「それぞれのどうしようもなさ」ふがいない僕は空を見た arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
それぞれのどうしようもなさ
クリックして本文を読む
人は誰でもそれぞれに自分でもどうすることも出来ないどうしようもなさを抱えている。
里美にとってそれは間違った結婚だろうし、良太にとっては生まれ育った環境(父親の不在、祖母と良太を放ったらかして男に走った母親、貧困)だろうし、卓巳にとっては自分の本心さえ分からない自分自身だろう。
彼等のどうしようもなさを単純にくらべることは出来ないけれど、彼等はそのどうしようもなさをそれぞれに受け止めていくしかない。
登場人物は自分にとって決して身近な存在というわけではないけれど、観ているうちに彼等の気持ちに寄り添っている自分に気付く。それを可能にしているのは、それぞれの気持ちを丁寧にすくい上げるような脚本と演出だと思う。それに応えた役者陣も素晴らしい。特に、里美を演じた田畑智子と良太を演じた窪田正孝は強く印象に残る。
そして、忘れてはいけないのは、卓巳の助産師の母親の存在だ。
やっぱり、命預かる人の存在は強く大きくて、彼女自身の存在自体が何があっても生き続けるというメッセージになっていると思う。(助産院のみっちゃんの舌打ち、最高だったな!)
それぞれが静かに前を向くラストもいい。
コメントする