劇場公開日 2012年6月16日

「実写版より面白い」図書館戦争 革命のつばさ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5実写版より面白い

2020年6月12日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 表現の自由を束縛し、メディアの監視権を持つメディア良化隊は、原発テロを機に作風がそのまま教科書として利用したのではないかと疑い、作家の当麻蔵人(イッセー尾形)を監視し続けることになった。初デートを楽しんでいた笠原郁(井上)と堂上篤(前野)は柴崎麻子(沢城)から呼び出され、当麻の警備を担当することになった。

 TVシリーズのアニメ版には時代設定や、図書隊側と良化隊側の詳細が描かれているのかもしれないが、この劇場版ではかなり省かれているため理解するのが困難。なぜか双方とも武装が認められていて、許可さえ出れば銃撃戦も可能という。ただ、市街地での発砲は警官によって阻止されたところを見ると、複雑な立場があると想像できる。

 当麻は良化隊の基地へ移送され、良化委員会を相手取って憲法違反であると告訴し、その裁判過程が主軸となる前半。やがて最高裁では政治力によって敗訴が濃厚となった段階で、笠原の提案で当麻を亡命させる作戦をとるのだ。その亡命作戦がクライマックスで描かれているのだが、どこの大使館へ行こうにも良化隊によって阻まれてしまう。憧れの教官堂上が発砲され重傷を負い、笠原の運転で大阪まで向かうという無謀な行動を採った。かなりの軍事力をもって絶体絶命の危機になったとき、イギリス総領事館の車がかけつけて無事解決。

 現実にはない仮想近未来の出来事だが、ネットの世界はあまり重要視されてないことからも、かなりアナログへの回帰が見受けられる。それでも焚書坑儒から始まる、権力者側からの検閲や閲覧禁止という横暴は、歴史は繰り返すという言葉通り、いつの時代でも行われるものだという恐ろしさが感じられる。ただ、作品上では憲法第21条の“表現の自由”は生きており、図書隊側の最後の砦となっていること。自民党政権が復帰した現在においては、この憲法自体が冒されようとしている事実を考えると、甘い設定だとも言えないか。さらには、どんな書物が規制されているのかサッパリわからないのも弱点だし、恋愛部分がメインになっているのは明らかに客に媚びているとしか思えない点も・・・

kossy