「凄い映像と深いテーマ……に乗れなかった理由」ゼロ・グラビティ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
凄い映像と深いテーマ……に乗れなかった理由
「宇宙では、あなたの叫びは聴こえない」というのは
『エイリアン』公開当時の傑作宣伝コピーだが、
この作品の宣伝コピーとしてもピッタリじゃないかと思う。
いやー、こわいこわい、こわいこわい映画でしたね。
宇宙船外作業中に宇宙へ投げ出された主人公がサバイバルを
図るというシンプルな筋立てだが、約90分のタイトな上映時間に、
ありとあらゆる宇宙の恐怖が詰め込まれていて、息つく暇もない。
* * *
酸素が足りない、死ぬほど寒い、気圧は殺人的に低い、
無重力だから自力で移動できない、帰還用のシャトルは破損、
そしてもちろん、誰も助けに来てくれない。
今まで色んなサバイバル映画を観てきたつもりだけれど、
ここまで絶望的な状況というのも珍しいんじゃないだろうか?
こうやって見ると地球ってほんとに恵まれた星なんですね。
ありがとう地球、と壮大なスケールの感謝をしてみる。
なんといっても凄まじいのは、全編ハンパない臨場感の映像。
長回しの多用とリアル極まりないCG映像も相俟って、映画を
観ているというよりドキュメンタリーか何かを観ているかのよう。
宇宙に投げ出され、まっ暗闇でひとりぼっちになった時の恐怖と
絶望感たるや! こういう映画にこそ『映像体験』という言葉が
しっくり来ます。
テーマ性も高い。帰りを待つ人もいないのに、それでも
生き残りたいと願うのは人間の本能か、それとも生きたいと
願いながらも死んでいった人々へのせめてもの感謝か。
サンドラ・ブロック演じる主人公の突き抜けたような笑顔が良い。
水や土や陽光の重量さえも感じられるかのような、生きると
いうことの重みと喜びがずしりと伝わるラストシーンだった。
* * *
と、ここまで絶賛しといて満点の5.0判定を付けないのはなぜか。
映像は凄い、サンドラ・ブロックとクルーニーの演技も好き、
物語もサスペンスフル、テーマの深みも感じるし、いくつかの
シーンでは涙も流した。
だがそれでも観賞後、余韻に浸り切れないというか、
今ひとつ釈然としない気持ちが残ったんすよ。個人的に。
傑作傑作と宣伝するものだからハードルが上がりすぎていたのか、
はたまたアカデミー賞最有力候補なんて呼ばれるのを見て
ヤッカミのひとつでも入れたくなったのか(笑)。
まあそれも3%くらいはあるかもだが、多分不満はそこじゃない。
* * *
なかなか説明するのが難しいのだが……この映画は
ドキュメンタリックな部分とドラマチックな部分とが
若干の不整合を起こしているような印象を受ける。
例えば結論を押し付けるようなドキュメンタリー映画に対して
感じる不満。映像が事実だからといって結論まで事実とは
限らないのに、それを事実に見えるよう編集・修正してしまう
危うさやいやらしさというか。
僕の不満は多分それに近い。
映像がドキュメンタリーに近い印象を受けるだけに、
終盤のメッセージ性が強すぎて“押し付けがましさ”が
生じてしまったように感じられてならないんです。
完全にドラマだと割り切れる作りならそんな不満は抱かなかった
と思うが。(ものすごくシビアなサジ加減の話をしているという
ことは自分でも重々承知している)
とりわけ、音楽。シンプルな物語に対して音楽が饒舌過ぎる。
ここぞとばかりに鳴り響くコーラスは、僕にとっては
生の素晴らしさを“謳う”というより“がなりたてる”
という印象に近かった。
* * *
凄い映画だと頭で考えてはいるので4.0判定だが、
そんな訳で今ひとつ好きになり切れない。
ま、そういう稀有な意見の人間もいるってなことで。
ところでエンドロールで気付いたが、NASAの管制官の声を
演じてたのはエド・ハリスでした。まさか、アポロ13の
あの人と同一人物じゃないよね(笑)。
〈2013.12.14鑑賞〉
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余談:
にしても、ここまで上映環境に左右される映画、
そして観客に沈黙を強いる映画(笑)も珍しい。
咳払いひとつするのもちょっとためらってしまうくらい。
3D映像はもちろん、サラウンド環境、微細な効果音から
大音量のスコアまで再現できる音響設備が揃って初めて
真価が発揮される映画。2013年現在の最新技術あってこその
映画である。ホームシアターを所有されている方こそ、
この映画を最大限に楽しめるのかも知れない。
ま、IMAXはおろか映画館も無かった田舎出身の僕としては、
ホントはどんな環境でも楽しめる映画が最良だと思うんすけどね。
ホームシアター? お金無いからムリ!
りりーさん、
きびなごです!
返信よこさずすみませんでした。
新年早々仕事で忙殺されてました……。
『ゼロ・グラビティ』、そうなんですよ!
僕は説明に1000字近くを費やしましたが(笑)、
一言で言うとテーマに若干の《あざとさ》を感じるんですよね。
「皆まで言わなくても分かるよ」的な。
『インシディアス』はホラーが平気なら是非是非。
2作目は未鑑賞ですが、1作目は怖かったですよ~。
まあ僕は基本ビビりなので何でも怖がる訳ですが(笑)。
『るろうに剣心』に『ホビット』にと、今年も
楽しみな映画が沢山控えていますねえ。『ホビット』はたぶん
上映方式を変えて3回くらい鑑賞すると思います(←暇人)。
ルーク・エヴァンスも活躍してくれるといいですね!
『ホビット』では数少ない人間のキャラですから、
良い見せ場があるのではと期待しています。
繰り返しになりますけど、お身体に気を付けて。
お互い色んな映画を観ながら明るくいきましょうね。
気負いすぎずに頑張って!
返信お気になさらず!
それではまた!
以下、重要なネタバレ含みます。
こんにちは。
気がつきましたよ!!
ありがとうございます!!
きびなごさんもお忙しかったのですね。
なのに、お気にかけていただき、本当に嬉しいです。
新年になっても、きっとお忙しいことと思います。
お体ご自愛くださいね。
私たちには、映画という気晴らしがありますので
鬱々なんてしているヒマはありませんよね。
ホラー映画を見て、アクション映画を見て
発散しましょうね~!!
ゼログラビティを鑑賞された後、
≪余韻に浸り切れないというか、
今ひとつ釈然としない気持ちが残った≫のですね。
そうなんですよ!!
私もその直前まで、万感の思いだったのですが・・・
思うに、最後のサンドラの足についた≪泥≫ですかね。
地球に帰って着た!!という実感を表しているのは
すごくわかるのですが、
反面、≪あざとさ≫も私は感じてしまいました。
それにしても、エド・ハリス。
よくぞ、気づかれましたね。
嬉しくなっちゃいました。
やっぱり、きびなごさんのレビューは、しっかりされていますね。
言いたいことをしっかり言葉にして言えるなんて、素敵です。
きびなごさんの英語力。
良いですね~。
日本語字幕外の情報を聞き取れるなんて、羨ましい限りです。
私は、「あら~、この言葉は、こんなに簡単な英語で良いのね~」
程度です。
「るろうに剣心」全巻読破されたのですね。
私も原作と映画は別物と思っていますので
藤原志々雄もいちおう?!楽しみにしています。
今年度初映画は、『インシディアス 第2章』なんですね!!
インシディアス1も見逃しています。
DVD鑑賞用に、メモメモ。
深夜一人での鑑賞には、ご注意くださいね。
うふふ~。
私は、二月に、ルーク出演の「ホビット 第2章」が公開されますので
こちらが楽しみです。
風邪などひかれませんように。
りりーさん、ホントにお久し振りです!!!
心配しておりましたがお元気そうで何よりです!
このコメントに気付いていただけると良いのですが……
しかしながら、大変な2013年になってしまったようですね。
御親戚の方、お亡くなりになったそうで、本当にお気の毒です。
身内の方々のお世話も大変でしょうが、ご自分の体も壊さないよう
気を付けてくださいね。寒い季節ですから。
僕も忙しい年だったつもりですが、そちらの苦労に比べれば
どうということはなさそう。気合いが足らんですね。
どうせ災難に降りかかられるのなら、サンドラ・ブロックみたいに
苦労をガハハと笑い飛ばすくらいの勢いで頑張りたいもんですね。
鬱々してるのはイヤだし、前向いてなきゃ進めませんもの。
2014年もお互い前向きに生きましょう。
僕の英語力ですが……かなーり中途半端ですよ。短い会話なら
聞き取れますし話せますけど、7語以上になるともう怪しい。
英語字幕ありなら7~8割は理解できるので、出張中に映画を
鑑賞する際には、劇場が障害者用に用意している補助具
(字幕の出るメガネみたいなヤツ)を借りてましたね。
日本語字幕なら、ちょいちょい字幕外の情報を聞き取れる程度。
さて、あれから全巻読破した『るろうに剣心』。
いよいよ映画続編近付いておりますが……
藤原竜也が志々雄だと……カリスマ性と……フォルムが……(←コラ)
まあ映画は映画ということで楽しむつもりでおります。
田中ミン氏や神木隆之介くんは良さそうですし、
アクションは相変わらず凄いことになってそうですしね!
今年最初の映画は『インシディアス 第2章』の予定です。
新年早々縁起の良さそうな映画でしょう(爆)。
という訳で、2014年が良い年になるといいですね。
また気が向いたら、レビュー読ませてくださいね。
こちらもりりーさんのDVD鑑賞の助けになるよう
色々レビュー重ねておきます。
ではまた!
きびなごさん
すご~くお久しぶりです。
今日、やっとこちらを覗いてみたら
コメを頂いていたのですね。、
今まで気が付かずにいて、ごめんなさい。
そして、ありがとうございます!!
私の母や主人の両親の相次ぐ入院・手術、
その間に、義母の弟(千葉県で一人住まい)が亡くなり
その後の手続きやらで、きりきり舞いしておりました。
でも、その間も時間を作っては、いくつかの映画を見てはいましたが
なかなか感想を書くまではいかず、半年が過ぎてしまいました。
今年も、検査入院などの予定がありますが
時間を見つけて映画を見に行き、感想を書けるよう
頑張りたいと思います。
今後とも、よろしくお願いします。
ゼログラビティ。
出演者が、ほぼ二人。
それに、音の無い宇宙空間。
どんな作品になるのだろう?!と期待しておりました。
期待に違わず、良い作品でしたね。
絶望的な状況を打破できるのは、やはり人間が持つ希望なんですね。
意欲なんですね。
困難な状況に置かれたとき、どんな行動ができるか
個人によって違うだろうけれど
前向きに生きていきたいですね。
よく「諦めたら、その時が終わり」なんて言われますが
その通りですね。
人間が持つ力って、限りが無いですね。
「るろうに剣心」の配役、あ~んなことになっていたのですね。
宗次郎が神木君は許せるけれど
志々雄真実が藤原竜也ですか~。
藤原竜也には、≪クズの役が似合う≫というイメージが付いてしまったのだけど。
志々雄真実のあの目力を存分に出してほしいですね。
今年の映画見始め予定は、「トリック」です。
ところで、きびなごさんは、以前海外出張をされていましたが
英語が堪能なのですか?
日本語字幕はいらないのですか?