどないのではないだろうか。英雄的にケンカの強い人物などは一人もいない。強いとされている人も尋常じゃなく凶暴であったり、どこまでも痛めつける事にためらいがない、凶器を卑怯とも思わない人物として描かれていた。ケンカの強さなんて所詮そんなものだと意図しているように感じた。空手の使い手の強さが、金属バットのヤンキーと同格として描かれている。
そういった意味でのリアリティはこの映画の強盗や殺し合いにも非常に感じる事ができる。日本映画のエンターテイメントは現実感を簡単に手放してしまいがちなのでそこを大切にする井筒監督のセンスは素晴らしいと思った。
妻夫木聡が暗すぎ、浅野忠信が土方っぽすぎなどなど、非常に味のある人物像ながら女性ファンがみたらガッカリしそうなところもよかった。
監督ありがとう!
原作大好き人間としては、期待1/3、不安2/3でしたが・・・。
元作品をこれだけ大事にしたまま映像化していただけるとは、もう、本当にうれしいです。
キャスティングすべてにはじめ「え!!!!!??」でしたが、観終わって、ありがたさに合唱。
すばらしかった。みんなよくやった。
特にモモ役の方が、ほんとうに、良かった・・・・・・・。
幸田役も難しいでしょうが、モモ役というのは、なんとなく実写は無理だろうと思ってました。が、チャンミンさん、すごく良かった。
そして幸田とのやり取りも、抑えめの演出で、それがまた良かった。
中に激しく違和感を感じる絡みがありました。
ミシンを扱っているモモの頭を、幸田がわしゃわしゃっと。
あのワンシーンには、本当に驚きました。ハッとした。
あれは幸田とモモではあり得ません。あり得ないのですが、しかし、井筒監督作品として考えると、というか妻夫木さんだとあり得る。そして、井筒「黄金」の二人のシーンとしてみると、すごく良いシーンでした。
小説新潮に発表された当初の描写に「わしゃわしゃ」が入っていたのでしょうか。たぶん入ってないと思うんですが(妻夫木さんのアドリブだという気がしますが)。
とにかく、本当にうれしいし、また観たいし、何度でも味わいたい、ありがたい作品です。
くどいようですが、監督ほか、制作に関わった皆さん、ありがとうございました。
大阪ノワール
原作は、高村薫のデビュー作。未読。
2人の男達が、大銀行の地下に眠る240億円の金塊を強奪しようと計画するところから始まる。
札束ではなく、金塊というところがミソ。
何で、あんなに重たいものを・・・と疑問を抱くが、劇中で解決される。
強奪のための人集めで、4人の男が集まる。
合計6人。
リーダーの北川。
実行犯の幸田。
システムエンジニアの野田。
爆弾工作員のモモ。
相談役のじいちゃん。
北川の弟で資材調達係の春樹。
これがまた、みんなイケメンなんだな~。
それぞれがそれぞれの役に似合っていて良かった。
皆が皆イケメンでも、嫌味がない。
だから、見ている私も「うまくいきますように!!パンパン!!」と思ってしまった。
金塊に吸い寄せられるように集まる仲間たち。
その過程で各人の過去や背景などが、見えてくる。
個性があり良い。
クールな妻夫木君。
過去と現在の重さを引きずりながら、生きてきたためか、強い。強い。
大阪弁じゃないけど、良かったよ。
リーダーの浅野さん。
意外にも(失礼)貫禄があり、優しくて、良き夫、良きリーダーを好演。
桐谷健太さん。
大阪出身だけあって、自然な大阪弁と大阪の雰囲気を余すところなく出してくれている。
コミカルさが生きている。
チャンミン。
東方神起の名前くらいは知っているが、じっくりお顔を見たのは、初めて。
可愛さと辛さが溢れていた。
後ろの席のオバサン達が、≪もう~~~!可愛い!!ず~~と出ていて欲しかったわ≫と言ってたよ。
溝端クンも若さゆえの突っ走り感が良かった。
西田さんは流石の貫禄充分。
で、金塊強奪作戦。
裏稼業には裏稼業なのか、邪魔者が寄ってくる。
暴力団風の男や謎めいた男。
どいつもこいつも怪しい。
胡散臭い。
目立ってはいけないためか、はたまた、作戦実行が夜のためか、作品を包む雰囲気も暗く沈みがち。
でも、そこへ時々大阪のおばちゃんが登場。
その一言が、場を和ませる。
さすがやわ。
大阪を知っている監督ならでは!、やね。
先行き不透明、閉塞的な今日の生活。
そんな中での、大それた計画。
過去・現在の反逆性。
未来への儚げさ。
6人のメンバーの切ない吐息が聞こえてきそうだった。
ノワール感がばっちり。
でも、前半が少し長かったな。
もう少し短めにして、強奪作戦を早めに実行してほしかった。
舞台となる大阪。
中之島・淀屋橋のオフィス街、梅田の繁華街、吹田の住宅街。
暑い夏。
どれもが、この作品にぴったり。
劇中、北川と幸田が訪れる大銀行は、本当に淀屋橋にある、当時の財閥系銀行の本店だ。
野田が、「出身は神戸やで」と言っていたが、これは大阪の冗談で、本当は大阪出身だよね。
クスクス。
内面を描く演技
原作が小説ということで、小説を先に読んで公開日をまっておりました。
原作は「内面を描くに長けたメディア」の小説。
それを「外面を描くに長けたメディア」の映画でやるというのは、これまた難しいことですが、この映画では出演者各人の演技によってそれが成されていたと思います。
主要人物の集まり方もスピーディーに。そして全員が癖のある奴らばかり。唯一普通なのは野田だけ。
この野田を演じている桐谷さんの演技がまた面白い。
普通ない奴らのなかで、唯一普通の。恐らく見ている観客に一番近いのが彼でしょう。
登場時から、強奪計画の実行時に至るまでの彼の「普通」なっていくさまは中々です。
また、この金塊の為に集まった男達が徐々に生き生きとしていく様。
特にこのストーリーで鍵となる幸田とモモ。この二人の変わっていく様もいい演技で魅せてくれていたと思います。
私自身、モモ役チャンミンファンということもあって見に行きましたが、ファンという贔屓を抜いてもなかなかいい演技をしていたのではないかと思います。
また原作にある「幸田はモモが好きだ」ということを念頭に演じたという妻夫木さんの演技もまた、内面からその気持ちが現れててよかったと思います。
二人のラストシーンは凄く好きなカットの一つです。
スピーディーに進むストーリーはカットも多くせわしなく進んでいきます。
個人的には長回しの演出が好きなのですが、この作品に関してはこっちのほうがより緊迫感が感じられて良かっただろうなと。
なかなか乾いた感じでありながら、日常によくいる大阪のおばちゃんたちがいい味出してます。
おばちゃんたち含め、関西特有の空気や、会話の小ネタとかもチョット面白いのでその辺もチェックすると楽しいかもしれません。
タイトルが好き
タイトルが好きで観た。
原作は知らない、たぶん本の方が面白いだろう。
映画自体はてんぽ良く進んでいく。
男くさい映画だった。
人が良く死ぬ映画だけど、
北野映画とは違う独特な雰囲気がある映画だった。
井筒映画は観たことないが、他作品にも興味が出た。
固定観念は持たずに観るほうが良いのかもしれない
特にこれを観たい!という気持ちで観た訳ではなく、時間の都合上で唯一予告で知っていたためにこの作品を観ました。
何と表現して良いものか…この監督さんの作品はほとんど知らないので系統がいまいち読めないのですが、観終わった後の率直な感想は「……で?」という感じでした。
役者勢は非常に良い演技をしていると思います。それぞれの個性や表情はうまく表現されていました。だからこそ違和感を感じざるを得なかった。
まず、何を目的としてあそこまでの強盗をする気になったのか。でっかいことをしたいという大きな衝動に突き動かされる事も確かにあると思う。しかし途中から、ここまで危険を冒して、あらゆるものの犠牲を払ってまで、彼らを突き動かすものが何なのかさっぱり分からなくなりました。
彼らそれぞれのキャラクターも過去の描写もどことなく曖昧で掴めない。そのためか彼らの行動ひとつひとつが何を意味し、結果彼らが見出したモノが何なのか、簡単に言えば感情移入が全くというほど出来ませんでした。肉親がああも簡単に殺され、あんなにあっさりしていられるものなのか。ハルキの存在、命を失うその寸前まで金塊を持って逃げた幸田の行動。
リアルなようで非現実的で、非現実的かと思えばリアルで。ただただ底知れぬ欲望に突き動かされる。それを求めることにに人道的で真っ当な答えなどいらない。それがこの作品の醍醐味であり、監督の狙ったところなのだとすれば、それはまさしく成功だと思います。
固定観念など拭い去って、リアルとはまた違う世界のリアルでの男たちの欲望への執着を見守る。
好き嫌いがはっきり分かれる作品のような気がします。私個人としてはあまりしっくりくる映画ではありませんでした。
札束より欲しいもの、オレにはある
何でだろう…
井筒監督の作品は期待するとダメなんだよなぁ…
前作の「ヒーローショー」は良かったのに…
原作は未読なので、原作の世界観が出ているのかは不明ですが、本作「黄金を抱いて翔べ」はイマイチ盛り上りに欠けている気がする。決してつまらない訳ではないのだが、チーム強奪もののスカッとするカタルシスが無かった。なんとなく平坦な作品で、登場人物の誰にも感情移入することが出来なかった。前半でもう少し登場人物それぞれの背景を掘り下げてくれていれば、妻夫木聡演じる幸田の涙や溝端淳平演じる北川の弟ハルキにもっと共感できたと思う。
たまに来る爆破シーンには迫力を感じたが、いかんせん思いつきの金塊強奪計画にしか見えなかったし、うまくいきそうに思えなかった。
それに犯人たちは現場に証拠を残し過ぎだ。
浅野忠信演じる北川には感情はないのだろうか?家族や仲間を亡くしてもそれほど悲しそうじゃない。それどころか「ひとりになってみると意外にせいせいする」なんて言ってるのだ。そういうキャラ設定なら仕方ないが、この男には札束より大切なものは無いように感じてしまった。
ゴッド・ファーザーのマイケル・コルレオーネの台詞「家族を大切にしないヤツは―男じゃない―」を座右の銘にしている私には北川のキャラがどうしても馴染めなかった。
どんなに金塊や札束を手に入れたところで家族を失ってしまったら虚しいだけだと思うからだ。
そう感じることが正しい映画だとしたら、井筒監督の術中にハマっているのだが…
余談ですが、安室の曲カッコいい
また、貴方と逢えた
「ゲロッパ!」など、良質の娯楽映画を多数生み出してきた井筒和幸監督が、青春映画の佳作「69-sixty nine」の妻夫木聡を主演に迎えて描く、犯罪活劇映画。
高校時代、ふとしたきっかけで高村薫の原作に出会った。
何となくもやもや、いらいら、怒りを持て余していた学生の私は、圧力や権力に叩き潰されながらももがき、苦しみ、銀行強盗という究極の賭けへと疾走する男臭いドラマに、心が躍った。どこにも行けない無力な自分が、空へと飛び立つ感覚・・その爽快な活劇に、どれだけ腐りかけた気持ちが救われたか。私にとって、高村の原作は青春時代のバイブルだった。
その原作が、満を持しての映画化である。娯楽として全国公開に乗っけるには、あまりに泥臭く、キナ臭い犯罪劇として成立するストーリー。いささか不安と緊張を抱えながら鑑賞に挑む原作ファンも多いだろう。
その点では、「ガキ帝国」「パッチギ!」など、不器用に硬直した現実に対してあがき、拳をふりかざす!そんな格好良い男達を描いてきた作り手を演出に抜擢したのは、最適な判断だったろう。
「ファイヤーウォールを解除、パスワードをプログラムで解析!」「ウイルスで回路を遮断するのさ。」なんて、どことなく人の熱さ、弱さ、葛藤が浮かび上がらないデジタルな犯罪劇が世の映画を席巻する中、鋼鉄の金庫をバルブで無理やりこじ開け、汗かき、ベソかき脱走を図る極めて人間臭い強盗劇が爆発する本作。
知的な印象の強い役者陣を揃えつつ、適切なバランスをもって血まみれ、◎◎まみれの汚れたヒーローとして脚色、「衝動」の言葉がぴったりはまる小市民の暴走が生き生きと刻み込まれている。
人の姿が透けて、欠けて、どうにも薄味のデジタル時代に、敢えて突きつける肉体礼賛、奮闘のアクション作品には、やんちゃな男の美しさを時代に沿って魅せてくれる井筒演出がやはり、しっくりくる。ぴたりとはまり込む。
青春時代をするりと抜けて、少し世の中に染まってしまった今、映画という形で再会した「あの、世界」。果たして、私と同じように高村原作で青春を失踪した方には、どう映るのだろうか。そんな方と、あの頃は行けなかった居酒屋で、あの頃は飲めなかったビールを飲みながら話し込みたいものだ。
今でも、格好良い男達の熱い、熱い戦いは私の胸を熱くする。
いろいろな感情を受け取れる映画。
登場人物に色々背景がある割に、説明が少ない映画だが
(どうも原作もあまり細かくは描いてないらしい)、
その分、男たちの持つ情念や、独特な質感、大阪の疾走感が心地よく
全編を貫いていた気がする。
頭をからっぽにして日常を置いて、どっぷり感じてみるのがいい。
「なんで強盗??」
「この人たち何つながり??」
理由とか正しさに捉われ過ぎる日常の中で、そこを振り切った爽快感というのがある。
大人になったって理由の無い感情や衝動は「本当は」ある。
強盗活劇のようでいて、人間模様のようでいて、人の持つ焦燥感・衝動描写のようでいて。
ちょっとユーモアもあり。
いろんなものをたゆたうように描いている映画。
その人に合った切り口で観られるし、自分のコンディションによって感じ方が変わるかも。
男性向け骨太ゴリゴリな感じを受けつつも、旬な俳優の織り成す世界に
華があるので女性にもオススメ。
いろいろ感じたい人。
自分が何考えてるか最近分からない人。
内省する意味なんかでも老若男女オススメな映画だと思います。
切なくておもろくて泣けた
イケメンキャストを目当てに観に行ったのが申し訳なくなるくらい、俳優陣の意気込みを感じた作品だった。
暴力シーンが結構あったが、6人の男達の行き場のない気持ち、憤り、絶望感、それでいて もてあましている内に秘めたパワーを表現するには必要なシーンだと思った。
どうみても、かないそうにない相手にやられても血みどろになりながらもやり返すシーンにそれを感じて、後半の計画実行のシーンのころには、この作戦を成功させてあげたいという気持ちになっていた。
ボロボロになりながらも黄金へと向かう幸田(妻夫木)の姿にはせつなくなり涙がとまらなかった。
後半はかなり緊迫したシーンもおおいが、舞台は大阪。
余計なおせっかいをやく大阪のおばちゃん、べたなギャグをいう端役や主役達。
「こんな場面でそれかいな?」とつい吹き出してしまうシーンや台詞に救われもした。
キャスティングは皆はまり役だったと思う。
幸田(妻夫木)北川(浅野)野田(桐谷)はさすがの存在感。
爽やか系イケメンのイメージが強かった溝端(春樹)チャンミン(モモ)には良い意味での意外性を感じた。
よくをいえば原作をよんでいないと彼らの背景にあるものがわかりづらい部分があったのが少し残念だった。
試写会は女性ばかりだったので男性の感想をききたいと思った。
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