「情報過多に御用心」プラチナデータ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
情報過多に御用心
原作未読。
『るろうに剣心』の大友啓史監督。二宮和也、豊川悦司主演の近未来サスペンス。
いきなり二宮ファンには悪いが、彼は冷徹な天才科学者には見えないかな。
むしろ後半の憔悴してきた頃の顔や“あの状態”の方がしっくり来る気が。
豊川悦司演じるアナログ肌の刑事は渋くて冷静でカッケー。
主人公にバカにされても軽くいなす感じが大人だね。
(関係無いが『脳男』は江口洋介じゃなく彼に出て欲しかった――)
DNA情報から犯人の身体的特徴さらには性格まで推定するという画期的な捜査システム。
『確かに近い将来ならあり得そう』というサジ加減が面白い。
そして『エネミー・オブ・アメリカ』をもう一歩進めたような追跡シーンはもっと面白い!
監視カメラの映像から顔を解析して追跡……というパターンは何度も目にしたが、
顔を隠してもDNAから得られた外観以外の特徴(観てのお楽しみ)から
相手を特定するという執拗さにゾッとする。
うっわ、まだ追っ掛けてくんのかよと半笑いになってしまうほどのシツコさ。
そして本作のキモ、
全国民を特定できるDNA情報プラチナデータの真の目的もなかなかえげつない。
いってェ誰にとっての白金かって事でさァね、旦那!(←この口調に特に意味はない)
真犯人もいい具合に誇大妄想狂。
贅沢を言うなら、前半くらいの追跡シーンを後半にも見せて欲しかったかな。もっとケレン味が欲しい。
あと、取り挙げてる要素が多すぎて全体的に散漫な点もかなり痛いかな。
要素を削るか、全体を――特に終盤を――タイトに切り詰めてテンポを上げられなかったかなあ。
けど一番引っ掛かったのは別の所。
あの人物にサヴァン症候群という設定を盛り込む必要があったのか?という点。
自閉症の人間が相手を信頼するにはかなり強固な理由がいると思うのだが、そこがしっくりこない。
また、二重人格(統合失調症という呼称がベターらしい)の描写も
そう簡単に人格を出したり引っ込めたり出来るもんなのかしら。
鑑賞後に精神疾患に関する記述を少しかじってみたが、やっぱりしっくりこない。
精神疾患と一口に言っても程度や症状は千差万別だが、
この物語はどうもそれを都合良く解釈して“使って”いるような感じを受ける。
感情面での重要なポイントでそんな印象を受けたものだから、
それが最後まで気持ちを引きずってしまった。
惜しい。
〈2013/3/31鑑賞〉