「闘いに負けて、しかも豊かになった者たち。」黄金を抱いて翔べ お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
闘いに負けて、しかも豊かになった者たち。
井筒監督も含む「あの時代の人たち」って、「精一杯闘ったけど敗北」ってのがホント好きなんだなと改めて実感しました。
闘いに負けて、にもかかわらず自分たちは豊かになってしまったというのが全共闘世代。
この映画も、テーマはまさにその通りです。
左翼が出てくる、暴力団が出てくる、舞台はマンガじみた大阪だ、というわけで、ディテールはとても楽しめました。
強盗映画ですが、きっと監督が目の敵にしているであろうハリウッド映画の対極というべき作品に仕上がっています。
凶暴で粗暴な者たちの、まるで全共闘の無鉄砲な闘争のような犯行が繰り広げられる、そう、これは闘争映画なのでしょう。
監督にとって、敵は日本なのか? 豊かさなのか? つまり勝利を収めた資本主義への挑戦なのか?
そういうことは、じつは世代の異なる私にはどうでもいい話です。
うらぶれて汚い屋台で安酒を呑んでクダを巻くのを良しとする全共闘世代の感性にはついて行けないな、と改めて実感させられました。
しかしこれが蹉跌した全共闘世代に共通する感覚だとすると、きっと、見る人によってはツボにハまる映画なのかも知れません。
監督と同世代でないのなら、ストーリーではなくディテールを楽しんでみてください。
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