「「おおかみであること」」おおかみこどもの雨と雪 ビスケット1号さんの映画レビュー(感想・評価)
「おおかみであること」
とても良かったです。
ジャンル分けなんて意味が無いんですけど、さらっと見てしまうと、もしかしたら いわゆる"子育てもの"だったり、"田舎暮らしもの"だったり、"女性映画"だったり、そういう見方だけで観てしまうかも知れません。でも、それだけだと、ちょっと食い足りなかったり、引っかかったりするとこもある、"普通の佳作"と感じてしまうかも。
この映画、その前に、"おおかみ人間もの"なんだと思います。(…そんなジャンルがあるのかどうかは知りませんが^^。)
その見方で見ると、"おおかみであること"というテーマについては、徹底して考えられ、作りこまれ、思いが込められている素晴らしい傑作だと思います。
それは、よくあるような言い方で言えば"誰もが心のなかに持っている野生"みたいな意味です。
でも、"心の中"というよりもっと自分の肉体に近い"本能"みたいなもので、…"おおかみ人間”というモチーフが、やはりベストですよね。それでなければ描けないものを、しっかり、深く、ていねいに描いてくれていて、だから自然に涙が出ます。
"彼"の"おおかみである"からこその誠実さだとか、生きづらさとか、孤独とか。
こども達の"おおかみであるからこそ"の歓びだとか、自由さとか。
雪の"おおかみであるからこそ"の恐れとか、恥ずかしさとか。
雨の"おおかみであるからこそ"の人間への恐怖だとか、疎外感だとか、誇りだとか。
人間社会の中でおおかみであることは、不便で不都合なことばかりで、花は苦労ばかりです。
でも、だからこそ、雪の上を駆け抜ける開放感で、観ている方もうれしさが爆発します。
雨が親元から旅立つ時の遠吠えの晴れやかさが、親として子供に何よりも望む"本当の自分として生きること"を知らせてくれて、花と一緒に報われるわけです。
アニメという"絵空事"だからこそ自然に描けて、自然に描けるからこそ心に響く…。
映画作家としての細田監督が、自分と観客に誠実に向きあって作られた作品だと思います。