ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日のレビュー・感想・評価
全167件中、1~20件目を表示
事実と想像の境界がわからない話
ずっと見たかった作品を見られた。サラームボンベイとジュラシックワールドで一度見たら忘れない顔立ちと存在感を放つイルハンカーンが、大人になったパイ役で登場!しかし彼はもうこの世にいない。
カーン演じるパイ本人が語り部として、作品執筆に行き詰まったカナダ人作家を相手に、青年の頃に体験した2つの漂流記を話す。
泳ぎの上手い叔父の人生観を変えた、フランスのきれいな美しいプールを意味する名を持つピシだが、ヒンディではおしっこという意味になるので学校ではからかわれいじめられる。
ある時から、学期初めに全ての授業で円周率を暗記して言ってのけ、みんなにパイと呼ばせることに成功した。
フランス統治の名残が残るフレンチシックな街並みで、両親は母がヒンディーの植物学者、父は植物園を転じさせて動物園経営。パイは独特な環境下で、カトリックヒンディーとイスラム3つの神を信じて、叔父から水泳を習いながらベジタリアンとして育った。父からは、動物は決して野生を忘れて懐くということはないと悉く言われながら。動物園では飼い主の名前を間違えて付けられたトラのリチャードパーカーが小トラの時にパイが檻を開け手で餌をやろうとして父にこっぴどく危険性を叱られたことから、パイにとっては印象的な動物となっていた。
一家でアメリカに移住し動物園は売却しようとして船に乗り込み航海中だったが、眠りの浅かったパイだけが甲板にいるときに大嵐に見舞われ、脱出ボートに乗ることに。
ここから、大人になったパイの話では、最初にボートにいた肉料理を出す料理長は飛び落ちてきたシマウマに吹っ飛ばされてしまい、パイはシマウマと、沖を泳いできたトラのリチャードパーカーと、バナナの塊に乗ってきたオランウータンと、船から後から飛び出してくるハイエナと一緒に漂流していたことになるが、
最後まで残ったリチャードパーカーとパイで生き延びた話など保険会社は信じない。
パイは、料理長が生きるために、乗り合わせた仏教徒を食べ、次に母親を食べようと殺したためパイが激昂して料理長を殺し、脱出ボートで唯一の生存者となった別の話をしたが、保険会社はこちらも気に入らなかった。
パイの話を聞き入っていたカナダ人作家が、
シマウマ=仏教徒
ハイエナ=料理長
オランウータン=母親
トラのリチャードパーカー=パイ自身
なのではと指摘する。
そこで、どちらの話を信じたいかカナダ人作家に尋ねるパイ。ここで初めて笑顔を見せるイルハンカーン。きらりと光る白い歯が一層この話の真偽をわからなくさせる。後者の料理長もパイも殺しに手を出し人喰い生存した話が本当なのか?だとしたらきめ細やかに話された、リチャードパーカーを手懐けるための笛を用いて風向きに合わせてボートの角度を変えた訓練や、死んだシマウマを用いて漁をして干物を作り生き延びた話も全て嘘だと言うのか?
確かに、もう最期と眠りについたところでボートと筏が最初に漂着したミーアキャットだらけの真水の島が夜になると水を酸性に変えミーアキャットは木の上で眠り水を避ける話は俄に信じ難かった。ハスの花の中からはそれ以外が水面下に溶かされたであろう、人の歯も出てくる。
その後、メキシコ沖に漂着したところでトラのリチャードパーカーとは何も惜しまれず別れを告げ、パイの漂流生活や人食いしたかもしれない生活は終わり、元の人間としての生活に戻った。
両親と兄は失ったが。
現実世界では、インドを離れる前に大好きだった踊りの上手い女の子と結婚し二児をもうけ、子供には兄の名前ラビを付けているようだ。
パイの話はどこからが本当なのだろうか?
考え出すときりがないほどよくわからなかった。
でも、保険会社もカナダ人作家も、前者の話を信じた。
動物たちが沢山出てきて、真夜中の海で光るプランクトンに寄ってきたくじらや、飛び魚の群れ、月の光など幻想的で自然の脅威に晒された話。
パイが言うように、結果は同じ。どちらの話も大変な目に遭い、両親を亡くした。
同じ結果でもその過程をどう解釈するかが、宗教なのではないか?と突きつけられた。
また、人はもしそこに悲惨な真実があったとしても、たとえ脚色されていたとしようと、信じたい過程を信じる。
それだけ動物が乗っていれば糞尿問題に苦しみそうだし虎に魚をあげていたなら実際糞は出ていただろうが、そのあたりが出てこないのが不自然だった。
ただ一点。パイの生存率を上げたのには、仲間または自らに潜む存在としてのトラだけでなく、転覆した船が日本製で、脱出ボートに入っていた遭難指示書が日本製で事細かに描かれていたからかもしれない。
パイの泳ぎと数学能力と野生動物への理解が合わさり、脱出ボートと作成した筏の行き来などの生きる力に繋がった気がする。それだけ海の水面上にいれば日焼けで皮がべろべろに焼けるはずだが、そんな描写はない。3つの神を信じていたからこそ、3つの神が助けてくれたのかな?とも思うが、意識が朦朧とするまで体力を振り絞って眠りについたら、無人島に流されていたりと奇跡のような展開が重なる。
あまりにショックな日々すぎて脳が記憶を書き換えてしまったのか、覚えている事実は残酷すぎるのであえてファンタジー化したのか、よくわからない煙に撒かれる話。
宗教色が色濃い一風変わったサバイバル映画
びっくりしてチャットGPTに意見を求めました
タイトルなし(ネタバレ)
ある意味大ドンデン返し作品
トラと共に海上遭難漂流記
トラのCGや海上などでのファンタジックなCG映像は
素晴らしく幻想的で素敵やけどありきたりな漂流ストーリーで特に驚きも新しさも無い
とボーっと見てたらラストに急展開
え!待って!?
今までのストーリーは物語化されたものってこと!?
と考えるとあれよ、あれよというまに考察の谷間に落ちます
ネットで誰かの感想や解釈を探してなるほどな…と
そしてまた見返して答え合わせをしてと
3度楽しめる
トラが衰弱していく様子が辛かったので
実際はトラはパイの心の葛藤のメタファーだと思うと心が落ち着いたぜ
少年パイ・パテルが見たものは
インドのフランス領ポンディシェリに家族や動物達と暮らしていた少年パイ・パテル( スラージ・シャルマ )は、カナダに移住する為に家族や動物達と乗り込んだ貨物船が、嵐に見舞われ沈没し海に投げ出される。
ベンガルトラのリチャード・パーカーと共にパイ・パテル少年の長期に渡る苛酷な漂流生活が描かれる。
CGによる映像は激しくも美しい。時にファンタジー的でもある。
パイ・パテル少年が保険調査員に語るもうひとつの物語に、一体どちらが真実なのか、突然こちらに委ねられる。
気になり検索を重ね、『 ミニョネット号事件 』に辿り着き、ベンガルトラと同名のリチャード・パーカーという17才の少年の悲劇を知った。
時に気になった小さな違和感は、そういった事だったのかと鑑賞後に繋がり、考えさせられた。
ー ツィムツーム号
フジTVを録画にて鑑賞 (字幕)
感想メモ
映像が素晴らしい
動物は全てCGか?
発光生物が夜の海に浮かんでいて幻想的!綺麗!すごい!鯨!からのイカダ水没缶詰全滅の流れ最悪過ぎて、実話では耐えきれない
トビウオのシーンすごく好き!画面サイズを縮小する事で画面外から魚が飛んできているように見える!天才!このシーンだけで見る価値がある
映像効果もすごいが、話自体もとても深い、深過ぎて理解できていないと思う
まず宗教、主人公のパイは複数の宗教を信仰している、え
キリスト教、ヒンドゥー教、イスラム教
イスラム教は唯一神のアラーを崇めるが、ヒンドゥー教はシヴァ神やヴィシュヌ神など複数の神様がいる、どういうことだろう、魚も食べるタイプのビーガン?命を奪うことにすごく抵抗を感じていたので違うかも
まあ、無宗教なので詳しいことはわからない
そして真相、最後に病室のベッドでパイが語った物語、これがどこまで本当なのか、コックはハイエナだと小説家は言っていたが、これもミスリードの可能性ありそう
なんと見返すと伏線あちこちにあるそうなのですが、サブスクでの無料配信が終わっていたので2回目はまたいつか
そして浮島、海藻でできた大量のミーアキャットが住む島
これの意味するところ、全くわからん
トラと一緒に漂流したという話は信じ難いが、ワクワクした
しかし、トラは振り返ることもなく森に消えていき、消息を絶ったという最後だけが妙に現実的で引っかかる
一番悲しいのはさよならを言えずに別れを迎えること、それだけは確かだったのだろう
実際にあった事件
船員4人が難破し、1人を殺害して食べ、生き残った
食べられた船員の名前はリチャード・パーカー
このことからトラは何の隠喩か、パイが涙を流して告白したことは何だったのか
虎には友情はない?
昔観たけど、幸運にも内容を忘れたのでAmazonでもう一度観ました。
冒頭はちょっと退屈したけど、船に乗ってからはずっと引き付けられました。
本当にリアルでよくできた映像だし、話も面白かった! 一番印象に残っているのは、最後に虎が振り向かずに去るところ。何を意味するか分からないけど、平凡な映画だと虎に友情が芽生えて悲しくなるシーンになると思うけど。虎には友情なんてないんだろうね。蛇足ですが、日本人役は日本人がやってほしいね。他の映画もよく見られるけどね。
ラストで印象ががらりと変わる異色作
【鑑賞のきっかけ】
本作品は、アカデミー賞を受賞していることと、トラのCG表現が素晴らしいということで、着目したけれど、未見でした。
予告編を見ても、トラと漂流する少年が映るばかりで、何となく、退屈な映画、と感じてしまったためです。
今回、動画配信にラインナップされているのを発見して、時間のある時に鑑賞してみようか、と。
【率直な感想】
やはり思ったとおり、全体的に物語に起伏は乏しく、物語に没入するには至らず。
それでも、ちょっと意外だったのは、少年が一緒に漂流することになったのは、トラだけではなく、オランウータン、ハイエナ、シマウマと、複数の動物がいることでした。
また、さすがに、トラのCG表現は文句なしであるし、全体的に映し出される大海原などの情景がとても綺麗で、多くの方は、この辺りに魅了されて鑑賞したのだろうな、と思っていました。
ところが。
ラスト近くになって、状況は一変します。
最初は、意味がよく分かりませんでした。
でも、視点が現代に移り、今は大人となった少年の回想を聞いていた、相手方の男性の台詞に、大変に驚きました。
本作品は、動物たちとの漂流という、ファンタジックなイメージでいたけれど、それは全く違って、ファンタジーとは真逆の世界を描いている作品なのだ、と。
私は、ミステリ小説が好きなのですが、密室トリックやアリバイトリック、といった古典的なトリックのほかに、20世紀末くらいから、着目されるようになったトリックがあります。
それは、「叙述トリック」と呼ばれます。
ミステリ好きでない方は、ピンとこないかもしれませんが、この「叙述トリック」というキーワードが、私にとっては、本作品の特徴を一番的確に表現できると思い、この言葉を使用させていただきます。
本作品は、叙述トリックにより、ラストに至るまで、観客は、実際とは全く違う情景を観てしまう作品です。
【全体評価】
ラストになって、これほど物語全体の印象が変わる作品はとても珍しく、貴重です。
しかも、それが単なるミステリ的な面白さだけではなく、奥深い人間ドラマが浮かび上がってくるという物語構成については、アカデミー賞受賞も納得の秀作と感じています。
ファンタジーアドベンチャー映画だと思っていたのに
ラストで虎がジャングルへ逃げ、彼は浜辺で助かったと言うラストのままだったら5点をつけていたと思う。その後の彼のもう一つのエピソードによってその感動が覆された感じである。
カナダ人作家のシマウマとハイエナとオラウータンの喩えの説明で、虎と漂流したこと自体が偽りであったことがわかってしまう。
虎と一緒に漂流したこと自体は映画を見る限り本当の話であるような気がしていたのであるが、確かに最初に虎とシマウマとハイエナとオラウータンが同じボートに乗り込むこと自体は考えてみればそんな偶然はありえないはず。またあの浮島も改めて考えると嘘っぽく思えてしまった。ファンタジー映画好きな私にとってはファンタジーのままにして欲しかったので非常に残念なラストであった。
どちらか、または両方が作り話
映像、音楽ともに、現在の映画の技術の粋を凝らした最高峰のものと言えるだろう。
それは、総合芸術と言える映画ならではの到達点か。
でも、すべてはストーリーを語るための方便で、アクセントに過ぎない。
限定された舞台で、起きることに説得力を持たせるため、映像があり、音楽がある。
どうしてパイは虎の出てこないお話を語ったのか、そして、どちらの話が真実なのか、それは語るまでもないことなのだろうし、それにて、映画のストーリーに、より深みが増したと言えるだろう。
好みが分かれるでしょうが、私は「アリ」です。
というのは、映画の着地点が、誰もが望む方向に行かないからなのですが、そこはこの監督、さらに斜め上に押し上げてくれる感じです。
長い物語の中に、彼の名目の由来を語るくだりがあります。パイ=うんちというあだ名を嫌った彼は、断じてそんな由来の名前ではないということを強弁するために、パイ=円周率を授業中に黒板に書きだし、果てしなく埋め尽くします。不名誉な名前を避けるために、後付けでくどくどと円周率を暗記したエピソードは、一見するといかにもありそうなお話に聞こえますが、これを作り話と考えればのちのお話しのテイストは一気に変化します。
つまり、ごく自然にウソがつける、もしくは、自分にもウソか本当か分からないほどに記憶が書き換えられている。とすれば、保険会社と、本人の供述が矛盾しても、仕方ない。虎は始めから存在しなかったのだ。彼が生き延びたのは、ボートに乗った他の人の遺体を食いつないだから。彼の内なる虎を飢えさせないための方便が、リチャード・パーカーという幻の虎を生み出したという解釈が成り立つ。そのウソを、より真実に近づけるために彼はベジタリアンとして生きた。
ちなみに、リチャード・パーカーという名前は、かつて実際にあった話で、遭難し、漂流したのちに、奇跡的に発見されたボートに乗っていた船員たちが、体力もなく真っ先に衰弱し、死にかけていた少年を殺して食った犠牲者の名前で、偶然この名前になったとは到底考えられない。
さらに面白いトリビアが、大人のパイ役を演じた俳優が、同じ年に公開された『アメイジング・スパイダーマン2』に出演した時の役名がリチャード・パーカーという、不思議な偶然。主人公のピーター・パーカーのお父さん役なので、初めから決まっていた設定であり、偶然キャスティングされたようです。
2013.1.27
疑問を投げかけるような作品
映像、BGMがすばらしい。
パイが小説家相手に語るシーンから始まり、回想シーンのあと、再び語るシーンで終わる。
全体に仕掛けがある。
深く考察して楽しむこともできるし、考察しなくても楽しめる。
「おしっこ」というニックネームが氣に入らず、「パイ」と全員に呼ばせるエピソードから察するに、パイは名前にこだわる。
名前と言えば、トラの名前の由来。
“のどが渇く”は英語で“サースティ”。
リチャード・パーカーという人物は、『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』(1838年刊行 原作:エドガー・アラン・ポー 自称実話をもとにした長編小説)に被害者として登場する。
刊行の約50年後に小説の内容を再現したかのようなことがあり、被害者の名前が同じリチャード・パーカーだった。
エドガー・アラン・ポーが50年後の実話をもとにしたとしたら、タイムパラドックスだ。
パイの父親は、数ある宗教をどれも選ばなかった。
独自で創った決まりを家族に守らせていた。
父親の教えを守る家族は、小さな宗教みたいなものかもしれない。
肉を食べない決まりをおそらくパイは守れなかった。
父親の言うことが正しかったと彼が言っている。
数ある宗教の物語のどれも、信じられないようなファンタジー要素があり、それでも人は信じたいものを信じる。
選ばないという選択もある。
彼が最終的に選んだのは、父親のように独自に宗教を創ることだったのかもしれない。
ラスト、パイが小説家相手にどちらが好きか聞いた。
人の氣持ちをコントロールする話術や情熱もある。
人は好きなほうを選択する。あるいはどれも選ばずに自分で創り上げる。
今作で氣になる場面は、島が人で出来ている描写だ。
世界中に巨人もしくは巨大な動物の形をした島がある。
歴史は本当だろうか。
宗教は本当だろうか。
人類は本当のことをどれほど知っているのだろうか...
解釈が分かれる、そしてネタバレ解説の飛躍。
動物園を経営していたインド人家族が新天地を求めてカナダへ渡る途中、嵐で遭難し次男と懐かないトラだけが最終的に生き残ったという話。
動物が殺し合いしたのか、シマウマが骨折していたのか。
それともコックや母親が乗っていたのか。
それを考えながらレビューを拝見していると、それを越えた解説を発見。
パイの家族だったのでは、という説。ただ、解説が難解なのでなるほど~くらいで。
凄まじい冒険記
映画館で見たかった
ブロークバック・マウンテンがとてもよかったので公開時から見ようと思ってたのだけど、なんとなく邦題が気に入らなくて(ネタバレだし)見逃してて、ようやく重い腰を上げて見てみた。とりあえず映画館で見なかった自分を責めたい。
ストーリーについては終盤、自分にはよくわからなかったし、一応、こうではないかみたいな感想はあるのでネタバレを調べようと思うのだけど、見てる間は映像の美麗さ、海、動物、魚たちの美しさにぐいぐい引き込まれた。動物だけではなくて、主人公の褐色の肌もとてもきれいに思えた。CGだろうし現実にはありえない、人間が不快と感じる部分を省略した、美化された映像なんだよなと思うのだけど、ハラハラドキドキ感と合わせて不思議と引き込まれる。自分は普段はありえない演出だと醒めてしまうのだけど。アン・リー作品が次に公開されたら映画館に行こうと思う。
全167件中、1~20件目を表示