「固定観念は持たずに観るほうが良いのかもしれない」黄金を抱いて翔べ たろすさんの映画レビュー(感想・評価)
固定観念は持たずに観るほうが良いのかもしれない
特にこれを観たい!という気持ちで観た訳ではなく、時間の都合上で唯一予告で知っていたためにこの作品を観ました。
何と表現して良いものか…この監督さんの作品はほとんど知らないので系統がいまいち読めないのですが、観終わった後の率直な感想は「……で?」という感じでした。
役者勢は非常に良い演技をしていると思います。それぞれの個性や表情はうまく表現されていました。だからこそ違和感を感じざるを得なかった。
まず、何を目的としてあそこまでの強盗をする気になったのか。でっかいことをしたいという大きな衝動に突き動かされる事も確かにあると思う。しかし途中から、ここまで危険を冒して、あらゆるものの犠牲を払ってまで、彼らを突き動かすものが何なのかさっぱり分からなくなりました。
彼らそれぞれのキャラクターも過去の描写もどことなく曖昧で掴めない。そのためか彼らの行動ひとつひとつが何を意味し、結果彼らが見出したモノが何なのか、簡単に言えば感情移入が全くというほど出来ませんでした。肉親がああも簡単に殺され、あんなにあっさりしていられるものなのか。ハルキの存在、命を失うその寸前まで金塊を持って逃げた幸田の行動。
リアルなようで非現実的で、非現実的かと思えばリアルで。ただただ底知れぬ欲望に突き動かされる。それを求めることにに人道的で真っ当な答えなどいらない。それがこの作品の醍醐味であり、監督の狙ったところなのだとすれば、それはまさしく成功だと思います。
固定観念など拭い去って、リアルとはまた違う世界のリアルでの男たちの欲望への執着を見守る。
好き嫌いがはっきり分かれる作品のような気がします。私個人としてはあまりしっくりくる映画ではありませんでした。